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2010年3月 1日 (月)

『チャールトン・ヘストン』人類4300年の歴史を生きた俳優

C_heston01_2 はい、皆さんこんばんわ。
 チャールトン・ヘストン。ハリウッド黄金期を飾る大俳優のひとり───というより、私にとってはとにかく声優・納谷悟朗さんが演じる俳優、という印象が強い。
 2008年4月5日に84歳の長生きで他界しましたが、その5年前にアルツハイマー病にかかっていることを公表されてからは表舞台からは遠ざかっていたとか。
 晩年は全米ライフル協会の会長とかでなにかとキナ臭い存在だった人ですが、現役当時彼ほど大スクリーンの似合う俳優はいませんでした。大も大、シネラマやシネマスコープは彼の主演映画ために開発されたといっても過言ではない。
 といっても、私も彼の作品を映画館で観たことはないに等しいのです。たいてい、テレビの洋画劇場でした。そう、尊敬する淀川先生の、とかね。

 さあ、今夜はちょこっと想い出話をさせてくださいね。え?お前の話は長い、ちょこっとなんてウソだろうって?あはは、バレましたか。
 まあまあ、そんなこと云わずにお付き合いくださいな。面白いですから。
 

 
 さて、その出演作は西部劇からSFに至るまで、実に多岐に及んでいます。だけど何がすごいと言って、実在、架空とりまぜて彼ほど地球の歴史を長く旅し、また大人物を演じた俳優はこれまでも、またこれからもまず出ないだろうということ。
 実在・架空ごちゃまぜで時代順に列挙してみますと───


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 まず最初はなんといっても神様とトイ面で会話した『十戒』のモーゼ。このお話が紀元前約1300年前のエジプトあたりのこと。えらい老け役まで演じてますが、実は当時まだ32歳。たいしたもんです。共演のユル・ブリンナーはファラオ、ラムセス二世を演じ、配役としても歴史的にも超豪華な顔合わせでした。
 
 次に古いのは古代ローマ帝国が舞台の『ジュリアス・シーザー』のシーザー。この人が紀元前100年頃。同時代というか続編的な『アントニーとクレオパトラ』では監督までやってるんですね。そっちは残念ながら出来の良い作品とは言い難いし、これに懲りたのかその後は俳優業に徹しています。

 紀元を迎えてからは『偉大な生涯の物語』でパプテスマのヨハネ。かの黙示録の著者であり、キリストの一番弟子…でしたっけか。
 同じ頃のお話がかの名作『ベン・ハー』のジューダ・ベン・ハー(この記事トップの写真)。なんたってキリストが無名だった布教時代の出逢いからゴルゴダの丘での最後、そしてその復活まで立ち会ってますから話としても壮大です。

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 次に『エル・シド』。エル・シド、本名ロドリーゴ・ディアス・デ・ビバールは11世紀に実在したカスティーリャ王国(今のスペインの中核)の伝説的英雄です。義侠心と忠誠心の権化みたいな武将で、頼りなくて猜疑心の強いアホ(スペイン語でニンニクのことではなく)な王様を最後まで助けた修行僧というか日本の古武士のような人として描かれています。
 共演としてソフィア・ローレンが妻を演じてましたね。余談ですが彼女はスペインが舞台の二大大作映画である『ラ・マンチャの男』でアルドンサ=ダルシネア姫を演じています。
 これも余談ですが日本アニメーションの社長本橋浩一氏は若かりし頃この作品に惚れ込んで、彼の少年時代の物語(それがテレビ東京系で放映された『リトル・エル・シドの冒険』)を作りたくてアニメーション会社を始めたという話も聞いたことがあります。

 次にアレクサンドル・デュマの傑作活劇『三銃士』『四銃士』での悪の頭目リシュリュー枢機卿。お話はフィクションですが、この人は17世紀、ルイ13世時代のフランスに実在したかなり凄腕の政治家だったそうです。
 少し下って15世紀ではミケランジェロの生涯を描いた『華麗なる激情』。

 そして19世紀、アメリカは西部開拓時代を描いたウエスタンの代表作『大いなる西部』、実在の人物を描いた南北戦争時代の『ダンディー少佐』、20世紀初頭の西部を描いた『大いなる決闘』と義和団事変を描いた『北京の55日』。
 あと、『ウィル・ペニー』(内容は後述)という風変わりなウエスタンもありました。

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 40年下って、太平洋戦争ではミッドウェイ海戦を描いたずばり『ミッドウェイ』では艦上爆撃機のパイロットを。
 平和な時代になってからは『エアポート'75』、つまり1975年ですね。
 あのね、今では当たり前になったサラウンド音響設備、この『ミッドウェイ』が日本で最初の作品なんですよ。まだ4チャンネルで、当時はセンサラウンドって呼び名。
 今と違って爆音とかの重低音を強調するのが主な使い方で、轟音シーンだけ不自然にいきなりドドドド、って下っ腹に効く超低周波が館内に響くんですね。ところが劇場は私がよく行ってた大阪の大劇場でさえも結構昔の古い建物だったもんで、ゆるみかけの座席が共振してガタガタ、ゴトゴト。おしりがかゆくなった記憶があります。

 そしてここから近未来───つまりSFになりますが、ついこの前公開されてケチョンケチョンに云われた『アイ アム レジェンド』の元ネタである『SFオメガマン』がたぶん21世紀の今頃が舞台?さらにこれも今リメイク企画が進行中の『ソイレント・グリーン』が温暖化でエラいことになってる2022年が舞台。
 ぐーんと間をすっ飛ばして『猿の惑星』が、たしか西暦3000年あたり?
───ね、すごいでしょ?紀元前は神世の昔からお猿の未来まで、通算でおおむね4300年。しかも世界の終わりを何度観ていることか。

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 チャールトン・ヘストンというと大体そのあたりのスペクタクル系の大作映画かSFが思い起こされるんですが、それらは彼の出演作のごく一部。そんなトンデモナイ作品群とは別に、ほとんどマイナーといっても良いほど知られていない傑作もあるんです。
 画像はありませんし観たのは随分昔なので記憶違いもあるかも知れませんが、ちょっとご紹介しましょうね。

『ローマを占領した鳩』というなかなかの傑作があります。第二次大戦末期、イタリアへ上陸してドイツ軍を南から攻めようと画策する連合軍ですが、これがなかなかしぶとい。そこで、ドイツ人を追い出して連合軍側へイタリアを解放しようと運動しているイタリア人に協力してもらうためにゲリラ作戦のための斥候隊がローマへ潜入を試みる、というお話。
 面白いのは無線ではドイツ軍に傍受されるからと、この斥候隊は伝書鳩をたずさえてゆくんですね。しかも潜入先で兵士のひとりが村娘と恋仲になったり、ミョーな所で緊張感がない。おまけに戦時の食糧難、まして日本と違ってヨーロッパでは鳩はけっこうなご馳走で…。はい、もうどんな騒動になるか想像できますね。これ、コメディと云うほど砕けてませんが、いわゆる戦争喜劇です。

 本人はどうか知りませんが、ヘストンは作品ではほとんど仏頂面なんですね。顔立ちもギリシャ彫刻のような彫りの深さですし、目つきも鋭いんですが表情が乏しい。そこへもってきて見事な体躯なので全体の印象もいかついので、冗談のひとつも云えず、生真面目な上にいかにも頑固そう。ある意味、人間的には面白くない男なんですね。
 だから彼が演じた西部劇の役はみんなそんな人ばかりです。まあウシやウマを相手で人付き合いがヘタ…という典型的な牧童そのままのイメージなんですが。ただ、西部劇では同時代に17歳年上のジョン・ウエインという大俳優がいましたし、彼も同じく頑固でぼくとつで口べたというキャラがかぶるので、そのフィールドではあまり目立たなかったのかも知れません。

 目立たなかったけど、いい映画もあります。先にちらっとご紹介しましたが、『ウィル・ペニー』がそれで、ちょうど昔日本で人気を博した長谷川伸(はせがわ しん)の書いた戯曲のような雰囲気があるんですね。
 牧童ひとすじで生きてきたウィルが50歳を目前にして人生の岐路に立つという筋立ての地味なお話なんですが、劇中のアクションも含めてヘストン43歳というリアル年齢がうまく活かせています。
 実際、他に何の才能も芸もない男。若いうちはそれでよかったけど、体力的にもカウボーイを続けるのにはキツくなってきた50代の男のしんどさ、先の見えない不安感、まるで今のわたしらの年代を象徴するようなお話なんですよ。
 それまでのヘストンの輝かしい作品群や頼もしくて神々しいような役柄とは一転した役柄が衝撃的でした。
 ただしこの作品、映画雑誌『ロードショウ』などで紹介されたときの文面に“初老のカウボーイが云々”とあったんですね。50前で初老とはヒドイ話ですが、当時私も鵜呑みにしていた記憶があります。やはり紹介記事は正確に書き、的確に表現せんとあきませんね~。

 もうひとつ、南北戦争時代を西部劇と呼んでいいのか判りませんが、『ダンディ少佐』もなかなかの傑作です。友情と対立、確執と和解など男臭い映画を撮らせたら天下一品のサム・ペキンパーが監督なんですね。さらにいわゆるインディアンとの戦いを軸にしているんで見た目も派手なアクション映画に仕上がってます。
 変わったところでは『黒い絨毯』というのがあります。1954年、あの『十戒』の三年前の作品なのでパニック映画の元祖のひとつといえるかも。マラブンタという大型の食肉アリがありとあらゆる生き物や植物を食い尽くしながら主人公たちの住む街へジワジワと迫ってくるというもの。
 昔の映画なので特撮といっても知れていますが、真っ黒に大地を覆いながら迫ってくる描写はまさに“黒い絨毯”という表現がぴったり。虫が大嫌いな私でなくても背筋が凍る映像です。そこへ主人公たちの人間ドラマが加味されてなかなか見応えのある作品に仕上がっています。

 そして感動作『ナンバーワン物語』。これは何度も引退を薦められながらも、最後まで一線を退かなかったプロ・フットボール選手の栄光と挫折を描くもの。ヘストン自身もこの時45歳で、先の『ウィル・ペニー』同様、こうしたロートルの悲哀を扱った作品に何作か出ているんですね。
 あるいは、肉体派といえるヘストンの、衰え行く自分自身の投影として選んだ作品群だったのかもしれません。でも意外なことにスポーツマンが主人公なのはこの作品くらいでしょうか。
 監督は『ウィル・ペニー』と同じトム・グリース。

 最後に、テレビでばかりヘストン作品を観てきた私にとって、やっぱりヘストン=納谷悟朗さんの声なんですね。
 だから字幕で観ると不思議な印象さえあるんですが、あまりにも回数観てる作品が多いので、ベン・ハーなんか勝手に脳内で日本語の台詞に聴こえてくる。
 お若い方にとって納谷さんといえばルパン三世の銭形警部かもしれませんが、いつも丹田に力を入れて喋る銭形警部と違って、ヘストンを演じるときはちょっとめんどくさそうな口調と、「んあー」って独特のうめき方が印象的なんですよ。こんど、意識して聴いてみてくださいね。

 では、また、お逢いしましょうね。(この記事は初出2008年04月19日のものに加筆・修正を加えたものです)

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コメント

はじめまして、White Dragonといいます。
楽しく読ませていただきました。

チャールトン・ヘストンといえば、私も納谷五郎の吹き替えが思い出深いですね。
初めてご本人の肉声を映画館で聞いたのは「エアポート'75」でした。
納谷五郎の渋い声とのギャップに驚いた記憶が・・・(笑)

大作のヘストンもいいですが、
「ウィルペニー」「ナンバーワン物語」大好きです。
あともう一作あげるとしたら「大洋のかなたに」かなあ。
余談ですが、
たしかサントラが「金曜ロードショウ」のオープニングに使われていた記憶が・・・

ではでは失礼しました。

投稿: White Dragon | 2010年3月 2日 (火) 00:30

White Dragonさん、はじめまして&いらっしゃいませ!
お返事が遅れて申し訳ありません。
こんなクドイ記事にもかかわらず、喜んでいただけて光栄です。
私のヘストン生声初体験は『ミッドウェイ』。すでにもうずいぶんなおじいちゃんのイメージでしたね。
そうか、『大洋のかなたに』もありましたね!たしかに金曜ロードショウでしたが、ニニ・ロッソでしたかね?
こうしたクラシック映画もちょぼちょぼ紹介しますので、ぜひまたお越しください。

投稿: よろづ屋TOM | 2010年3月18日 (木) 01:03

よろづ屋TOMさん,こんばんは!
お引っ越しされたのですね!
旧ブログの方はアクセスできなくなっていたので
こちらの新ブログを新たにリンクさせていただきました。

しかし,TOMさん,ヘストンさんの作品,すべて御覧になっていて
凄いです!勉強になりました~
私はキリスト教関係,ということで
彼の作品は「ベン・ハー」と「十戒」と
「偉大な生涯~」くらいしか観てないのですよ。
あ,「猿の惑星」は観ましたが。

>紀元前は神世の昔からお猿の未来まで、通算でおおむね4300年。
いやはや,そう思うと凄い俳優さんですね。
古代ものからSFまで。それだけ,現代劇よりは
そういった時代を超えた作品の主人公の方が似合うお方だったのかも。
しかし,西部劇もけっこう出てるんですね~
たしかに繊細な演技をしなくても,たとえ仏頂面でも十分絵になる俳優さんだと思いますが
それはあの体格のよさと彫りの深い顔立ちのせいでしょうね。

投稿: なな | 2010年5月10日 (月) 21:37

よろづ屋TOMさん こんにちは♪
チャールトン・ヘストン・・・リアルタイムでたくさん見ましたよ。
昔は1日中映画館にいられて、何度でも見れましたから、必ず2回見て帰りました。
「大いなる西部」のタイトルバックは名曲ですね。今でもよく使われてて。
チャールトン・ヘストンの西部劇と歴史活劇、スペクタクル系はほとんど見ました。
話は変わりますが・・・シンデレラ・マン・・・指の隙間からでも見てみたいです。よろ長さん、解説が上手いから(*^ω^*)ノ彡

投稿: りせ | 2010年5月11日 (火) 18:30

*ななさん、いらっしゃいませ!
引っ越ししたと言いますか、おんだされたといいますか。( ̄▽ ̄lll)
おかげでGoogleに登録されてた検索データがみーんなおじゃんでお客様激減ですよ。

それはともかく、『大いなる西部』だけはちゃんと観た事がないんです。あの映画でのヘストン、なんかちまちました性格のイヤな男でしょ。たしかにテンガロンハットがやたら似合うんですけどね。
やはりこの人には、遠くを見つめるギリシャの彫像のような、超然とした役柄がいい。


*りせさん!まあ!映画ブログにコメントをくださるなんて、めっちゃ嬉しい!
そうなんですよ、名画座っていまないのが残念で残念で。シネコンの半端な劇場たくさんで新しい同じのを何本もやるなら、ひと部屋くらい名画座にして安く見せたらエエのに、といつも思います。
シンデレラマン、いいですよ。お褒めくださってありがとうございます、いやほんま、夫婦愛の映画としてもけっこうジンときますしね。

投稿: よろ川長TOM | 2010年5月11日 (火) 23:36

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受信: 2010年5月10日 (月) 21:39

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