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2014年4月 1日 (火)

『グレートレース』CGでは絶対作れないドタコメの逸品。

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 はい、みなさんこんばんわ。
 さあ、この楽しい楽しい作品がBSでご覧になれます。もう古すぎて、めったにテレビで放映される事もないので中年の映画ファンでもご存じない方が多くおられるとか。

 制作は1965年ですから実はそれほど古くもないんですが、舞台設定が1908年で、しかも実にいい感じに、見事に活動写真らしい時代感を醸し出しているために、なんだか本当にもっと昔の大正〜昭和初期の“古き良き”時代に居るかのような気になってきますよ。
 本当は片っ端からお話したいんですが、実際にご覧戴くのが一番よろしいので、いつものようにネタバレしないよう気をつけながらこの映画の魅力をお話しましょうね。
  

 
 お話は簡単です。若くして大成功を収めている上にハンサムな興行師(時代がかったこの職名も死語に近いでしょうか)のグレート・レスリーは、次に挑戦する冒険として、米自動車業界へニューヨーク・パリ間の大レースをもちかけます。
 物語の舞台は1908年。それまでお金持ちの道楽でしかなかったような自動車業界に、フォードが大量生産という業界史上初の概念を持ち込んで開発した、労働者でも買える大衆車『T型』を大々的に売り出したした年。
 ここから普及率が爆発的に伸びていって、クルマ社会アメリカを作っていくんですね。

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 そうした背景のもと、同年実際に行われたレースをモチーフにこのお話が作られているんですが、そこは映画です。しかも監督は『ティファニーで朝食を』『ピンクパンサー』シリーズで知られるお洒落コメディの奇才、ブレイク・エドワーズ。

 ここで登場するのが“絵に描いたような悪役”、自称天才科学者のフェイト教授という男。
 なぜかレスリーを目の仇と妙なライバル意識を燃やし、このレースにも自前でこしらえたボンドカーのような仕掛けだらけのクルマで参加して、レスリーを蹴落として優勝賞金を…と、あの手この手で妨害工作を仕掛けてきます。
 この二人に、自称ジャーナリストのマギー・デュボアという若いじゃじゃ馬…いえ、美女が絡んでヨーロッパを横断しながらのドタバタ喜劇、という趣向です。

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 さて、レース、ハンサム、発明家の悪党、美女…とくれば、この映画をご存じない世代でも、とあるアメリカ製のアニメなら思い出されるのではないでしょうか。

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 そうです、邦題を『チキチキマシン猛レース』といいますね。あれのモトがこの映画です。
 日本の人気アニメが実写になってはヒンシュクを受けるのとは逆に、昔のアメリカでは実写映画をモチーフにテレビ用のアニメシリーズが作られる事がよくありましたね。
 つまりフェイト教授がブラック魔王。ただし、犬のケンケンは出てきません。それに当たる役柄として、マックスというとぼけた助手が登場します。

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 この助手を演じるのが、のちに『刑事コロンボ』で世界的に知られる事となるピーター・フォーク。

 配役の話が出た所で、主演の俳優たちの事もふれましょうね。

 グレート・レスリーには、ハンサムというよりもラテン系肉体派美青年と言えるトニー・カーチス。敵役というよりもむしろこっちが主役?と思えるフェイト教授にはビリー・ワイルダー監督の『お熱いのがお好き』で、トニー・カーチスと見事なニワカおかまミュージシャンのペアを組んだ、ジャック・レモン。
 そしてじゃじゃ馬女性記者マギーには『ウエストサイド物語』のナタリー・ウッド。

 それぞれコスチュームの時点で、正義の白、悪党の黒、お色気のピンク〜赤というキャラごとのテーマカラーを守ってますから実にわかりやすい。

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 さあ、見どころですが、いっぱいありすぎて…どれからお話しましょうか。

 ドタバタコメディですから、お話は先ほどご紹介したあらすじのままなのでサラッと見ていても充分愉しめますが、実はこの作品が玄人受けする理由は、よ〜〜く見ていないと気付かないような、でも気付けば思わずニヤニヤ、ときに一人爆笑してしまうような画面構成上のちょっとした悪戯がたまらないのです。
 録画してご覧になるなら、ひとつひとつ探してみるのも一興ですよ。え、どんなのがあるのかって?
 凡例としてひとつだけお教えしましょうね。フェイト教授の屋敷には、大きなヘラジカの頭が飾ってあるんですよ。でも普通の場合と比べると、妙に低い所にあるんですね。そのワケは……。

 全体の流れとしてはのんびりしてるような雰囲気なのに、次から次へと繰り出されるアクションやギャグのひとつ一つがよく練られ、仕掛けに満ちているのがなんとも味わい深いのです。
 まるでチャップリンやロイドが画面外から走ってきてゲシッとお尻を蹴飛ばして走り去っていきそうな、いにしえのあの独特な活動大写真へのオマージュ、なにより連続活劇という“動く写真”ならではの面白さを徹底的に味合わせてくれる傑作に仕上がっています。

 また、隠し設定というほどではないのかも知れませんが、さきの自動車工業の事などの歴史的背景は勿論のこと、映画公開時の世界情勢とかを鑑みると、面白さが倍増するのではと思いますので、これまたネタバレにならない程度にいくつか説明いたしましょうね。

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 たとえばマギーが強引に“女だてらに”ジャーナリストで、しかも自らレースに参加してくる所などは、映画が作られた1960年代に盛んだったウーマンリブ運動を受けて皮肉っているんですね。
 実際の1908年では、女性のファッションにアール・ヌーヴォーが台頭、それまでの大時代的で窮屈な服装からようやく動きや自然なシルエットを重視した方向に…という程度なので、まさかそこまで思想解放が進んでる筈がないんですが、映画を見ている観客にしてみれば、連日ニュースや新聞を賑わせ、家でもオフィスでも事あるごとに活発に運動を繰り広げて女性の復権を訴えるウーマンリブに辟易していた男性客に時事ネタ的な笑いを提供していました。
 その証拠に何かにつけてワァワァと小うるさい彼女は最後に───おっと、これもご覧になってのお楽しみ。

 そしてレースの途中に立ち寄った田舎町でのエピソードもまた、世相を反映しているのが楽しい。
 昔からあったことですけど、現代日本の田舎町でもありそうな街興し村おこしのノリです。NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』でもドラマの下敷きとして描かれていましたね。

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 かと思えば、とある国では歴史ばかり重たくて、地位としてはその上に乗っかってるだけ、でも実際は重圧で潰されかけてる王様の悲哀。この王様を演じてるのが───いえ、これもナイショ、ナイショ。昔の映画をあまり識らない人が見てもすぐ分かる、見事なサプライズゲストと申せましょう。

 そして、最後の最後の大殺陣物、これがすごい。
 21世紀のハリウッドが逆立ちしようがCG魔法を駆使しようが、撮影に5日、費用として当時20万ドル(現在の日本円で約7200万円)懸けたという5分弱のこのシーンだけは絶対に再現できないでしょう。

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 アホくさくて、という事もあるかも知れませんが───。
 でも絶対、あなたも見ていてワッとかヒャッとか声を出しては息を詰め、思わず身を避けたりする事でしょう。さあお楽しみはここにもありますよ。

 唯一おしむらくは、今回の放送も、DVDソフトでも日本語吹き替え版がない事です。
 もちろんオリジナル版では鼻から抜けるような声で早口でまくしたてる独特のジャック・レモン節や、本人とは全く異なる刑事コロンボの声を想定してると精神的カウンターを喰らうピーター・フォークの甲高い地声、そしてミュージカル仕込みのナタリー・ウッドのハリのある声はすばらしいんですが、やはりジャック・レモン当人がそのまま日本語をしゃべってるのかと思えてしまうほどそっくりで適役の愛川欽也氏、そして『チキチキマシン』でも同格の役?を演じてるグレート・レスリーの広川太一郎氏、おなじくマギー=ピンクちゃんの小原乃梨子さんバージョンをぜひとも次回DVDまたはブルーレイ発売の際には収録願いたいものです。

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 では、また、お逢いしましょうね。

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