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2014年1月26日 (日)

『マン・オブ・スティール』こんな逆風に抗うスーパーマンを待っていた!

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 はい、みなさんこんばんわ。
 突然ですけど、みなさんは『昭和ガメラ』と『平成ガメラ』、どちらがお好きですか?または、『対』のつくゴジラシリーズと、『ゴジラvsビオランテ』または『ゴジラvsキングギドラ』では?
 解りにくいですか?では『バットマン』で、ティム・バートン版とクリストファー・ノーラン版。

 一概には言えませんけど、後の方が好みとおっしゃるなら、この『マン・オブ・スティール』はお気に召すのではないでしょうか。
 私は、大変満足いたしました。いわば、アメリカンコミックは勿論、スーパーマンという作品自体をご存じない方ほど楽しめると思います。
 でもたぶん、映画好きな方にそんな方は居られませんね。だから風当たりは相当強かったでしょうね…
 

 さあ『マン・オブ・スティール』、鋼鉄の男。

 あらすじは今更言うまでもない『スーパーマン』の誕生からヒーローとして開眼するまでという、クリストファー・リーブ版の1、2をひとつにしたもの。
 ですが、2006年のリメイク『スーパーマン・リターンズ』のような煮え切らない作品とは完全に一線を画した傑作に仕上がりました。

 もちろん、好悪で言えばクリストファー・リーブ版のスーパーマン、それも『2』が大好きです。
 ですが、あれも、その後のテレビ版も映画版も、あくまでコミック版…つまり1938年に登場したままの、要するに子供向けとして描かれたスーパーマンの“実写化”なんですね。

 なんせ古い。最初に読んだ5歳ほどの子供が御年80歳を越えるわけですから、おとぎ話的な解釈や当時の時代劇として描くならそのままで良いわけですが、映像や通信技術だけなら当時の空想科学小説を地で行き、鋼鉄よりも炭素繊維樹脂の方がはるかに頑丈、政治的にはソ連も崩壊してるまさかの世界に彼の存在や活躍にリアリティを与える事自体が“夢物語”の茶番劇になってしまう事は『スーパーマン・リターンズ』が実証してしまいました。

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 玉石混合状態のリメイクだらけな昨今のハリウッド映画事情ですが、その中でやはり後世に残っていくとしたら、“旧作とは異なる解釈”で制作したものしかないと思います。旧作の出来不出来やファンが納得しようがしまいが。
 ましてスーパーマンです。むしろよくぞ作ったと思いました。企画案を提示した時点からどれだけの逆風だったことかと、そういう方面の苦労が偲ばれますね。

 映像はもう今やどこからどこまでが特撮で、合成で、本物なのかまったく区別がつかない時代になってるので、あとはどれだけ作り手の空想構築力があるかの勝負とも言えますから、その点では見事のひと言に尽きます。
 もう、あまりにも凄まじく、NYを舞台にここまでやれるのかと思うと同時に、スーパーマンという存在、そして同じクリプトン星を故郷とする異星人の圧倒的なパワーを“実感”させるにはこれだけの映像を用意しないと説得力を持たないのでしょう。

 すべては、『現実にスーパーマンが存在したらどうなるか』という、SFをハードな作品として創る場合の出発点であり構築時の絶対的な基準となるルールに法(のっと)って作られています。
 これは完全な新作ならそれほど苦労しませんが、誰もが知ってる“矛盾だらけのおとぎ話”…75年も昔(公開当時)の理屈抜きで描かれた子供向けマンガに、現実感を適用するとなると大変な苦労が伴いますね。
 なぜなら、その物語世界を古くから愛する人の世界観を覆すところからお話を作って行かざるを得ない。つまりコペルニクスやガリレオやダーウィンみたいにアウェーな進め方しかないんですね。

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 同じようなアウェーな中で、無数とも言える矛盾を新論で片っ端から見事なまでに解決してしまった作品として以前にJ・J・エイブラムズ版のスタートレックを褒めちぎっていますが、『マン・オブ・スティール』は、さらにまさかの重要エピソードもばっさり大胆にカットした上での再構築を試みているのには驚きました。

 おそらく旧作、ことに女性ファンにノーをつきつけられる再編箇所があるとしたら、きっとこれではないかと思いますね。でも、よくよく原典の変なところを考えていくと、実はこの部分がもっとも矛盾していたのかも知れません。
 むしろお話を全く知らない人にしてみたら、この出逢いやその後の展開こそが自然に思えることでしょう。
───え?なんのこっちゃ分からない?いえいえ、ご覧になったらすぐにお分かりになりますよ。

 もちろんいろんな考証に於いては「あらっ?」と思う部分がないでもないですが、それでも2時間の中でよくここまでまとめたと思いました。

 切り口もかなり違いますね。主人公であるクラーク・ケントは孤独です。
 あまり存じませんが、アメコミにおける“孤独のヒーロー”とはスパイダーマンの代名詞だそうです。しかし、先のリアリズムを追求して行けば、スパイダーマン:ピーター・パーカーより遥かにカル・エル=クラーク・ケントの方が孤独要素満載であることは明らかですから、やっと納得の行く描き方で彼の生い立ちとその後が観られたわけです。
 リーブ版でも悩み苦しみはしましたが、共感できるほどの哀しみは感じなかった。ある意味、これまでは作り手もクラークの事をちゃんと理解できていたとは言えなかったかも知れません。

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 そうなると彼の養父母であるケント夫妻、ことに父親の存在にぐっと深みが加わりましたね。演じるのはケビン・コスナーというのも『フィールド・オブ・ドリームス』へのオマージュでもあるんでしょうか。
 そして母役のダイアン・レイン、いい感じに老けましたね。これまでのいかにも田舎のお母さんというよりも、現代アメリカの普通の初老の主婦という雰囲気が良い。

 リーブ版でも“原作と大きく違う”と言われたのがヒロイン、ロイス・レインでしたが、今回ではさらにがらりと変わっています。

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 でも個人的には今回のエイミー・アダムス演じるロイスのほうがむしろ納得いきましたね。ただ、ピューリッツァ賞を獲るほどの記者に見せるには、もうひと押し抜きん出た何かを感じさせるエピソードが欲しかったところですが。

 撮影時、実年齢で38歳。若さと言うよりどこか幼さの残るクラーク役のヘンリー・カヴィルが29歳だったことを考えますと、どことなく画面から感じ取れた“おねえさんっぽさ”はあながち間違いでなかったなと思いましたね。

 これ一作で完結しうるほどに完成度が高く、冒頭から彼が抱いてきた最大の課題は解決しているために続編があるとは思いにくいのですが、もしあるとしたら、本作ではゾッドや米軍司令官たちを通して裏テーマのように描かれている『誰のための正義か』という、さらなる難題に挑戦して戴きたいものです。

 もちろん、せっかく原作とは一線を画した革新的な作品です。他のアメコミヒーローズとの競演などは願い下げにして戴ければ言う事ありませんね。

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 それにしてもラッセル・クロウ、鎧が似合いますねえ。ローマ時代劇が盛んな50年代なら間違いなくオファー殺到、ヘストンとの競演もあったんですが。

 では、また、お逢いしましょうね。

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