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2010年6月10日 (木)

『宇宙ショーへようこそ』空想力の補充!夢心地にひたる136分。

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 あなた、最近、空想力足りてますか?不思議なものに胸をときめかせてますか?
 あら、最近ごぶさたですか。ならば、この作品を処方しましょうね。
 
 私もかなりこの薬は効きました。継続使用したいのでDVDが待ち遠しい。
 

 お話は。全校生徒たったの五人の小学校の夏休み。親睦会と称して子供達だけで数日間の合宿中のある日、宇宙からやってきて怪我をしていた眉毛の濃いぃ“しゃべる犬”を助けることに。
 彼の目的は地球に固有のある植物の研究。
 
 ポチと名乗った彼は、お礼にと彼等を月旅行へと誘う。驚いた事に月には異星人たちの基地ならぬリゾートワールドが拡がっていて、あらゆるレジャーが楽しめた。ところが、ある事が元で月から地球への立入は当分の間全面禁止措置が採られる事になって、結果的に子どもたちは還れなくなってしまう。
 しかし、間接的に他の恒星系へ跳ぶことで一度遠回りすれば可能だという。だがそのための費用はとんでもない高額。仕方なく、手分けして月面でアルバイトをするハメに───。

 監督は斬新な超能力系SFシリーズ『R.O.D.(Read or Die…本読まんと死ぬんぢゃ、てすごいタイトル)』、そしてある日突然“神様”になってしまった中学生の女の子の、なんとも不思議で心温まる日常を描いた『かみちゅ!』で知られる舛成孝二氏の劇場用オリジナルアニメ第一弾。

 いや、正直な話ね、『かみちゅ!』の時に、劇場用ならともかくも、なんでこの人はテレビ用でこれ程までに徹底的なコダワリを見せるんやろう、とずっと感心しながら拝見させてもらっていた監督さんなんです。
 今でこそ『けいおん』を制作している京都アニメーションの芝居と演出を毎回褒めている私ですが、舛成氏率いるチームが生み出す作品の登場人物たちの躍動感、生命感は、京アニ台頭以前からとんでもないグレードの作品を週イチという過酷な条件のテレビシリーズ下で実現させていた人たちなのです。
 
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 このチーム、何がスゴイと言って、登場人物たちの“演技力”。
 もちろんいわゆるセルアニメの技法で描かれていて、ご覧のように静止画でみる限り絵はどこから見ても日本ならではの可愛いアニメのタッチなんですが、舛成監督のスタッフが動画にすると肉感が───というとエロチックですが、筋肉の躍動感が伝わってくるんです。
 この手法のため、京都アニメーションの繊細にして静的な表現に対して、同じく繊細でありながらも実にダイナミック、元気いっぱいのアクションで魅了してくれるのです。

 ちゃんと骨格があって、そのまわりにある筋肉の存在感、その硬さや柔軟性まで描き出す表現力。
 もちろんそれは、年齢や性別の違いによる微妙な動きの差さえもしっかりと伝わる。そして今作品で重要なファクターとなっているものの一つが『さまざまな強さに変化する重力』。
 これによって主人公たちの動きはさらに複雑さを増し、動画として描くのはますます困難なはずなんですが、カミワザにも等しい技術と根気と忍耐で描きまくってる事がジンジン伝わってきます。

 そして次々ととびだすのは様々な作品の微笑ましいオマージュ。

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 宇宙を駆ける超特急列車!…は往年のマイナー系児童文学アニメをほうふつさせる動き、さらにポチの旧友は透明なガラスのようで、しかも頭の水槽に泳いでいるオタマジャクシの姿は…と、若い観客でもわかるネタが多く、おまけに二重三重に“かけられて”いるという凝りよう。

 そんな調子で完全に意識下に踏まえて確信犯で描いてるな、というシーンやモノがなんぼでも登場しますが、それらを声に出していちいち数え上げるのは野暮というもの。
 ですから初回は単純にその都度「お!」「あ!」とニンマリ笑って見送り、二度目の鑑賞時に腰を据えてじっくりと数えてみても良いかも知れません。
 ただし、この監督は私より少しだけ若い程度なので、出てくるネタの振り幅はそうとうなものです。それこそお若い方には「お父さん、お母さんにきいてみてネ」ほどのネタも出てきます。

 そうしたネタのうち、古い古いネタをひとつだけお教えしましょう。

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 周(あまね)とポチが手にしているジュース。ひとめで判る方はアラフォー or リーチ・ザ・フィフティ以上…なんて言うと、みなさん知らんふりしそうですけど。
 ご存じでしょ?お米屋さんだけが取り扱っていて、スリムだけど頑丈なガラス瓶に入っていたあれです。注文するとケース単位で届けてくれる果肉入りオレンジジュース、『タケダのプラッシー』。バヤリースのオレンジジュースは子供心にも水くさくマズくて飲めたもんではなかったあの時代、プラッシーは濃く、甘く、そしてプチプチしたみかんの果肉が魅力でしたね。
《参考:プラッシー ~米屋の友~

 このプラッシー、いまではペットボトルになってるようで、しかもいつでも売ってるものでもないらしい。
 だからといって、この物語の舞台は昭和40年代か、というとそうではないんですよ。
 おませな倫子はデジカメ付き携帯電話を持ってるし、平成でないと存在しないお菓子も登場しているからです。

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 そんな調子でお話にはまったく年代説明が出てきませんが、昭和テイストなものも多い田舎の風景などを観ているとジブリ系作品と比較される方は多いに違いないと思います。
 しかし実際の尾道を舞台にした『かみちゅ!』の時からこうした自然の風景、町のたたずまいを描くのは大得意なスタッフたちでしたし、ジブリとの大きな違いは、あくまで自然は風景、背景の一部という捉え方。これだけしっかりみっちりと描いてあるにも関わらず、自然は大切だ!自然は美しいぞー!という構えではないんですね。
 
 ましてこのお話の主眼であり舞台は地球ではなく宇宙、他の天体なので、画面の隅々まで丁寧に描き込まれたむちゃくちゃ美しい風景も、もったいないくらいアッサリ流してしまう。のんびりじっくり堪能するほどには見せてくれないのです。
 そのかわりといっちゃなんですが、宇宙へ出てからのシーンはこれでもか、これでもか。よくぞここまで想像力で構築し描き込んだな…とただただ感心してしまいます。
 まさに総天然色の空想、妄想、夢の映像のてんこ盛り状態。

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 もちろんこっちもめまぐるしい。昔のアニメならこのシーンの動画だけで半時間はつぶせたのではないでしょうか。隅々まで手抜きを知らない動画で満ちているほどのとてつもない情報量にもかかわらず、まばたきしてる間に見損なってしまう。ああ、なんてもったいない。

 とにかく見逃さないように、と、おもわず主人公たちと同じようにきょろきょろ。まさに遊園地を高速移動している気分。
 そしてタイトルにもなってて、彼らが目撃する『宇宙ショー』。手塚先生がご存命ならきっと今もこういうシーンを作りたかったろうな、と思いました。

『かみちゅ!』では日本の八百万(やおよろづ)の神様───それこそお豆腐からタワシから、ありとあらゆるものに神様が宿っているので───たちが画面を見渡す限り次から次へと登場するのが実にユニークで楽しいのですが、今回の『宇宙ショーへようこそ』では、まさに八百万のエイリアンが登場。
 スターウォーズなんか目じゃないです。メン・イン・ブラックですら『宇宙ショーへようこそ』に比べたら閑古鳥カーカー状態。

 といっても、異星人たちはみんな気さくで陽気。姿もカタチもてんでバラバラなんですが、フツーに町ゆく人と変わらない。珍しいはずの夏紀ら地球人にほとんど気も留めません。しかもみんないい人ばっかり。
 まず、いわゆる“ならず者”がいないんです。そこの人!物足りないなんて言っちゃダメです。もちろん、悪党はちゃんといるんですよ。

 彼らが狙うのは、宇宙ではすでに絶滅してしまった幻の植物。その名は『ズガーン』。

 このズガーンを巡っての悪党たちの暗躍に巻き込まれてゆく主人公、夏紀たちの冒険がお話の軸であり、後半の見どころになってゆくのですが、それは実際にご覧になって戴くとして。

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 宇宙をまたに掛けた大冒険物語と並行して、ふたつの友情物語も織り込まれています。
 ひとつはこちらの萌え系担当、インクちゃん。異星人です。
 超高速長距離列車に乗るための資金稼ぎのためのアルバイトとして、宇宙大好き少年、康二(こうじ)が見つけたのがインクの父親が経営する店。宇宙の不思議が大好きなふたりが仲良くなるのはごく自然なお話。

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 そして夏紀のいとこ、周(あまね)。物語のはじめから、夏紀とはなんかぎくしゃくしっぱなし。その理由とは?お話が進むにつれて、子供には子供の世界でいろんな事があるんやなあ、と奥の深い脚本にどんどんハマってゆきます。

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 やがて、大冒険はみんなの心をほんとうにひとつに結んでゆく。
 表面だけではない、ほんとうに人と人が心を開き合うとはどういうことか。

 ひょんなことから異星人と『第三種接近遭遇』してしまった5人のこどもたちが“地球人移動最長記録”を達成しながら夏休みの数日で得たものを、ぜひご自身の目で確かめてくださいね。

 あっっ。そうそう。
 最後に、ちょっとマニア受けの下世話な事もお話しましょうね。

 そこのアニメヲタクなあなた、予告編だけご覧になって、この作品は健全この上ないファミリー向け作品だと決めつけてませんか?

 なんのなんの。あの舛成監督、倉田氏───によるベサメムーチョの原作・脚本でそんな筈がないじゃありませんか。

 ホットパンツで跳び回る、わさび大好きヒロインの小山夏紀の健康系色気がただ事ではありません。
 予告編に登場する夏紀のカットはあまり可愛くないのが残念ですが、本編では間違いなく『元気系美少女』。そして女の子キャラは四人もいますが、誰一人ミニスカートが居ません。周(あまね)はカバースカートをはいてますが、初期のジブリアニメのように、まったくパンチラがない異例とも言える設定なのです。(唯一、パンツが映るシーンがありますが肝心の中身が入ってない。そのシーンに出逢ったら「ああ、あのオッサンがゆーてたのはこれか」とこっそり笑ってください。)

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 しかし!この夏紀だけは、とにかくお尻を意識して描いてる、見せてるのがありありと判るカットやアングルの連続。小尻フェチにはたまらんものがあると思いますが、わざとらしいパンチラなんかよりもはるかにセクシー。
 あいにく予告編にはほとんど登場してないのでここでじっくりとご紹介できないのが実に残念ですが、そらもう、オトナの女性がはくと単なる物欲しげなエロ下品ルックにしか見えないホットバンツ。
 それがまったくイヤラシさを感じさせず、なのに夏紀がボーイッシュならボーイッシュなほどお色気イッパイになるという、超微妙かつ似合う最終年齢をフルに活かされた描写が満載です。

 アナログ時代にどこかで誰かが書いてた文章を読んだのですが、スポーツをやるための若い肉体としては、彼女くらいの年齢がもっとも理想的なのだとか。それもたしか、女の子の方が向いているみたいな事が書かれてた記憶があるのですが、夏紀はまさにそのまんま。
 しかも!夏紀自身にも変なクセが。これもどうやら、お色気担当と関係ありそうで妙に意味深。しかも最後の最後までそのクセが抜けません。

 彼女自身はまだ恋愛とかには無縁なんですが、いずれ“きよ兄”とくっつくことがあるとしたら、次の犠牲は───。

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 では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

こんにちは。
「ホットパンツ」のアツイ語りに笑わせてもらいました(^^)
無駄にパンチラが登場しないつくりだったので健全だなーとは思っていましたが、確かに、見えそうで見えないところにそそられる心理とかってありますし、健全に見せつつシッカリ描いている技量、っていうのかな?言われてみればホントだなーって思いましたよ。

私としては、もうひとつツボにはまる何かが足りない映画でしたが、良い作品だと感じました。
興行がもうひとつ伸びないのが少し残念です。

投稿: たいむ | 2010年7月15日 (木) 17:16

たいむさん、スパム対策のせいで確認が遅くなってすみません。
たいむさんの所にも書かせて頂きましたが、やはりてんこ盛りな内容に対して、映画サイズに不慣れ…というのが最大のネックだと思うのです。
逆にワンクールに伸ばせるだけの内容ですからね。

どうかこれに懲りずに、このスタッフでまた劇場版にチャレンジしてもらいたいと思います。

投稿: よろ川長TOM | 2010年7月20日 (火) 00:21

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