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2010年4月28日 (水)

『ガンダムUC(ユニコーン)』SF映画ファンを自称するならご覧なさい。

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 ちょっと待って、そこのあなた。アニメの話は興味ないわ…と思てませんか。ハリウッド製のアニメは観るのに?あんなもん比較になりませんよ。日本のアニメの本当の凄さを知らんでしょう。オトナの鑑賞眼を自負するなら、これを観なさい。絶対もっともっと、日本のアニメを観たいとレンタル屋で探すようになる。

 私は映画好きな人ほど、今の日本のアニメを観て欲しい。知って欲しい。
 あなたたちは、それがどれほど素晴らしい作品なのかを見て取るチカラがある人たちだから。

 だから、今回は内容には言及しません。観る目があるなら冒頭だけでその物凄いスケール感が伝わるはず。そしてグイグイとこれから起こる、とてつもない物語にたちまち引き込まれてゆくでしょう。
 

 とはいえ、画面から得られる情報量だけでもものすごい。
 だからこそ何度も楽しめるし、また何度も観た方がより理解度が増す作品でもあるけれど、肝心の人間関係や物語の根幹はおどろくほどシンプルなので分かりやすい。ストレートでテーマもすんなりと胸に落ちてくる。なのに、一人一人が背負っている背景やしがらみ、さらに歴史的な事件やおのおのが目指す理想に関しては、もつれた糸をほどくようにじわじわと解っていく醍醐味がある。
 もちろん科学考証はよほどの知識がないとつけいる隙もない。そもそも、スペースコロニーをちゃんと科学考証に基づいて描いたSFはガンダムが最初。

 さすが一流の作家とスタッフが苦心惨憺して練り上げただけの事はあります。

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 人類が宇宙へ進出して半世紀という近未来から始まるテレビアニメーションシリーズ、機動戦士ガンダム。内容を知らなくても単語としての名前くらいはおそらく日本中で知らない人の方が少ないほどの作品。

 しかし、映画、SFが大好きという場合でガンダムは観ない人に理由を問うと「すでにあまりにも長く続いてて、たくさんの作品があり、今さら入って行けない」とおっしゃる方が実に多い。
 いわば、予備知識がないと楽しめないのではないか。マスゴミのあおりのせいもあって、ガンダムという単語がオタクと同義と思われるほどに、世界を構築すると共に強固な偏見の殻までも作ってしまったのがその原因。
 でも、何も知らないでも面白い映画は面白い。素晴らしい物語は感動するということは誰よりも皆さんがよぉくご存じの事。

 ここで思い出して欲しいんですが、あなた、歴史スペクタクル映画をご覧になるとき、歴史の勉強をして行かれます?まあ、真面目な方ですね。
 私は予告編はもちろん、できるかぎり何も知らずに観て、映画で知った歴史がたくさんありますよ。アラビアのロレンス、戦場に架ける橋、キングダム・オブ・ヘブンなどなど。

 同じなんです。大切なのは、あなたが何を見て何を感じるか。

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 そしてもうひとつよく聞かされるのが「ロボットが出てくるのがちょっと…」というご意見。

 そうおっしゃる方ほど、今のガンダムを見て欲しい。

 『スターウォーズ』『ターミネーター』とか未来メカは抵抗なくご覧になられるでしょ?『エイリアン2』でアニメ『ザブングル』の小型メカそっくりのが登場して以来、最近は『アバター』『第9地区』も含めてようやくハリウッドも人型兵器が登場するのが当たり前になってきましたね。
 しかしあれは無骨で美しくない。なんせ日本のは洗練され、磨かれ方が違う。もう、ハリウッド製メカが完全に時代遅れに見えるほどリアルで生々しい操縦描写です。
 実際に動いているシーンをご覧になれば、熟練したパイロットがこれを操縦するさまは『トップガン』でトム・クルーズがF15で空中を駆けるシーンなど足下にも及ばないほど美しい。

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 ここに出てくるのは、単に人のようなカタチをした汎用兵器というだけのこと。


 ガンダムはテレビ媒体から生まれましたが、30年を経て年代記となり、微に入り細に入りドキュメンタリックに確立された、もうひとつの地球の歴史。
 しかも、今の日本のアニメーションは私がさんざんあちこちでウダウダ語っているように、演技、演出、脚本、キャメラ、すべてが世界の名作映画と肩を並べるだけの作品グレードになっているのです。

 考えてみてください。監督が役者に「あなた、そこは目線だけで哀しみの演技を。」と命じてハイと筋肉を動かして演じているのではないんです。一枚一枚、アニメーターが絵を描いているのです。昔と違って、目玉だけ動けばいいのではない。現実の人間と同じで、眉も、口と連動してアゴも、頬の線も、さらに髪も揺れる。
 それを何枚も何枚も描いて、つなげてパラパラとめくることで初めて動くという原理はリュミエール兄弟、エジソンの時代から変わらない。
 その一連の動きで監督の望む「目線だけで哀しい演技」をやってのける。それが今の日本のアニメーションの技なのです。実際に高いレベルの作品をご覧になった事があったら、なぜ日本のアニメが世界で高く評価されるのか、の理由の一端がご理解いただけるはずです。

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 それほどの演技、演出で見せて行くドラマ、台詞やナレーションに頼らずに人物の演技、小物、そして舞台全体で世界観や人間関係を観客に知らしめてゆくという、高度な演出で魅了する。
 あなたはそれを見つけ、気づき、感じる事でこの作品の世界観に魅せられ、いつしか宇宙世紀という未来の時間に入り込んでいる事でしょう。

『宇宙大作戦』で知られるスター・トレックシリーズが初放映40年を経た今なお人気が高く、新作の映画さえ制作されることは驚くべき事ですが、その間に創られた作品はそのまま人類の宇宙開拓史になっている。
 そしてそれは、いずれもファンの手によって膨大なデータの蓄積と考証の検証と再考、昔はフォーラムや集会で、今はさらにネットも加わって討議を重ねながら無数の名もなきファンたちの合議によってエンサイクロペディアが編纂され、それらは今も追記と改訂を繰り返しながら成長しています。その内容は一般の人にはおそらく想像もつかない高次元のもの。

 一種の学術研究書と言っていいレベル。

 これを『オタク文化』とひとことに評する人は実物を読んだ事がない視野の狭い口先だけの人。たしかにね、私を含めて我を忘れて熱っぽく語る人は見た目にうっとぉしいと思うのがご時世です。でも単に好きだからってだけで、できる事でも、できるモノでもない。
 サブカルチャーと呼ぶのは勝手ですが、歌舞伎だって、かつて京都は三条河原のサブカルチャー劇団。それが今や国宝ですからね。

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 だから、登場する人型兵器がなんで動くの、なんで人のカタチなの?という疑問はこれらの『辞典』がほとんど解決してくれます。だから観る前に無理矢理そんな事を知る必要はありません。
 龍馬を知るまで幕末の歴史なんか興味なかった人、手を挙げて!…ほらね。私なんか、光栄のゲームやるまで三国志そのものを知りませんでしたもの。…え、あなた今も歴史に興味はない?龍馬が好きなだけ?いえ、それも映画の楽しみ方です。

 けれどいずれも所詮もともとがテレビシリーズ、多くの脚本家や監督の手によって成されているために矛盾点や無理押しな展開があることは否めませんが、それでも連綿と続いて行く“物語の遺伝子”は系譜としての縦糸とファンの支持という横糸で着実に一枚の布が織られてゆく。
 いやむしろ、大勢の手によって生まれるからこそ、独りでは絶対に生み出せない世界の拡がりがそこに見えてくる。

 そして反対に、論理的に構築された世界にちゃんと住み、そこの空気を吸った作家によって描かれた物語は、間違いなくその世界の歴史の一ページを記すことができるのです。
 スタートレックのように、たとえオリジナルを生み出した作家がこの世にいなくなってても。

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 この『ガンダムUC』は、まさに今求めうる最高の技術と頭脳、そして熱意と根性によって生み出された作品である事は間違いないでしょう。
「ガンダムの大河小説を描きたいと思った」UC作者の福井晴敏氏はそうおっしゃった。
 この作品はその言葉を裏付けるに足る非常に高いレベルのSF作品。

 福井晴敏氏の作品としては『亡国のイージス』を劇場で観て、その後物語のディテールが知りたくて原作を読みました。
 読み始めてすぐ思ったのは、正直なところ、よほどの力量の監督でさえも、この人の作品を2時間で描くのは不可能だということ。だから映画の方は、よく出来てるとは思ったけど原作のダイジェスト版に思えた。
 むしろ彼のような奥の深いスペクタクルやSFの映像化は、アニメーション以外に要求を満たすだけの映像はできないといっていいでしょう。
 SFXと呼ぼうが特撮と呼ぼうが、いまの日本の映像表現力では彼の作品の実現はまず無理。予算の問題だけではなく、画面を構築する監督の才能やセンスに起因しているからです。
 所詮、せせこましいテレビドラマの感覚で育った監督には映画やコミックが持つダイナミックな画面作りははなから無理というもの。
 そういう意味でも今回のガンダムUCは、はじめて彼の原作のテイストを忠実に表現できた作品ではないんでしょうか。

    ガンダムUCのお話は長く、まだその第一話がリリースされたにすぎません。しかし元来が人気の作品だし、今後登場する続編のレベルが落ちるという事はない、と信じたい。  かつて、期待された作品が予算不足やスケジュールの関係で、シリーズで観るとそれはそれは悲惨なものになった例が多々あるのです。UCの次回作は今秋の予定だそう。  いや、無理せずゆっくり創ってください、と関係者各位にお願いしたい。遅れてもいいから、歴史に残る大作を。そういう意味でみんなが待っているし、待つ値打ちのある作品です。

 この作品には優れた映画に備わっているべき全ての要素が詰まっています。
 人間ドラマ、歴史スペクタクル、アクション、サスペンス、そして愛情と恋。
 私がこの映画ブログでアニメを紹介するのは、そもそもアニメは映画のひとつの表現であり、以下でも以上でもないから区別しないというスタンスから。

 もぉね、いいたい事がいっぱいありすぎて、頭が破裂しそうになります。
 だから内容などに言及したお話は何度かに分けて本家ブログさせていただこうかと。
 
 では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

こんにちは。
あっちにもこっちにも、語りつくせない、といった感じでしょうか(^^)

しかし、映画好きでもアニメは…という人はやっぱり少なくないようです。特に「ガンダム」はハードルが高いようですし。
かんっぺきに偏見なのにね。
オードリーが名前を語る前のあの看板なんかは、かえって映画ファンが「ニヤリ」ってカットだし、「とにかく見てよ!」って言いたくなる気持ちはわかる気がします。

レンタル開始は7月からだそうです。
まだ先ですけど、ようやくライトなファンにも門戸が開かれると思うと嬉しいです。
私もブルーレイに見直したいなぁー。


投稿: たいむ | 2010年5月 6日 (木) 22:11

たいむさん、いらっしゃいませ!
わあ、あなたからここにコメントいただけるなんてメッチャ嬉しいなあ。
たしかに、この作品の配信方法はさらにハードルが上がってますよね。いくら人気作品で人気メディアでも、この方法はいただけない。
いずれ『ザムド』みたいに開放されはするんでしょうが…

ところで本家ブログの方もご覧いただけました?

投稿: よろ川長TOM | 2010年5月 6日 (木) 23:28

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