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2009年4月20日 (月)

『誇り高き戦場』知って欲しいのはラルフ・ネルソン監督。

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 はい、みなさん今晩わ。
 来る4月28日にNHK BS衛星映画劇場で『誇り高き戦場』という、古い映画が放映されます。
 昨年亡くなったチャールトン・ヘストン主演の戦場アナザーストーリーもの。
 超大作に数多く出演した彼の経歴から言えば“その他”にあたる作品になり、感激するほど面白い作品とかではないのですが、いろんな意味でなかなか興味深い作品の上に、もうレンタルやDVDなどでもお目にかかれない旧作のひとつなので数のウチとしてご覧になるのもよろしいかと。

 でも実はこの作品そのものよりも、これを機に監督のラルフ・ネルソン作品に注目していただきたいのです。

 古すぎて筆者もカットだらけでボロボロのビデオ録画しかないので内容の画像はありませんが、ネタバレだけはしない程度にしっかり見どころなどをご紹介しておきますね。


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 1944年12月、アメリカ出身の世界的指揮者ライオネル・エバンズは兵士達の慰問のためオーケストラとともにベルギーを訪れるが、ドイツ軍の反攻戦にまきこまれて全員が捕虜となる。
 即座に銃殺刑に処せられそうになるが、エバンスの「完全な非戦闘員である自分たちを処刑することは戦時中といえども国際条約違反だ」との必死の反論にひるんだ士官は彼らをルクセンブルクの古城に設けられた司令部へと送る。
 そこで出逢ったシラー将軍という最高司令官は芸術に造詣が深く、彼らの処刑を見合わせる命令を下すと同時に、エバンスにもオーケストラの演奏を命じる。
 しかし気骨の人であるエバンスは「敵のためには演奏しない」と頑として断ってしまう───

 どっかで聞いた話というよりも、むしろこの映画がその手のエピソードのもとになっていることも多いのではないかと思います。
 たとえば『ガンダム』シリーズや『銀河英雄伝説』など田中芳樹系のお話でも登場する芸術家肌の指揮官は、もとをただせばこうした作品に登場するドイツ将校ではないかと思うのです。
 同時にこうした頃のアメリカ映画に登場するドイツの将校には、騎士道精神を持ち合わせた人も多くいたような印象を受ける一種のパターンのようなものもあり、太平洋戦争を描いた場合の日本兵のサムライ的な描写と対をなしています。
 規律正しく没個性っぽいドイツ兵と、どこかルーズで自然体なアメリカ兵、特攻精神と上官から虐げられながらも命令に忠実な日本兵といった具合。

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 そんな基本的構図のもとにヘストンが演じるエバンスは、それまでヘストンが演じてきた頑固で一本気で正義感あふれる頼れるたくましい男…といかにも彼らしい役どころ。  一方のシラー将軍を演じるマクシミリアン・シェルは生粋のオーストリア人で『ニュールンベルグ裁判』ではアカデミーとゴールデングローブでそれぞれ主演男優賞も獲り、自らメガホンも摂るほどの人で晩年は名脇役でありながら、彼の出演作のほとんどはいま観ることができないものが多いため、最近では忘れられた人なのが残念。

 そんな二人の駆け引きと、ご想像通りいかに団員全員を無事に脱出させるかが見どころなのですが、残念ながらそれほど凝った造りでもないのでイマドキの鑑賞眼をお持ちの映画ツウからの劇場用映画としての評価は低い。むしろ、こうしてテレビで放映されるのには丁度いい内容の映画だと申し上げておきましょう。


 監督はラルフ・ネルソン。
 作品ラインナップを見ますと、見事に彼の主張が浮き彫りになります。私が知っているのは『野のユリ』『砦の29人』『誇り高き戦場』『まごころを君に』『ソルジャー・ブルー』『エンブリヨ』なのですが、これだけでもかなり異色な作品だらけ。

『野のユリ(1964年)』は主演のシドニー・ポワチエが黒人初のアカデミー賞を獲った素晴らしい傑作で、アカデミー賞作品のおかげでいまでもDVDが手に入る作品なんですが、古いので知名度が低いのがじつにもったいない。
『砦の29人(1966年)』はいわゆる西部劇でありながら当時まで普通に描かれていた“開拓者=犠牲者、騎兵隊=正義の軍隊、インディアン=野蛮人”という歪んだ図式に一石を投じた意欲作です。
 さらにそれを推し進めたのが、筆者も大好きな『ソルジャー・ブルー(1971年)』ですが、開拓民こそが侵略者であると暗にほのめかした衝撃的な内容はきっとベトナム戦争まっただ中の当時のアメリカでもかなりの波紋を投げかけたはず。

 そして『まごころを君に(1969年)』。これはSFファンを名乗るなら読了必須作品であり、数年前に日本でドラマ化された『アルジャーノンに花束を』の最初の映像化作品です…と申せばもう説明は要りませんね。

『エンブリヨ(1977年)』も変わってます。今ならそれほど驚かない内容かも知れませんが、スターウォーズが公開され、この前後の数年はとにかく超大作だらけの時に、ちょっと見がB級オカルト色の強いスプラッタ風のエログロっぽい作品なのですが、実はもうひとつの『アルジャーノン~』でもあり、現代でも通用するバイオテクノロジーへの痛烈な警告にもなっているハードSFなのです。

 ───こうして並べてみるとバラバラというか実に変幻自在な作風ですが、いずれにも共通するのが『生きるということ』の倫理観に関する掘り下げなんですね。
 どの作品もラストシーンになかなか味があって、昔にテレビで一度ご覧になっただけで内容は忘れたとしても、ラストシーンは焼き付いている方も多いと思います。
 これらも例によってテレビの放映を待つしかないような作品ばかりですが、機会を見てご紹介しましょうね。
 いずれも一見の価値のある作品です。

 ところで私はクラシックの上手い下手など皆目わかりませんのでまったく気になりませんが、ヘストンはクラシックが好きで、そのおかげか指揮する演技もまあまあ上手いのだそうです。
 しかし音楽を聴きに行くのと同様、映画を楽しむと言うことはアラを探すことではありませんので、物語の流れの中でそうしたディテールはゆったりととらえる寛容さが必要なんだなと私も最近やっと思い至りました。
 だって役者が演じるべき、伝えるべきはそこではありませんものね。
 逆に専門家が観ても文句なく上手いときにはべた褒めすればいいと思いますので、この作品『誇り高き戦場』をご覧になるときはあまり厳しい眼でご覧にならないよう。


 余談ですが、戦場で戦う兵士のために音楽家や銀幕のスターが危険を冒して慰問に行くのは実際によくあった事で、有名なところでは『リリー・マルレーン』を唄った大女優マレーネ・ディートリッヒの話があります。
 ドイツ出身の成功者のシンボルのような彼女が率先して連合軍の最前線に近い各地へ慰問へ出掛け唄う姿は伝説的ですらあり、のちに米仏両国から勲章を貰ったほどですが、そのためにナチスからも目の敵にされ、戦後故国ドイツへ赴いたときも色々あったという話も残っているほど。
 また戦前・戦中を通じて大活躍し、3世代を越えていまなお根強いファンをもつスイングジャズの大家の半生を描いた『グレン・ミラー物語』のラストも前線の兵士達を慰問に旅立つというものでした。

『誇り高き戦場』公開当時もベトナム戦争(1959年~1975年)の真っ最中。
 自ら銃を取って殺し合うばかりが戦うことではない───本当はそう言いたかったんじゃないかな、とその後のラルフ・ネルソン作品を観ていると思えるのですが。

 
 では、また、お逢いしましょうね。

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 最後まで読んでくださってありがとうございます。ちなみに私───
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コメント

lifeonmarsさん、いらっしゃいませ!
こういうマイナーどころにコメントを頂けると本当に嬉しく思います。
そうなんですってね、坂田靖子さんが描かれていたとこの記事を書くために下調べしていて初めて知りました。
彼女もかなりの映画フリークで、一般の作品の中でもさんざん引用句が登場してるのを見ては私もひとりほくそ笑んでいたファンのひとりです。

この映画もそうですが、いまやラインのオンオフに限らずレンタル全盛で、こうした作品はまずBS映画劇場あたりをアテにするしかもうお目にかかれないでしょう。
ですから少ない機会を活かすべく、知っているマイナー作品でそれなりに観れる映画がオンエアされる時はこうしてご紹介してゆく所存です。ぜひまたおいでください。

投稿: よろ川長TOM | 2009年4月23日 (木) 11:35

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