« 『仇討』究極のリアリズムが描くのは武家の悲哀か現代社会への皮肉か | トップページ | 『父と暮らせば』戦争の傷痕から学ぶべき事。 »

2011年6月25日 (土)

『ピーター・フォーク』飄々たる名優は本当に神様になってしまった。

Peterfalk_columbo『刑事コロンボ』の、なんてわざわざ言うよりも、刑事コロンボが亡くなった、というほうがしっくりくるほど、日本で知られた名優でしたね。

 コロンボと言えば殺人現場でも灰を落としまくってた安シガーと、放送開始からずっと乗ってた自称フランス車とワン公とよれよれコートと “チリ” ことチリビーンズ。
 いまだに本物を食べた事無いんですけど、いつ観ても美味しそうでしたね。

 ざっと検索するだけでも全シーズン全話に関する研究サイトがいくつも見つかるほど世界的に厚いファン層がある『刑事コロンボ』。なので私ごときは想い出話を語りましょうね。

 昨年までBS2で再放送がされてたのを私もつい先日まで大事に観ておりました。
 

 最初に日本に、NHK総合にコロンボが登場したのは、Wikiによりますと1972年8月27日とある。
 そうでしたそうでした、わたし、最初の放送はかなり後の方になってからしか観てないんですよ。なんで観るようになったかというと、次の年になって中学に入ったらクラスメートにマニアが居って、その子の強いススメで観始めた。
 もちろんマニアといっても中1ですし、今と違ってビデオもないしテープレコーダーさえ一般化してませんから知れたものですが、彼はすでにNHK出版局から出ていた単行本版を熟読しておりました。

 幸いな事に?放送が全てです。見損なったらはい、それまでよ、で再放送を祈るしかないので、彼がどんなにネタバレしようとも確認のしようもない。でも熱く語る彼のおかげで、始めの頃の数話『パイルD3の壁』『別れのワイン』『死の方程式』あたりは観てない話までしっかりと焼き付いたんですね。

「いえ、あたしのかみさんがあなたの熱烈なファンでね」
「あー。ちょーっと。もうひとつだけ。いえ、お手間は取らせませんから」
「本当?これ、高かったのになあ」

 コロンボの特長ある口調は今も知られるところですが、芝居が難しすぎるのか、一般人では口まねさえできる人は滅多にいなかったように記憶しています。
 今でも竹中直人氏くらいしか思いつきません。
 ですから初代の声優を務められた小池朝雄氏が亡くなった時、絶対もうコロンボは無理だと思ったので、二代目の石田太郎氏には驚きました。ビデオ版の銀河万丈氏もそう。

 でも一番驚いたのは、ご本人の声を初めて聞いた時。

Brinks_job その時はもう私は高校生になっており、別のコロンボマニアに引っ張られるようにして映画館へ観に行ったのが『ブリンクス』という実際にあった大銀行の金庫破りのお話を作品化したもの。
 いや、その甲高めな声には驚きましたね。小池、石田両氏とも厚みのある腹筋系の声をされてるので、鑑賞後に「田舎のお爺(おじん)や」と表した友人の表現が今考えてもぴったり。

 もちろん映画少年だったら名画座などに足繁く通って『グレートレース』くらいは観てて、とうに知ってたかも知れませんが、私はテレビで鑑賞専門でした。
 また、ピーター・フォークはコロンボ以前では脇役ばかりでしたし、いま作品リストを見ても名画座で繰り返し上映されそうな作品はグレートレース以外でも数本あるかないか。
 当時はまだ音声多重放送などなく、基本的に字幕放送ではありませんでしたから、テレビで観られる洋画と言えば吹き替えなので、ご本人の声を知ってた人は少なかったでしょう。

 コロンボと言えばピーター・フォーク、ピーター・フォークといえばコロンボ。しかし実際はひとつの作品で大ブレイクした数多くの俳優たちのように、やはりイメージの固着化はしんどかったでしょうね。
『ブリンクス』は『名探偵登場』とともに1978年作品で彼の代表作に挙げられるのですが、コロンボで大人気を博したいわば最盛期の作品。『名探偵登場』にオファーされたのも間違いなくコロンボに対するオマージュにほかなりません。
 正直言いまして『ブリンクス』はさして面白くない。まあコロンボマニアのピーター・フォーク観たさに無理矢理引っ張ってゆかれた先入観もあったんでしょうが、多くの観客がやはりそうだったのかもしれません。

 たしかに彼の持ち味は “おとぼけ” にあったのは否めません。

 私の生涯の映画ベスト10に入る『グレートレース』でもそれは遺憾なく発揮されています。

Blakeedwards_greatrace

 レンタルにもないので滅多に観る事ができないでしょうからご説明いたしますと、今もハンナ・バーバラプロダクションのアニメキャラとして知られる『ケンケン』…そう、日本のタイトル『チキチキマシン猛レース』で『ブラック魔王』の相棒として悪事のアシスタントをする二本足のずんぐりむっくりの犬。
 あれこそは映画『グレート・レース』ではマックスという名前でブラック魔王のベースとなったフェイト教授の助手の代わりに置かれたキャラなんですね。

 もっともマックスはケンケンよりもずっとコロンボ寄りのおとぼけキャラでした。

 でも刑事コロンボという強烈なキャラクターの影響力は俳優本人さえも呑み込んでしまった。
 だから先に書いたように、よほどの覚悟がないと猿真似さえ許さない。逆に見事に取り込んでしまってさらに新たなキャラを産み出したのが日本のドラマの傑作『古畑任三郎』。
 ですが、先日放映を終えた『遺留捜査官』で上川隆也氏が演じた主人公・糸村聡もそうでしょうね。きっと続編が作られることでしょう。

 コロンボの真似と言えば、ひとつ変わったオマージュもあるんです。
 当時の少年ジャンプに『トイレット博士』という下品さで言えば世界記録的なヒドいギャグマンガがありましてね。そこに登場するスナミ先生というキャラが時折、コロンボの物真似をしたのが強烈に印象に残っています。作者がかなりお好きだったんですね。

 さて最後になりましたが、表題の『ピーター・フォーク』飄々たる名優は本当に神様になってしまった。のことですがね、これ見てピンと来る人はそうとう“ウイスキーがお好き”ですよ。

 あいにく私が最もここで紹介したかったCMは探せませんでした。じつは、このCMがその第二弾なのです。

 最初のは全てが感動的でしたよ。うろ覚えですが、こんなナレーションでした。
「あたし、神様です。ウイスキーの。…夢を見ましてね。刑事やってました。葉巻が好きで、いつも一所懸命で、いつも走り回って。───そしてワイフを愛していました。」

 これを小池朝雄氏の声で。たまりませんわね、コロンボファンにとっても、サントリーウイスキーファンにとっても。
 この頃のサントリーウイスキーのCMはどれもこれも素敵でした。夢と浪漫と、なによりも『粋』がありましたね。
 たしか、紙媒体などのキャッチコピーが『昔々は麦でした』。

Youngpeterfolk ←パイロット版というか、単発ものとして最初に登場した『刑事コロンボ』。
 若い。そしてちょっと肥ってますね。まだ例の《フランス車》は古くはあっても綺麗で、コートもパリッとしてます。なによりも髪型がスッキリ!
 でも葉巻はしっかり吸って灰を犯人の豪邸に落としまくってましたね。

 今でこそトミー・リー・ジョーンズが武田鉄矢氏と競演などしてますが、当時はこうしたビッグネームのCM起用はまれで、予算面だけでなく本国ではハリウッドスターがテレビCMに出るのは格が下がるとして嫌われたのだそうです。ただ、日本のCMは別だったとか。
 このヒットに気をよくしてか、この後ピーター・フォークによるサントリーのCMは続きました。
 そしてついにご本人の肉声が登場したのがこのCMのシリーズ。オールドからローヤルにお酒のランクも上がりましたね。

 ちなみに今もFM東京系で放送されている長寿番組『Suntory Saturday Waiting Bar "AVANTI"』は完全にこのCMのイメージから生まれたもの。
 あいにく私は気障すぎるのと嫌味っぽいこの番組は苦手ですが。

 別番組として『ミセス・コロンボ』があったものの、ちゃんと観ていなかったんで記憶がないのですが、主演したのが『スタートレック・VOYAGER』のキャスリーン・ジェインウェイン艦長だったと後で知ってこれもビックリ。

Colombo

 とうとう最後まで夫婦が顔を揃えることはなかったものの、ファンの心の中ではいつまでも仲睦まじいコロンボ夫妻と、できの良いんだか悪いんだかよくわからない甥っ子たちの姿が見えるのは本当に不思議です。


 心からご冥福をお祈りします。

 では、また、お逢いしましょうね。

 ------------------------------------------------------------

|

« 『仇討』究極のリアリズムが描くのは武家の悲哀か現代社会への皮肉か | トップページ | 『父と暮らせば』戦争の傷痕から学ぶべき事。 »

★★オススメCINEMA」カテゴリの記事

コメント

TOMさん、コロンボ特集おおきに!
ついCM動画まで観てしまいました。

あたしゃあ、惚れてねえ、コロンボ刑事に。ああいう夫なら奥さん最高に幸せやろなあとか思ってました。

いつも思ってたのは、コロンボの犯人に対する切り口は作為なのかどうなのかってこと。頭悪そうに、不器用そうに見せてて、あれほど頭の切れる人はいないんだけど。

おっしゃるように、ミセス・コロンボとか甥っ子とか背景の人物まで見えてくるってのは凄いですね。

お年を召してより深みが増して、ちょっと深みが増し過ぎてきたかなという頃に姿を消して、そうして天使になっちゃいましたね。

ピーター・フォークさん、おおきに!

投稿: 猫式部 | 2011年6月26日 (日) 09:19

猫式部さん、毎度です!
クリスティやドイルみたいに謎解きメインとかやったらきっと私も観てなかったと思うんです。
コロンボの魅力は心理戦。それも “いかに犯人が誤魔化しおおせるか” というセコさというのが楽しい。
ただ、最初に比べるとあとになるほど犯人の頭脳レベルちうか気品が落ちてる気がするのがチト残念でしたけど。けど今もやってたらついつい観てしまうんですよね。

投稿: よろ川長TOM | 2011年6月26日 (日) 12:30

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1340266/40542371

この記事へのトラックバック一覧です: 『ピーター・フォーク』飄々たる名優は本当に神様になってしまった。:

« 『仇討』究極のリアリズムが描くのは武家の悲哀か現代社会への皮肉か | トップページ | 『父と暮らせば』戦争の傷痕から学ぶべき事。 »