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2009年11月30日 (月)

『ロボッツ』これぞハリウッドならではのアニメ!

Robots01

 はい、みなさんこんにちわ。

 私ね、正直言ってアメリカのアニメは観ないんですよ。特にディズニー系。あのうにょうにょっとした動きが苦手なんです。
 でもこの作品はアメリカアニメのいいところと可能性を見せてくれました。子ども向けのCartoonではなく、すばらしい“映画作品”でしたね。

 
 アニメーション映画は世界中にありますが、大別して二種類だと思うのです。
 ひとつはチェコやもとソ連系に代表される“絵(または無生物)が動く”という、アニメーションの語源そのままに、映像芸術として育まれてきたもの。
 そしてもうひとつはウォルト・ディズニーが生み出したといえる、長編アニメーション映画のジャンル。アニメである前にまず物語があり、音楽と映像の両方を楽しむという映画型のエンターテインメントとして発展してきたもの。

 しかしウォルト・ディズニーが生み出した数々の作品のほとんどは、童話やファンタジーなど「子供たちに夢を与えたい」という彼のポリシーに沿ったものを題材にしていたので、皮肉にもいつしか“アニメーションは子供のもの”というような認識が植え付けられてしまったのも事実です。
 スピルバーグの『1941』では、自分の趣味を自虐的に皮肉っているのですが、劇場を借り切った米軍のいかめしい司令官がナイショで『ダンボ』を観て号泣するシーンは、むしろ“大人げない”笑えるシーンとして描かれていますね。


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 今でこそジャパニメーションと呼ばれるほど高度に進化した日本のアニメも同じで、かつて手塚治虫氏が劇場用長編アニメーション『千夜一夜物語』でアニメ+ドラマで“アニメラマ”という新語を創ってまで、“アニメーションは子供のもの”という固定概念を払拭しようとしたにもかかわらず、誰が観ても楽しめる映画作品として世界に認められるまで30年を待つことになりました。
 かつて『母をたずねて三千里』などで知られる日本アニメーションが『アンネの日記』を制作したいと当時ご存命だったアンネの父に打診したところ、てっきりアメリカ流の“お笑いもの”だと勘違いした彼が激怒した、という逸話もあるほどにアニメーションの文化的地位は低かったわけです。

 同時にヨーロッパやアジア圏では、日本が輸出してきたテレビアニメのおかげでむしろ日本よりも先にジャパニメーションが認知され、作品として高く評価されるようになったばかりか、ジャパニメーションに刺激された若い作家たちが育っているフランスや韓国では国を挙げて彼らを応援していると聞きます。

 逆に、アメリカではディズニーの亡霊に祟られて…とでも言うべきか、いつまで経っても童話や民話からしか題材をとれず、ミュージカル仕立てで、話をして二本脚で歩く動物が必ず出て…と似たような作品しか生まれないまま21世紀になるのかと思っていたところに彗星のごとく現れたのが『トイ・ストーリー』をひっさげたピクサー・アニメーション・スタジオだったのです。
 以来、特撮系で進化を続けるCGの技術と並行して、アメリカのフルCGアニメは傑作を生み出してきました。
 面白いのはCGアニメは今のところ『ポーラー・エクスプレス』を除けばみなオリジナルストーリー。たしかに日本のようにターゲットとなる中心は、青年向けというよりはジュニア対象なのは否めませんが、それでもオトナが大人と一緒に行ってもヘンでない作品が次々と作られているのはご存じの通り。

Robots02


 さて、表題の『ロボッツ』。
 観るまではやはりありきたりのアメリカ流アニメだろうとたかをくくってました。
 いや、実際のところ、お話はすごく単純なんですね。
 田舎町で生まれた主人公が夢を育みながら青年になって志を胸に都会へ出て行き、人とのふれあいや悪党との対決を経て一人前になって故郷に錦を飾る。
 これって、かつて40~50年代のハリウッド映画の定番なんですね。特にミュージカルに多いパターンで、古くはダニー・ケイの『アンデルセン』なんかがまさにコレ。

 ところがこの映画、何がスゴイといってとにかく動く、動く。
 最初にお話しした“無生物が動く”アニメの原点に通じる楽しさがどっさりと詰まっているんです。
 ロボットが主人公ですが、ハイテクなど皆目無縁で、むしろ作品にあふれているのはブリキのオモチャなどのカラクリの楽しさ。描かれた街の隅々まで、とにかく何か動く仕掛けがしてある。
 べつにそんな部品いらんやろ、と思うようなものまでがちゃんと役目を持って描かれているのが実にほほえましい。
 アニメの作り方としては信じられないほど無駄だらけの動きや作り込みなのに、観ているとなにもかもが愛おしくて懐かしく感じられるのです。

 そしてそれらに実在感を与えているのが、キャラクターたちの素材感。

 主人公のロドニイの微妙なペールブルーや友人たちの赤や黄色は、まさに50年代によく使われたペンキの色。彼の友人たちはポンコツが多いので錆も出ているのですが、これがまたほんとにブリキの錆そのもの。
 またスチルではむしろグロテスクだったキャラクターが、いざ動いてみると案外かわいいんですね。
 筆者はフェンダーの妹がお気に入りになりました。

 アメリカのアニメは日本のようにアニメーターが空想力で描くのではなく、実際に人間が芝居をしたものを撮影してからそれをもとに絵を起こすというたいへん手間と費用のかさむ手法を半世紀も前から伝統的に使い、CGでも同じ原理を使っているのですが、これが皮肉なことに歩いていても重量感がなく、どんな動きも嘘くさくしか描けないのです。
 これは最新作に当たる『ポーラーエクスプレス』でもそうです。
 あれほど素晴らしい技術を投入していても、できあがってみればそれこそみんなアンドロイドのように見えるのです。

 ところが『ロボッツ』ではこの違和感を逆手に取ることで、むしろ機械っぽい動きになり、さらには主人公たちが異なる素材ごとに重さや堅さが異なるというのがちゃんと動きで伝わってくるのです。たいした進歩です。
 これは技術面もさることながら、スタッフたちが本当にブリキや金属などのガラクタが大好きで、すぐれた観察力と愛情を持って描かないとこうはいかないでしょう。

 さあそして筆者が「これは負けた。絶対日本ではマネできない」と舌を巻いたのが数多く出てくるダンスシーン。
 最初は都会へ出てきたロドニイが道をたずねるロボットがいるのですが、これがいわゆる“ロボットダンス”を踊っているんですね。
 ブレイクダンスが生まれてからもう随分経ちますが、よく考えたらロボットが踊るロボットダンスなんてこれが初めてではないでしょうか。これがなんとも感心して見とれるほど巧くて可笑しい。
 ブリキのオモチャへの憧憬と同時に「うっわ~、このスタッフ、ほんまに映画が、ミュージカルが好きやねんなあ~!」と覗わせてくれるあまりにも有名なそのシーンも出てきますが、あえてパロディと呼ばずにオマージュと呼ばせていただきます。
 そして大団円ラストシーンでの群舞はさすがブロードウェイ仕込み、観ていたら思わずこちらまで飛び入り参加したくなるほどの楽しさ。

 もちろん、そのダンスシーンでさえも人間がマネできないカラクリの動きだからこそ余計に楽しい。

 幼い頃、ゼンマイで動く単純なオモチャなのに、長い時間飽きることなく見つめていたことはありませんか?止まってしまっても、いつまでもいつまでも動いていてほしいから、またねじを巻く。また、その動きを見つめている。
 いつまでも観ていて飽きない、何度でも観てみたい。
 この作品はそんな楽しさがいっぱい詰まっています。


 さて冒頭で筆者は「子ども向けのCartoonではなく、すばらしい“映画作品”でした」てなことを書いたものの、実際に『ロボッツ』は子ども向け、または子供のいる家族向け映画というカテゴリーです。

 そう聞いてしまうと、オトナはたいてい「あ、子ども向けか」と思ってナメてかかるのです。しかし実はここが大きな勘違いで、“子ども向け”イコール“幼稚な作品”ではないということ。
 “子供の目線で考える”ことと“子供のレベルに合わせる”ことは根底から違うはずなのですが、往々にして子供たちに対して最初から“子ども向け”として作品を作るということが多いのではないでしょうか?
 これは結局子供のレベルをナメてかかっていて、要するに子供の人格を認めていないことではないかと。

 子供にかぎらず、人に夢を与える、ということはすなわち作り手がまず夢を見ないといけない。
 その点『ロボッツ』は間違いなく作り手が夢を見て楽しんで作ったのです。そんな作品は、誰が観ても楽しいのはあたりまえですね。
 単純でピュア。だからこそ楽しく、美しい。主人公ロドニイのまんまなこの作品なのです。


Robots03

 筆者は字幕版で観ました。日本語吹き替え版はSMAPのクサナギくんが演じているそうですが、本家のユアン・マクレガーの声が彼によく似ているのにはびっくり。
 相棒のフェンダーはなんとロビン・ウィリアムス。
 彼のぶっ壊れぶりがなんとも楽しいので、ぜひ字幕版でもご覧いただきたい。

 さて。今回も長くなりました。
 どうも観ていて嬉しくなる作品には饒舌になってしまいますね。

『ロボッツ』公式サイト
『ロボッツ』トレイラー


 では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

いつも熱いコメント、ほんとに楽しみです。
もしよろしければリンクさせていただいていいですか?
たくさん読ませていただきたいので・・
よろしくお願いいたします。

投稿: foo | 2005年9月22日 (木) 09:59

fooさん、かさねがさねトラバ&コメントありがとうございました~!
もう、こんなブログでよろしければ、ぢゃんぢゃんリンクしてください。
嬉しいお言葉、めちゃくちゃはげみになります。
がんばって楽しくてお役に立つ解説を目指しますので今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: よろ川長TOM | 2005年9月22日 (木) 11:38

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