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2010年4月12日 (月)

『お熱いのがお好き』観ないと損する、元祖・女装コメディ♪

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 はい、みなさんこんばんわ。
 あら。そこの方。古いシロクロ映画なんか興味ないって顔してられますね。でも、映画はお好きなんでしょ?だったら、あなたものすごく損してますよ。この映画の舞台は1929年。古いもなにも、時代設定自体が昭和4年ですがな。
 色ですか?んなもん、日本人なら脳内変換で色なんかついてしまいますって。

 マンガとかご覧にならない?あれ、白黒でしょ。あら。マンガも興味ない?それ、人生の1/3を棄ててますよ。まあ、そうおっしゃらずに、この作品からご覧なさい。笑って笑ってしてるうちに、白黒映画なのに、すごくハデハデな色が見えてきますから。
 ご覧になった後、よくぞ教えてくれた♪って私にお礼言いたくなりますって。
 

 おまけに当時の予告編まで観られてしまう。デジタル、ばんざい。


 お話は。いわゆる禁酒法時代のシカゴ、ギャングが横行して真っ昼間から人がバンバン撃たれたり、街中がいつもピリピリしてたアンタッチャブルな頃。
 “世紀の悪法”“崇高なる実験”と言われた禁酒法。とにかく造るな、売るな、買うな───と言っても人間、楽しみがないと生きていけない。だから普通の人でも結構、この法を破ってたんですね。だから易々とギャングの資金源になり得たし、表では酒と無縁な商売やってても、裏で飲み屋やってたり…なんて事はザラだった。
 でもそうなるとまた、密告されたり密告したり、毎晩のように街のあちこちが警察の手入れで大騒ぎ。なんともまあ、ヤらしい時代です。

 しがないバンドマンのジョーとジェリーは、務めていたヤミ酒場がそんな調子で検挙されたので働けなくなって、職探しの最中には殺人現場を見てしまった。おかげでギャングに追われるハメになり、たまたま列車で遠路はるばる南国フロリダまでゆくという、欠員を募集している楽団を見つけるのですが、なんとこの楽団、女性ばっかりというのが売り。

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 そこでやむなく二人は女装してこれにもぐり込んだ…まではよかったんですが。

 もうこの時点でどんだけ面白いか想像つくでしょう?いわゆるスラップスティック(ドタバタ)コメディ。
 当時、なんせ稀代の人気美男子系スターで、マスクだけでなくムキムキ肉体セクシー派プラス性格俳優としても転向に成功しつつあったトニー・カーチスと、同い年ではあるものの長い下積みの後『ミスタア・ロバーツ』でがぜん注目を浴びての四作目になるジャック・レモンが女装での共演と言うだけでも大騒ぎ。
 しかもヒロインがトップスターで出演する作品はヒット間違いなしのマリリン・モンローなんですから、もお完成前の話題からして大変やったんですね。

 またこの映画での彼女はすこぶる可愛い。ちょっとオツムがゆるゆるな役柄で、今も知られるモンローのイメージまんまのキャラクター。
 我が師・淀川先生の書によると、監督のビリー・ワイルダーは、可愛い可愛い、いかにも女そのもの、女の代表みたいなモンローを配すことで、なおさら二人の女装のブサイクさ、気持ち悪さを引き立てさせたらしい。なんともこの監督らしい皮肉たっぷりな設定の仕方ではありませんか。

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ウハウハなのね、おふたりさん。死んでもいいほどウハウハなのね♪

 思うにこの作品が、男子の女装をネタにしたコメディの元祖ではないかと。
 もちろんサイレント時代にもあったとは思うんですが、私としてはこの作品を推したい。

 マンガでも、男子がやむなく女装して…とか、女装癖のある男子の出て来るコメディって枚挙にいとまがないほどでしょう。
 正体がバレるかどうかでハラハラドキドキ、女の子の生活の内幕とか垣間見れてそれでまたドキドキハラハラ。ただし、マンガの場合はたいてい男の子であってもどこか可愛い。日本ならではだと思いますが、『ストップ!ひばりくん』『まりあ†ほりっく』みたいに、もともと女装癖がある美男子…なんて設定もむしろありきたりなほどですからね。ああ、『ここはグリーンウッド』なんて勘違い系もありましたっけ。

 しかしこれが実写映画だとムクツケキおっさんが女装するわけです。もう、これだけで笑えますね。『トッツィー』『ミセス・ダウト』ちょっと違うけど『Mr.レディ・Mr.マダム』に『キンキーブーツ』。『空飛ぶモンティ・パイソン』なんか、オカマさんとゲイを目の仇にしてましたもんねえ。
 まして、それまでハンサムだとか、男らしさで売ってきた俳優さんが演じるほど効果が高い。
 近藤正臣さんの舞台版『Mr.レディ・Mr.マダム』のザザ役なんか最高でした。

     

 面白いもんで、女性が男装したってここまで笑える話にはならないのね。
 あるにはあるんですよ、たとえば『メリー・ポピンズ』で知られるジュリー・アンドリュースの『ビクター/ビクトリア』、最近でも若い娘が男子生徒に化ける洋画がありましたが、なんせつまらなくてタイトルも忘れてしまいました。
 タカラヅカを引き合いに出すまでもなく、男装の麗人などはむしろ美しく凛々しいの代名詞。『リボンの騎士』『ベルサイユのばら』に笑いの要素はありませんもんね。
 そもそも、女子更衣室に野郎が紛れ込んだら生命がないけど、男子トイレにおばちゃんが飛び込んできてもあわてるのは野郎の方ですからね。

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 それはともかく、トニー・カーチス演じるジョーはジョセフィンに、ジャック・レモン演じるジェリーはダフネに変身してちゃっかりバンドに溶け込んだまでは良かったけど、そこで知り合ったモンロー演じるシュガーにふたりとも参ってしまうんですな。
 だけど、ふたりはギャングから逃れたい関係上、正体は明かせない。女でないといけないのでシュガーが“ロシュの限界”にいても手も出せず口説くこともできない。しかもシュガーは知ってか知らずか、無邪気にニアミスを繰り返す。
 今の日本のコミックなら、女同士ならよかんべって事でもっとアブナイノリになっていくんでしょうけど、そこはそれ、大人の映画はスリリングでトホホな寸止めを楽しむのですよ。

 とにかく私が知る中で、もっともマリリン・モンローが可愛く見える作品。
『七年目の浮気』も可愛いには違いないんですが、あちらはいわば小悪魔がそうと知ってて妻のある男性を誘惑する話なので、どうも彼女に合ってない気がして。

 グラマラスだとかSEXシンボルだとか言われ続けた彼女ですが、今のサブカル系男子が彼女を見たら「あ。これは萌えだ」とお解りいただけると思う。
 たしかに子供の体型ではなく、まさしく巨乳美乳の権化なんですが、それでもこの映画では少しもエロさがない。むしろ深夜のギャルゲー系アニメに登場する巨乳美少女がリアルなアメリカ人ならこういうイメージなんじゃないだろうか…なんて思うのです。
 この映画では、アンディ・ウォーホールが描いたようなギトギトした雰囲気は感じられません。

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 てなわけで、一人の女に惚れてしまったふたりの女装男なのですが、篤い友情で結ばれたふたり、結局ジェリー=ダフネは親友のために恋のキューピットを買って出るハメに。
 おまけに泣く泣く恋をあきらめたジェリー=ダフネは、どういうわけか超大金持ちのプレイボーイ…ただしかなりのジジイ…にホンキで惚れられてしまって。
 で───おっと、これ以上は観てのお楽しみ。

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 ちなみにこの演技でオスカーに何度目かのノミネートをされたジャック・レモンは私が最も好きな俳優。

 見どころはほかにもイッパイで、楽団がらみですから当然、音楽面でも楽しませてくれます。なかでもモンローは劇中で歌を披露。
 かつて深夜番組の草分けであり、子供に見せてはいけない番組No.1だった『11PM』のCMジングルに使われていたのが、この作品でモンローが唄う『♪I Wanna Be Loved by You(あなたに愛されたいの)』の最後に出て来る「♪プップッピ・ドゥ」というフレーズ。
 むしろまだ幼かった私は、たまたま聴いたこのフレーズがこの映画の劇中曲だと知った時は「あああっ」と思わず立ち上がりましたね。
 ───あいにく、19インチのテレビの前でしたが。そうです、まだ二番館とか名画座など言ったことのなかった私にとって、こういう作品はテレビだけがソースだったのです。

 ちなみにモンローのこのフレーズも、もとをただせばアメリカの伝説的アニメーターのフライシャーによる、元祖・萌キャラ、“ベティ・ブープ”のお色気フレーズだったんですな。
 日本で通称“ベティさん”は1930年生まれなので、26年生まれのモンロー、25年生まれのレモンとカーチス…そして当時の客層にとってはまさに物心ついた時から観ていたアニメだったわけですから、ウケたでしょうねえ。
 いわば私くらいの年齢の俳優…中井貴一、佐藤浩一、真田広之、トム・クルーズ、トム・ハンクス・エディ・マーフィあたりが鉄腕アトムやウルトラマンの歌を劇中で口ずさむようなもんです。

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 なんせエッチなのにイヤラシくないのがビリー・ワイルダー流の粋なところ。とにかく楽しいこの映画。このふたりの顔を見てください。もぉ、笑ろとけ笑ろとけ、どんだけエライ目に遭うても笑わなしゃあない、笑ろとったらなんとかなるって顔でしょ。

 字幕も結構なんですが、日曜洋画劇場で馴染んだワタシ的には、やはりマリリン・モンロー=向井真理子さん、トニー・カーチス=広川太一郎さん、ジャック・レモン=愛川欽也さんで観たいものです。
 とくに女装後のおふたりの演技は最高!今でも耳に残ってますよ、愛川さんの「あたし、ダフネ♪」

 この映画を知らずして、映画ツウと言うなかれ。


 
 では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

こんばんは、よろ川長TOMさん♪
ヘップバーンより断然モンロー派のともやです♪
しかもモンロー作品の中で、一番これが好き♪
この可愛さは反則クラスですww
何年に一回かは観直してます。
いや〜、いい映画は何年経ってもいいものですよね〜。

投稿: ともや | 2010年4月12日 (月) 23:45

ともやさん、たった今そちらにカキコさせていただいたところです。
クロスカウンターでしたねー♪

お、モンロー派ですか。ただね、彼女はどうしても哀しさが伴うからそのへんが辛いんですよね。いやしかし、彼女こそは萌えですよ、萌え♪
それにあの『ラ・クンパルシータ』がまた観られるかと思うと、楽しみで楽しみで…って、まさか雨、降らんやろなあ…衛星は雨に弱いからなあ…まあ、LDは持ってるんですけど。今はもうDVDも安いんですけどね。こうなると意地、みたいな。

投稿: よろ川長TOM | 2010年4月12日 (月) 23:58

よろ川長TOMさん こんにちは♪
この映画何度見たことか。モンロー可愛いですよね。ヽ(´▽`)/
TOMさん ジャック・レモン好きですか、私も大好きです。
何年前だったか、テレビ版の「12人の怒れる男たち」があったのですが、老年になってからのジャック・レモンも最高でした。あれもう一度見れないのかしら。
亡くなった年のアカデミー賞でのジャック・レモン紹介では泣きましたよ。
ここもリンクさせてくださいね。リンクしとかなきゃ、忘れっぽくなって・・・(ρ_;)

投稿: りせ | 2010年4月16日 (金) 11:10

おおお、りせさん!こちらにまでコメントを戴けるとは!!
そうなんですよ、ウォーホールらのせいでなんかイメージが曲げられて今の若い人に伝わってるのが悔しい。
淀川先生の本でも実際の彼女の事が書かれてて、シャイで、気が小さくて、いつも大女優や大俳優たちの前で震えてたんだそうです。

ジャック・レモンの邦題『評決の行方』ですね。私も観たいんですが、レンタルもないんです。歳を重ねてからの『マカロニ』が大好きなんですが、それも観られない。いつか放映される事が分かったら記事にするつもりです。

投稿: よろ川長TOM | 2010年4月16日 (金) 17:25

モンローの数少ない映画の中で大好きな作品です。この時代はコットンクラブ、禁酒法とか刺激的な時代ですね。ファッションが素敵で、女は女らしく、男は男らしくという雰囲気ですね。あこがれる人が多いのでしょうか。ジャックレモンのすっかり開き直った女装の演技と表情に大笑いします。マフィアの騒動の巻き込まれるシーンでは、ボス役のジョージラフトの冷酷な眼光と渋さがかっこいいです。それにプリップリのお尻のモンローちゃん、かわいいですね。このとき彼女は二日酔いで撮影の遅刻が多く、周りが大変だったようですね。でもこの役は彼女でないと務まらなかったかも。

投稿: 苺杏仁 | 2014年2月25日 (火) 19:15

苺杏仁さん、こんにちわ♪
淀川先生の著書に拠りますと、この頃、すでにマリリン・モンロー自身が大スターになっていたにもかかわらず、常に先輩スターたちの中で萎縮…というか、ほんとうにビクビクしながら毎日の撮影に挑んでいたのだそうです。
お酒や睡眠薬などに頼ったのもそういう事が原因らしいのですが、ひとたび演技に入ると大輪の花を咲かせる才能は、やはり根っからの“スター”だったのでしょうね。

投稿: よろ川長TOM | 2014年3月 3日 (月) 13:09

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