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2010年2月12日 (金)

『キングコング』見応えたっぷり、ついに登場した決定版!

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 はい、みなさんこんばんわ。

 2005年夏、劇場で予告編を観て、その日目的だった映画よりも感動して深く印象に残ってしまったワタシです。その日なんの映画を観たのかさえ思い出せません。
 あまりにも有名なこの作品ではありますが、テレビでクラシック映画を観まくった筆者でも、さすがに1933年の最初の作品はクライマックスシーンのごく一部しか知りません。

 ですから筆者にとっての『キングコング』体験は、1967年東宝の怪獣映画『キングコングの逆襲』からなんですね。
 この映画、当初は観る予定じゃなかったんですが、連れて行ってくれた祖母が本来観るつもりだった映画がやってなかったので、せっかく外出したのだからと孫の筆者が喜ぶ作品…ということで見せてもらったといういわくつき。

 しかしまだ6歳だった筆者、そのド迫力にもう押されまくってビビッたビビッた…
 いやいや、それはまた別な話…では2005年の新作キングコングのお話、いたしましょうね。
 


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 さて、今回筆者はすこし悩んでおります。
 キングコングなんてドラキュラやフランケンシュタインなんかと同じで、基本設定はもちろん始まりからオチでさえ誰もが知っている物語だから要は“いかに見事にリメイクされたか”が焦点かなと思っていたのですが、同じように考えていた『宇宙戦争』や『地球が静止する日』などは、案外オリジナルをご存じない映画ファンも多くおられたこと。

 たしかによく考えてみれば、昔のような“名画座”もほとんど姿を消し、レンタルも知名度の低い映画はなかなかお目にもかかれない現状では、宇宙戦争やキングコングみたいな映画はもう長い間テレビでは放送されていないのかも知れません。
 と、いうことは“ネタバレなし”が信条のこのブログとしてはウカツな事が書けないわけですね。
 まあ、困りましたね。難儀なことです。
 などとビビっていても仕方ないのでソロソロと進めてゆきましょう。

Kingkong05

 日本が誇る東宝製キングコングの第一作は1962年の『キングコング対ゴジラ』。

 原典では恐竜だった対戦相手が天下のゴジラさんである以外は、経営的に追いつめられた企業が一発逆転を狙って地図にない無人島へ怪物を捕らえにゆくとか、綺麗なおねーさんがコングに気に入られてさらわれて…などなど、けっこう原典のキングコングに沿ったお話になっています。この作品はアメリカにも輸出されているので、筆者と似たような世代なら案外コングといえばコチラを思い出したりして…

 しかも人気が出たので五年後にゴジラ抜き、まったく新作として『キングコングの逆襲』が製作されました。
 この話もなかなか魅力的なのでいつかお話ししたいものですが…

 その二本の和製キングコングの次に作られたのは1976年のアメリカ製。お話はやはり原典と変わりないのですが、舞台が公開当時の現代、つまり76年のアメリカになっています。
 だからコングが美女を片手に登るのはエンパイア・ステート・ビルディングではなく、9.11事件で崩れ去ったあの世界貿易センタービルなんですね。そしてコングを斃すべく空から飛来するのはもちろんジェット攻撃機。
 ウィキペディアによりますと、これらのほかに33年元祖コングの続編としてなんと同じ年にもう続編『コングの復讐』がこしらえられているんですね。よっぽど第一作が売れたんですね。

 そして76年版にも86年に『キングコング2』が。こちらは筆者も観てはいないものの、予告編を観た記憶はあります。
 面白いのは和製も含めて、みんな続編がつくられていること。今回はどうなるんでしょうね。

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 この映画のみどころのひとつは、コングに捕らえられた美女が絶海の孤島の密林で過ごすうちにやがて巨大なコングに対して愛情とも畏怖の念とも決めかねるような感情を抱き、コングはコングで恋心なのか友情なのか判らないまま彼女と交わされる不思議な心の接近の描かれ方にあります。
 野生の巨獣でありながら高い知能を持つコングの喜怒哀楽の感情表現や、それに対するヒロインの反応ややりとりなど、キングコングが単なる特撮怪獣映画で終わるか、心に響く映画になるかの岐路はほとんどそのあたりで決まると言えるのではないでしょうか。
 相手は巨大な怪物ですが、大島渚監督の『マックス・モン・アムール』や劇団四季でも知られる『美女と野獣』のように、いわばこれはとんでもなくエロティックな物語でもあるのです。

 それを初版33年版から支えているのが数々の特撮技術。メインだけ数えても四つのキングコングの歴史は、そのまんまその時代の最先端映像技術のカタログのようですね。

 33年版ではモノクロですが、コマ撮りアニメーションによる特撮としても映画史上に残る傑作に数えられますし、62年の東宝版では邦画のお家芸:着ぐるみによる重量感・巨大感と共にゴリラならではのスピード感あふれるコングは、当時大流行した超ワイドなシネラマ画面をフルに活かして縦横無尽にゴジラと大迫力の対決を見せてくれます。

 さらに76年ハリウッド版では身長10メートルに及ぶ設定の巨大なコングを実寸大のロボットとして製作し、当時投入できる限りの最新技術でコングの表情や細かな動きを再現したことで話題をさらったものです。
 この技術はのちに日本でも84年の第二期第一作以来ゴジラでも多く使われ、ゴジラの生々しい表情を再現することに成功しましたが、この76年版キングコングでもっとも印象的なのはジェシカ・ラング演じるヒロインが川で泳いだ後、びしょぬれの髪と衣服をコングが彼女に息を吹きかけて服を乾かしてやるシーン。

 それこそエロティシズムの極致。え?お猿の生臭い息なんか吹きかけられたくない?まぁ、それもリアリズムですねえ。

 そして2005年(日本ではお正月公開の映画だから2006年版というべき?)。
 20世紀特撮技術の集大成のひとつである特殊メイクに、21世紀初頭出色のテクノロジーであるCGとVGを駆使して誕生した新たなコングは、現代のロボットはもちろん、たとえタイのムエタイ系俳優がスーツアクターをしても絶対できないゴリラならではのダイナミックな動きを再現しながらも、感情のある類人猿…いや、ヒロインに恋心を抱く一匹のオスとしての細やかな演技を見せてくれるのです。

 さらに今回の監督であるピーター・ジャクソン、視点移動が上手いですね!
 実にさまざまなアングルからの撮影をうまく活用することで説明的にならずに、きちんとキャラクターの位置関係などを理解させてくれていますし、動と静のバランスもいい。

 クライマックスの複葉攻撃機との戦いのシーンはウルサガタの飛行機ファンである筆者も納得のつくり。昨今で空中戦のあったどの映画よりもリアルで上手かった。
 どう上手かったか?たとえ目標が据え物でもなかなか当たらないんですよ、この頃の複葉機の機銃なんて。

 そしてヒロインのナオミ・ワッツが可憐でしたね。正直、惚れ込みました。
 チャップリンの映画をご覧なさい。1920年代の美女はみな、まぁるい顔立ちでクチも小さいんです。これがジェシカ・ラングみたいな骨張った美人だったらダメでしたね。
 密林での大活劇の後はもう服装も何もメチャクチャになるのですが、ちっともいやらしさがないのが良かった。しかも麗しいシーンはしっかり可憐で美しい。
 筆者は彼女を全くこれまで知らなかったのでネットで過去作品での彼女を調べましたが、驚くのは、他の作品や広報用スチールでは実年齢のままでまるで別人に見えることです。さすが一流の女優!…ですが個人的には今回の彼女が一番好きですね。

Kingkong02

 最後にこのあまりに有名な物語について考えたことを。

 冒頭、1920年代後半から30年代にかけての世界大恐慌時代の都会が描かれます。
 エンパイア・ステート・ビルディングやクライスラー・ビルなど異常なほどその高さを誇り合った摩天楼の建設ラッシュ、映画産業やショウ・ビジネス文化の華やかな発展の一方で、『シンデレラ・マン』でもあったように、その日の食事さえ満足に摂れない失業者や浮浪者がわんさと街にあふれていた極端な経済状況にあったことが交互に映し出されていきます。

 しかし当時のことをよく知らない我々にしてみると、その日の食事にも事欠く生活環境で飢え死にした人も多く出たほどにしては、意外なほど街ゆく人々は身なりもよく、例えそれが虚勢にせよ凛とした姿で行き交う彼らの姿からはリアリティに欠けるような気がしますが、実はその逆で、大恐慌がいかに突如やってきたかということなんですね。
 そして主人公の女性は売れないまでも一応は華やかなショウビジネスで女優をしていたのがある日突然に職を失い、たちまちその日の食べ物にも事欠くほどの状況に追い込まれてしまうのです。

 その事も含めて、実は『キングコング』とは元々とても社会批判精神に富んだ作品だったのではないかと思うのです。
 だからそういう意味でも世界的な娯楽映画でありながら実はとんでもなくアイロニーに富んだ、筆者にとっては後味の悪い作品なのです。

 筆者は幼い頃から動物園が苦手でした。
 動物保護を訴える善人を気取るわけではないし動物園関係の方には申し訳ありませんが、コンクリート打ちっ放しの檻の中で落ち着きなくうろつく動物があまりに惨めに見えて、とてもじゃないけど楽しい気分で観ていることなどできなかったのです。
 拙作記事『痛いもの見たさの5作品』で書いたように筆者はたぶん被害妄想なのでしょうが、もし自分が彼らの立場だったらと考えると耐えられない。

 『キングコング』は、たとえ理由はどうあれ私利私欲のために意志あるものの自由を奪って拉致し見せ物にした挙げ句、逃げ出したからと寄ってたかって射殺するという、昨今よく見かける“逃げ出したペットの猛獣”の事件のてんまつに酷似した筋立てになっています。
 ヒロインはコングに心を寄せ、さも心優しき善人といった存在ですが、結局は同情に過ぎず最終的にもなにひとつ救うことのできない無力な傍観者……つまり所詮は映画を観ているわれわれ観客と同じ立場なのです。

 また社会的・経済的に追いつめられて取り返しのつかない暴挙に出る主人公の映画監督などは、まるで建造物耐震強度疑惑の中心人物たちを彷彿とさせ、ヒロインが捕らえられていようがいまいが容赦なく発砲する地上部隊や攻撃機部隊の行動には米軍が行ったイスラム世界への無差別的とも思える波状攻撃を思い起こさずにいられません。

 ドクロ島の原住民たちはいつの時代も野蛮な未開人のように描かれていますが、これとても突然上陸してきた怪しい連中にしきたりを破られた彼らの立場で考えれば無理のない話だとも思えます。
 上陸した主人公たちのいかにも有色人種に対する見下げたあつかましい態度や、その後征服した土地からなんでもかんでも強奪して母国へ持ち帰るという発想そのものがいかにも植民地時代の欧米社会が長年やってきた事の傲慢さが連綿と描かれています。

 そしてたとえ文明世界から見れば野蛮で危険でもドクロ島は自由であり、都会は便利で文明世界だろうともしがらみだらけで生きることさえ難しい不自由な場所。
 さらにはトランス状態で踊り狂う島の原住民と、見せ物を楽しみに劇場へやってくる紳士淑女の熱狂ぶりなど、ある意味この作品には全ての要素が対比的に描かれているのです。

 約三時間に及ぶ大作になり、見ようによってはくどく感じられるそうした描写は、むしろあえてそう描いた、つまりそちらこそがこの映画の主題だとこの映画の製作者は思ったのではないでしょうか。
 おそらくはそういう世の中の不誠実な現実や欺瞞をきちんと描くことこそ、本来この映画に秘められたメッセージが観客に伝わるのではないかという製作者の思い入れ、それも執念に近いものを感じられます。

 死んだコングの上に乗ってひたすら写真を撮る報道陣。「美女(Beauty)が野獣(Beast)を殺したんだ」とつぶやく主人公。
 彼のいう美女…ビューティとははたして何を意味するのか。いろいろ考えさせられる、しかし実に見応えのある映画です。

 東宝版では二本とも、コングは敵を倒して故郷の島へ海を泳いで帰って行きます。
 いくら巨大な身体をしていても、遙かな海を泳いで還れる保証はありません。主人公達はただ、見守るしかないというラストを採りました。
 コングが生きて故郷に還れることだけが、彼らの贖罪になるからですね。
 同じラストはモスラでも描かれています。しかし、いずれも中心人物たちがやらかしたことのために、とてつもなく大勢の無関係な人たちが生命を失っていることは、ラストでは触れられていません。

 余談ですが、コングが最後に登りつくエンパイア・ステート・ビルディングのてっぺんの塔は、当時大活躍していたグラーフ・ツェッペリン号やヒンデンブルグ号のような巨大硬式飛行船が空中係留するためのエアポートとして設計されたものです。
 しかし実際にできあがってみるとあまりの強風でドッキング不可能だと判断されて結局それきり“開かずの間”になってしまう塔なのでした。

 では、また、お逢いしましょうね。

 *イメージ画面は『キングコング』本編またはトレイラーから拝借いたしました。

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*以下は旧『よろ川長TOMのオススメ座CINEMA』時代に戴いたコメントの再録です。

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1933年オリジナルがわが国で公開されたときも大ヒットでしたが、すでにその時も便乗際物的作品『和製キングコング』が喜劇作品として登場。一定の評価を受けている。1938年にはオリジナルが『キングコング日本篇』のタイトルでリバイバル上映。このときも便乗際物時代劇として『(大江戸に現れた)キングコング』なる作品が単館?上映された模様。こちらの方はほとんど評価に値しなかったようである…。

Posted by:三秀  at 2006年01月07日(土) 13:51
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ジャクソン監督のコンセプトで、今回の『キングコング』のノリで、ハリー・ハウゼンの『シンバット7回目の航海』のリメイク版をやって欲しい。
オリジナルでは、予算の都合で描かれなかったイメージ・ボードや映像的に胴体しか描かれなかった大海蛇などもふんだんに盛り込んでお願いしたいです。
クリーチャーの造形デザインもオリジナルのままに。

Posted by:三秀  at 2006年01月07日(土) 13:59
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光秀さん、はじめまして、でしょうか。
補足説明ありがとうございました。なんと、喜劇バージョンの和製コングもありましたか!これは全くの初耳です。
どんなんだったんでしょうねえ、観てみたいものです。
ハリー・ハウゼンのリメイク、なかなか興味深いですね。個人的には『アルゴ探検隊の冒険』も好きなんですけど。

Posted by:よろ川長TOM  at 2006年01月07日(土) 22:50
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面白かったですね、キング・コング。
本当に奥が深くて見ごたえたっぷりでした。
それにしても、
エンパイアステートビルのてっぺんが
飛行機の係留所として設計されたとは驚きです。

Posted by:ハリケーン678  at 2006年01月22日(日) 21:56
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