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2014年3月 4日 (火)

『ローン・レンジャー』笑わぬデップが笑わせる!痛快活劇ここに復活!!

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 はい、みなさんこんにちわ。
 正直言いまして、あまり期待しておりませんでした。ジョニー・デップはシリアスもオトボケもネジの飛んだ役もこなせる大好きな役者ですが、『スウィニー・トッド』以外の昨今の出演作を見る限り、どうしても最近の似たり寄ったりのイカレタ役柄ばかりを連想していたからです。

 でも違いましたね、おなじオトボケでも、やはりジョニー・デップはすばらしい役者でした。
 この映画ほど、DVDで観てよかったと感謝した作品はありません。なんでかって?大騒ぎしてみられるからですよ。
 ヽ(´∀`*)ノ ハッハッハ!Σ( ̄ロ ̄lll) あっ!危ない!(;@д@;)あーっ!ひどい!わっ、びっくりした!わあわあ、やんややんや、それはもう、遠慮なく大騒ぎでご覧いただくためにも、ご自宅でご覧になるのが超オススメです。
 
 さあ、ではいつものようにネタバレなしの解説を進めていきましょうね。
 

 ローン・レンジャー。このタイトルを懐かしいと思われるのはもしかしたら還暦を過ぎた世代だけかも知れません。
「ハイヨー!シルバー!」今月で53歳になる私でも、姿はおろか、この台詞しか知りません。
 しかもこれがローン・レンジャーの決めぜりふだったとは、今回初めて知った次第。でも、この台詞だけは、幼い頃にはたしかによく耳にしました。

 もともとはアメリカの超がつく人気ラジオドラマだったそうです。放送は1933年。
 冒頭で覆面を付けたカウボーイ姿の少年が、移動遊園地に訪れて不思議な…というか、奇妙なインディアンの老人と出逢うのがまさにその年なんですね。お話は、そこから奇妙な老人の昔語りというカタチで始まります。

 これ、若き日の名優ダスティン・ホフマンの『小さな巨人』のオマージュなんでしょうね。その映画、不思議な運命でシャイアン族として生きて121歳になった男の物語なんですが、こちらもヒネリの効いた西部劇の大傑作なので機会があればご覧くださいね。

 閑話休題。

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 まずその構成の巧みさに舌を巻きました。ほんとに上手いですね〜。
 物語の世界観に馴染みのない観客層への説明と、原典をよく知ってる人に対しての“変更点のサンプル”を兼ねて、まるで出来の良い予告編のように、お話のオイシいところを最初にササッと見せますね。
 さらに場面の切り換えと、そうした演出で混乱させないために狂言廻し役の少年がイイ感じで“合いの手”のごとくツッコミを入れてくるので、すごく分かりやすい。
 おかげで最初「え、何コレ」だったシーンが、終わりに近づくにつれて次々と「ああ!あれはこういう事か!こう繋がるのか!」と合点がいく構造。しかも「あれ?ちょっと待てよ、さっきのアレはどうなったの?」もしっかり拾っていくところもニクい。

 今ではネイティブ・アメリカンという呼び方をしますが、まさに、『インディアン』と呼ぶ方が相応しいほどに見事な西部劇に仕上がっている所など、若い人よりもむしろ私よりさらに上の、そのまた上の世代の方にこそご覧戴きたい作品でしょう。
 面白いのは、原語ではしっかり『インディアン』を連呼してるのに、吹き替え日本語訳では『原住民』と、いったい誰に遠慮しての翻訳なのかと思うと苦笑いしてしまいますね。

 しかもどこからどこまでがCGで、どれが本当の撮影なのか見分けのつかない映像技術によるアクションまたアクションは、文字通り不可能を可能に、でもちゃんとリアリティぎりぎりの一線は越えてないというニクいニクいさじ加減は、ほんとうに見事です。

 そうしたアクションで彩られる物語、まさしくこれぞ連続活劇!
 以前ご紹介してます『マスク・オブ・ゾロ』もそうですが、危機また危機の連続、カッコいいところはとことんカッコ良く、主人公側はだれもが勇気りんりんで、悪いヤツはとことん悪い。撃ち合いのシーンでもばんばん人が撃たれる。

 でも正義感あふれる主人公が微妙にヘタレ、しかもけっこう複雑な人間関係の中にある所はさすがにドラマの習熟した21世紀ならではのシナリオ構成。
 だから悪党の質や程度も、悪党同士の人間関係も適度に掘り下げてある深みのある作りで飽きさせない。

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 それだけでなく、撃ち合いや銃の扱いなどが驚く程リアルな演出なのにも驚かされます。
 細かいことを言えば、リボルバーの拳銃で撃たれたらどんな風に怪我をするか、そういう銃の弾丸がどう当たったらどうなるか、死ぬ場合は…という所、さらには一度撃ったライフルの弾丸交換時の銃身が高熱でジュッとなる焦げ具合までちゃんと描いた演出には本当に驚きました。

 残酷なシーンほど観客にあえて直接見せる野暮をせず、間接的な撮影や巧妙なカット割りを用い、観客に想像させることで恐怖や憎悪を倍増させる所なども、ヒチコックなど過去の名作をよく勉強している監督だなと思いました。

 そして笑いのセンスが本当に素晴らしい。
 ほんとうにチョコッとした事なんですが、“それ”をやってることで普通のシーンの筈が無茶苦茶に可笑しくなる。もしかしたらジョニー・デップなどもアイデアを出してたりするのかも知れませんが、こういう悪戯っぽい演出をさりげなくできる監督は稀有です。

 ネタばらしは本意ではないですが、例としてひとつだけ挙げさせてくださいね。
 主人公が逃がすまじとトント(デップ)の脚に食らいついたまま一歩、また一歩と引きずられる場面で、横からの撮影では普通に引きずられてるのが、立ち止まった前からのカットでは、ひび割れた大地にその痕がクッキリ残ってるんですね。

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 他にも…いや、あとはグッとこらえますので、あなたが実際にご覧になって、ひとつ、またひとつ…と見つけてくださいね。

 シリアスとギャグの絶妙なバランス、西部劇ならではのスピード感と牧歌的な空気感、それらの難しい組合せを両立させているところはいくら褒めても足りないくらいでしょう。さらに西部劇では欠かせない“粋な台詞”や“決め台詞”がしっかりとちりばめられていて、脚本家の並々ならぬ力量を見せてくれています。

 もう、アクションに関しても文句の付けようがありません。
 馬、機関車、荒野、テーブルみたいな岩山に不毛の砂漠、盛り場に屋敷、場面も大道具も西部劇に欠かせないもののオンパレード。
 主人公たちは悩むだけ悩み、反目したり見直したりしながら困るだけ困って、最後には皆そろって手に汗握る大活劇。
 その大活劇場面も、これでもか、さあどうだとばかりに次から次へとアイデアを繰り出し、飽きさせない、でもイイ感じで緩急を織り交ぜてあって、観る方にもちゃんと息継ぎできるポイントを作ってあるから疲れない。
 だから何度見ても楽しめます。

 じつは役者たちに関しては、正直なところジョニー・デップとある種の“相棒”みたいなヘレナ・ボナム=カーターしか知らないんですが、ヒロイン・悪役・ちょい役にエキストラ、それぞれ見事なハマリ役になってるのもキャスティングの妙と言えるのでしょう。

 Wikipediaによりますと、どうやらローン・レンジャーは50代以上(デップも2014年3月現在51歳)のアメリカ人にとって日本の月光仮面みたいなもんで、観たことなくてもなんとなーく“誰もが皆知っている”お話のようです。
 なので謎の単語『キモサベ』に絡むトントの台詞といい、1933年の“現代”でトットの昔話の矛盾点にツッコミを入れる少年といい、原典をよく知ってる人にとってはたまらない言葉遊びなんでしょうねえ。

 その狂言廻し役となっている少年と、開拓時代に生きる主人公の甥っ子がまたいい。
 そして白馬が実にウマい。『マスク・オブ・ゾロ』に出てくる黒馬もそうでしたが、おぼろげな記憶では、昔のアメリカの西部を舞台にしたコメディ要素のある作品では、必ず天才的なウマのコメディアンの存在があったような…

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 さらに、主人公やトントもですが、まあ悪党どものしぶといこと、しぶといこと。だからといってどっちも無傷ではいない。さながら「この時代は誰もが傷だらけになりながらも、毎日を一所懸命に生きていたのだ」と言いたげで、そうしたリアリティによる緊張感がなおさら笑いの要素を浮き彫りにしているのですね。

 最後は西部劇ならではのお定まりの大団円形式ですが、そこも色々な名作をうまく散りばめつつも、ちゃんとこの物語ならではの納め方になっているのも喝采モノ。

 ある意味、ラストはあのネバーエンディング・ストーリーのオマージュなのかも知れません…と申し上げても、これはネタバレにはならないでしょう。

 エンドロールがまたいい。最後まで観てくださいね。黒いバックに文字だけが流れるのが当たり前なのに、最後の最後まで、これこそが西部劇なんですよ、と語りかけているかのよう。『The End』が出てこないのだけが惜しいと言えば惜しい。
 「西部の時代は去った」との台詞は、ジョン・ウエインの映画だったでしょうか。でもまだまだ、おもしろい西部劇は作れるのだと保証してくれた作品でした。

 笑って、騒いで、じーんと来て。でも。最後に胸に残ったのは───
「ああ。いい映画を観たな」これでしたね。

 それにしてもジョニー・デップ、お肌が大変な事になってないか、ずっと心配し通しでしたよ。
 最後に、本編中たぶん二度ほどしか“笑わない”貴重なトントの笑顔を贈りましょう。

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 では、また、お逢いしましょうね。

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