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2010年4月23日 (金)

本当のスリラーの醍醐味『ヒッチコック』BS-hiで大特集。

Hitchcockshver「みなさぁん、こんぶゎんぅわ。」
 ダークスーツによく太った身体を包んだ、鼻の高い禿げ頭のおっさんがアオリ気味なカメラ目線でおもむろに語り始めると、『ヒッチコック劇場』という世にも恐ろしい劇場の幕開けです。
 ヒッチコックと言えば、一度聴いたら絶対忘れられなくなる吹き替えの声は熊倉一雄さん。声優なんて単語どころか、まだテレビが珍しかった黎明期からずっと活躍しておられる御大、今もお元気で嬉しい限りです。

 しかも『ヒッチコック劇場』というテレビシリーズはね、超一流の映画監督が総監修、自らも何本か監督し、さらに全話のオープニングとクロージングのMCまでやったという贅沢なシリーズでした。
……まあしかし、ヒッチコックと言えば自作にサイン代わりと称してカメオ出演する元祖の“出たがり屋”なので、きっとほんまに楽しんでおられたんでしょうね。

 さあその彼の作品が一挙7本、2010年5月にBSハイビジョン・シネマに登場しました。
 えっ、あなた、見逃したんですか!? それは残念、どれも何度観ても面白い作品ですが、初めてご覧になるなら数倍、びっくりしますよ。ぜひ次のチャンスは逃さずに。こわいですよ。おもしろいですよぉ〜。ということで、たくさんあるから今回はざっくりと見どころをご紹介。
 

 昔はね、家族でテレビを囲んで一緒に観てたから、映画好きのご両親から「あっ、これ、昔観たんや。面白かったで」なんて薦められる事もあったんでしょうけど、今、いっしょにテレビの前にいる時ってゲームくらいなんでしょうか。
 そもそも昔の映画なんかいわゆるゴールデンタイムのテレビには登場しませんし、まして名画座がすっかり消えてしまった今では、その作品の存在すらご存じない方がほとんどになってしまった。
 知らないからレンタル屋さんでもそんなコーナー行かないし、あっても手に取らない。人気がないって事で棚の上に上に、奥に奥に追いやられていつしか並ばなくなる。
 芸術と呼べるほどの名作がどんどん埋もれていって、もったいないもったいない。

 もお、ほんまにNHKのBSでしか観られない傑作、名作ばっかりになってしまいました。別に私、NHKからな〜〜〜〜〜〜〜んも貰てませんが、こういう映画をやってくれるならなんぼでも宣伝します。
 つまらないバラエティトーク番組で二時間潰すなら、録画でいいから名画劇場をごらんなさい。特に今回のヒッチコック特集!これはなかなかツウなラインナップ。
『サスペンスの神様』と言われますが、本当の意味での『スリラーの職人』というほうがふさわしい。

Hitchcock02

 ▲いま、ちょっとご当人は大変な事になっているようですが、きっとご自身で解決される事でしょう…
 短いあらすじはBSの案内ページをご覧戴くとして、私のおすすめポイントを簡単に。

*めまい 1958年(原題:VERTIGO)
 主演:ジェームズ・スチュアート/キム・ノヴァク
 4月26日(月)午後10:00~午前0:12
 いきなり見せつけられる高所の怖さに始まって、緩急おりまぜて繰り返し訪れる謎また謎。
 やがて謎は奇妙な心理の歪みに直結してゆき…ごく単純だったはずのスリルはいつしか多層構造の複雑なサスペンスに変貌して行くうちに、あなたも少しずつ変になる?
 さて、本当に恐ろしいのは……?
 ウエストサイド物語のポスターを手がけたグラフィックデザイナーが絡んだ斬新な心理描写シーンも興味深いですよ。

*知りすぎていた男 1956年(原題:THE MAN WHO KNEW TOO MUCH )
 主演:ジェームズ・スチュアート/ドリス・デイ
 4月27日(火)午後10:00~午前0:02
 ショッキングな冒頭の事件から、幸福だった普通の家庭がどんどん事件に巻き込まれてゆく恐ろしさ。全米的歌手ドリス・デイ起用で表面ではまるで音楽映画のようなたたずまいさえも見せながら、内心にうずまく主人公たちの焦りと恐怖とを二元的に描きだす演出が見事。

*引き裂かれたカーテン 1966年(原題:TORN CURTAIN )
 主演:ポール・ニューマン/ジュリー・アンドリュース
 4月28日(水)午後10:00~午前0:10
 未見なので今回勉強させていただきます。ちょっと面白いキャスティングですよね。

*鳥 1963年(原題:THE BIRDS )
 主演:ティッピ・ヘドレン/ロッド・テイラー
 4月29日(木)午後10:00~午前0:01
 超有名な元祖動物パニック映画。この作品からインスパイアされた映画のなんと多い事か。この映画の怖さは無意味と無秩序と不条理の怖さ。相手は目線も定まらない鳥ですからね。
 ところで淀川先生の言に依ればヒッチコック監督は実家の関係でニワトリと卵が大嫌いだったとか。ウィキでは青物商とありますが監督は色々ウソも冗談も多い人なので、はたして真相はどうなんでしょうね。

*海外特派員 1940年(原題:FOREIGN CORRESPONDENT )
 主演:ジョエル・マクリー/ラレイン・デイ
 5月3日(月) 午後10:00~午前0:03
 これも未見です。太平洋戦争開戦年の作品ですから、日本では戦後数年経ってから公開されたのでしょうね。

*泥棒成金 1955年(原題:TO CATCH A THIEF )
 主演:ケーリー・グラント/グレース・ケリー
 5月4日(火)午後10:00~午後11:49
 キャストがゴージャス!当時世界を席巻したダンディと美女の組合せ。G・ケリーは『裏窓』に続いて二本目のヒッチコック映画主演。ジョークとヒネリの効いた彼がコメディタッチを撮るとこんな風になる。
『おしゃれ泥棒』『アラベスク』と並ぶ三大お洒落泥棒映画でしょう。

*サイコ 1960年(原題:PSYCHO )
 主演:アンソニー・パーキンス/ジャネット・リー
 5月5日(水)午後10:00~午後11:50
 あまりにも有名な恐怖映画の教科書。ご存じの方はおクチにチャックして演出の妙を楽しみ、ご存じでない方は息をひそめてビクビクしてご覧なさい。これこそ後に書いてる、ヒッチコックの恐怖キーワードが全部揃った高い完成度の作品です。

*マーニー1964年(原題:MARNIE )
 主演:ショーン・コネリー/ティッピ・ヘドレン
 5月6日(木)午後10:00~午前0:11
 いまやナイスミドルを経てナイスシルバーとなったコネリーが、ボンド役で大活躍してたときの作品。私はこれも未見なので楽しみ。


 いやあ、豪華です。

 ステレオタイプの無粋な紹介で申し訳ないんですが、ヒッチコックという人は、とにかくサービス精神が旺盛ということ。観客をどうやって楽しませてやろうか、脅かしてやろうか、怖がらせてやろうか。
 そんなことばっかり考えてお話を組み立てゆく監督。
 しかもかなりアマノジャクなので、観客の裏切り方が巧い。それはそれは上手に予想を裏切るのね。だけどなにせサービスしまくってあるから見どころが多くて、たとえ先が読めたとしても、何度も観た人でもちゃんとハラハラするのね。この辺がこの人の素晴らしいところ。

 私なんかね、すぐ内容を忘れるから何度観ても楽しいのよ。便利でしょ?え?ちょっとおつむがヤバイかしらん?

 ウィキとか見ますと『サスペンスの神様』と書かれてますけど、私はむしろ『スリラーの神様』やと思うんです。それというのも、ご自身でも言うてはりますけどね、コワガリなんですって。だから自分が怖いと思う事を映像にしてみせる。
 人がいちばん怖がる事ってなんやと思わはりますか?それはね、自分の想像力。妄想と言ってもいい。疑心暗鬼ね、つまりは。
 身の毛もよだつ醜い化け物より、残酷な拷問や無残な死体より、なんだか分からないけど迫ってくる悪意の気配がもっとも怖い。

『バイオハザード』ってゲーム、されたことありますか?あれで一番怖いのはぐちゃぐちゃのゾンビでも、とろけかけの怪物でもなくて、目の前で閉じられてるドアやと思わはりませんか。
 そらね、化け物と戦ってるときもガジガジかじられてるときも怖いですけど、その時は夢中で怖いよりパニックです。それに比べたらあのドアとか鍵とかスイッチとかの前に立ってるときの怖さと来たら。

Psycho02

 ヒッチコックの演出できわめつけな怖さのキーワードは『影』『うしろ』『突然』なんですよ。そしてこれに『物音』が加わる。
 あ、あと、大切なファクターが『金髪美女』。いえ、鑑賞用としてはいいんですがね、彼の映画ではこれがもっとも恐ろしいのかも。
 それにしてもヒッチコックの映画はほんまに美女揃い。キム・ノヴァク、グレース・ケリー、ドリス・デイ、ジャネット・リー…美しさの次元が違うんですよ。
 今のハリウッドにはこの万分の一も綺麗な人が居ませんね。今の女優さんたちはセレブではあっても、スターじゃない。単にお金のある有名人。

 でもこれらもヒッチコックの描く恐怖のほんの一面でしかない。
 この人の映画が何十年経った今なおファンの心を掴んで放さないのは、緻密な人間観察から描かれた、男と女の殺人も含めた犯罪をめぐる巧みな心理描写にあるのです。
 そこに描かれた人間と人間のドラマ。ふとした事で簡単に揺らぎ、歪む人間の心。これは異常心理を扱った『めまい』や『サイコ』『見知らぬ乗客(今回の特集にはありませんが)』であれ、ブラックコメディの『ハリーの災難(これもなし)』であれ、これはすべてに共通する“ヒッチコック秘伝の出し汁”のようなもの。
 そして、これが結果的にいちば〜〜〜ん、人間の“こわさ”を見せてくれる。

 さあ、あなたもこのチャンスに録り溜めしてでもヒッチコックの深い深い恐怖の世界を味わってみませんか?

Hitchcock_2

 せっかくですからン、今回だけわン、ヒッチコック風にお別れいたしましゃう。
 こんな格好でしつれいいたします。なんせ彼らも久々の出番で少々、興奮気味のようで。
 
 では……また。

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