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2009年4月23日 (木)

『おしゃれ泥棒』必見!何度観ても楽しめる小粋な傑作コメディ。

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 はい、みなさん今晩わ。
 先日NHK-BSで放映されたこの作品、ご覧になられました?あら。見逃したんですか。
 それはもったいないことをしましたね。でも大丈夫。さいわいこの作品なら今でもレンタルとかあったと思いますから、なんとしてもご覧なさいね。
 もっとも私くらいから上の年齢の人には説明不要なのでこの記事はスルーして戴いて結構ですよ…え、あなた、ご存じないんですか!? そのお歳で!?……あら、失礼。それならこの記事をちゃんと読んで、ちゃんとご覧にならないと映画ファンを名乗るのは恥ずかしいですよ~。
 もちろん、この作品の魅力を子々孫々まで伝えましょうね。
 上の写真はいろんな国で公開された時のポスター。もちろん左端が日本のものですが、作中での彼女よりも実年齢っぽい写真になっててちょっと雰囲気が違うんですよね。
 

 パリに住む稀代の美術コレクター、シャルル・ボネ(ヒュー・グリフィス)は世に埋もれていた名作を見つけ出しては美術館に寄付したり、たまにオークションなどで売るなどをして美術品の普及に貢献していたが、実はすべて彼の手になる奇跡的なまでの出来映えを誇る贋作であった。
 彼の一人娘ニコル(オードリー・ヘプバーン)はそんな父のやばい商売に日頃から危機感を覚えていたが、今さら辞めさせることもできずにいた。
 ある日、美術館へ寄贈した小さなビーナス像を最先端の科学技術を使って公開鑑定することになったからさあ大変。
 バレてしまえばすべてが水の泡…という危機に、たまたまニコルの家に忍び込んで見つかってしまったのがシモン・デルモットと名乗るハンサムな泥棒。ニコルは彼に美術館から問題のビーナスの奪還を依頼するのだが───

 正直、これがウィリアム・ワイラーの作品と知ったときは驚きましたね。私はその作風から長い間てっきりビリー・ワイルダーだと思っていたのです。
 もっとも脚本のハリー・カーニッツという人はギャグコメディ『ピンクパンサー:暗闇でドッキリ』やスペクタクル『ピラミッド』、はてはサスペンスの『情婦』など、ハリウッドのさまざまなタイプの作品をソツなくこなす才人だったようですから、『おしゃれ泥棒』の完成度が高いのもうなずけます。

 とにかくオードリー演じるニコルが無邪気で可愛い。彼女が演じた女性の中でもっともキュートなのではないかしら。
 もちろんアン王女もサブリナもイライザも可愛いのですが、それぞれ背負った背景がど~んとあるんでニコルほどには軽くなれないんですね。ニコルはイマドキのライトノベルでも普通に主役になりそうなキャラクター。
 伝説の名女優オードリーが演じているのでつい高い目線で観てしまいがちですが、『おしゃれ泥棒』自体が今の日本の恋愛コメディの原型の一つに繋がっていると言い切っていいと思います。特に少女マンガでコメディというジャンルが確立し熟成した背景には、この時代に数多くあった小粋な映画たちの影響がすごくあると思っています。

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 そしてこれまた名優ピーター・オトゥール演じるシモンが妙にかっこいい。
 いわずとしれた『アラビアのロレンス』以降、その宝石のようなブルーアイはあまりにも魅力的。1966年の『天地創造』では70mmの巨大スクリーンに登場していながらSW4のオビワンみたいなフードでほとんど顔が隠れてて、スポットを当てた眼のあたりのドアップだけで彼だと知らしめてしまうのですよ。すごいでしょ?まさに“目ヂカラ”ですよ。

 またこの時代の大作映画は今とちがってテクニカラー、いわゆる“総天然色”。説明すると長くなるので省きますが、要するに撮影手法とフィルムそのものが超高級品で、そのかわり今のハイテク映画でさえ真似できない美しさの色再現が可能だったんですよ。
 だから尚更彼の青い眼はスクリーンに映えたし、シーンごとに替わるオードリーのファッションがパリの街に映える。
 おまけにこのシモン、見かけはどこかヘタレっぽいのに実は頼れる。ツンデレの向こうを張って“ヘタたの(ヘタレだけどイザとなると頼もしい)”なんて言葉があってもよさそうなもんです。
 あれぢゃあ、ニコルでなくても惚れちゃいますわよ。
 小道具の使い方も上手い。しかもどれも無理がないんで、ンナあほな、というような事も納得できてしまう。

 さてさて、大筋はここまで。あとはもう直接ご覧になってひたすらキャッキャはしゃいでください。笑えます。ハラハラします。小粋です。素敵です。オシャレです。もう、褒めちぎりますよ。
 そして諸所に散りばめられた演出の楽しいこと。ちょい役の警官たちでさえ、その行動から彼らの普段の生活やバックグラウンドが垣間見えてくるという堂の入り様。端役と言っては失礼ですが、彼らの設定がしっかりしているからこそ主役たちの行動全てがちゃんと地に足がついたものになる。

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 そうそう、この人を忘れてはいけません。ニコルのおとん…いや、ボネ氏を演じるヒュー・グリフィスがこれまた実にいい。
 後述のウイリアム・ワイラー監督の代表作『ベン・ハー』では主人公に肩入れするアラブ人富豪の役でも気炎を吐いています…といっても服装が違うだけで濃い濃いまんまのキャラクターでしたね。ほら、あの真っ白な馬たちをヘストンに譲る恰幅の良いオッサンね。そう聴くと「ああ!ほんまやねぇ」と膝を打つ方も多いのでは?

 私が昔から何度も観てきた吹き替え版ではニコルはもちろん池田昌子さん、シモンもオキマリの中村正さんで、ヒュー・グリフィスはかのMr.スポックでお馴染み久松保夫さん。さらに今回触れませんでしたが、彼らによっていいように利用されてしまうアメリカ人資産家を穂積隆信さんが演じていて、これまた実にハマっています。
 BSでは字幕版ですが、DVDではテレビ放映時のこのキャストで記録されているという噂。なかなか粋なことをしてくれます。

 監督はウイリアム・ワイラー。『我が生涯の最良の年』『ローマの休日』『大いなる西部』『ベン・ハー』『噂の二人』などなど、超々大作から純愛スリラーに問題作まで手がけ、アカデミー賞も取りに獲ったりノミネートが12回で受賞が3回。まさに巨匠の冠にふさわしい方ですね。
 そんな彼が異色のサイコスリラー『コレクター』の次の年にガラッと変わって生み出した恋愛コメディがこれ。器用と言うよりも職人気質で、とにかく妥協しない頑固一徹な監督で知られていたそうです。

 原題は『How to Steal a Million』言いますね。直訳すれば“百万の盗み方”ですが、ほんとに粋な邦題にしてくれましたね。これでこそオシャレというものです。
 というのも、この“百万”、ドルなんです。お話の最後に出てきますが、最初、舞台がパリなのになんでドルなんだろうかと思ってたんですよね。
 今になって、さて当時のフランスの通貨単位の『フラン』って幾らなのかしらとさんざん調べてみたんですが、この時代1ドルが360円固定相場で、フランだと1ドル350フランになってかなり安くなってしまう。
 だからといってフランスの粋な雰囲気で攻めたい作品のタイトルに“ミリオンダラー”では台無しになるから単位の明言は避けたんでしょうかねえ。

 それはともかく、衣装はいわずとしれたジバンシー。ということは美術館での掃除のおばちゃんの扮装も彼が手がけたんでしょうか。そういうことも含めて観てゆくと楽しさも倍増します。
 さらに音楽はジョン・ウィリアムス。ほんまに、こんなときからずっと、ずっと仕事を残してこられているんですねえ。すごい人です。
 撮影もすごくて、『荒野の七人』『シャレード』『パリで一緒に』を撮り、このあとも『サンセット物語』『暗くなるまで待って』などなど、昭和のヒトケタから撮り続けこの時点ですでに30年のベテランだったチャールズ・ラングと超一流ぞろい。
 今の巨匠と呼ばれる監督でこうした色とりどりの作品を作れる人ってどれだけいるでしょうね。残念ながらこうした小粋な映画はずいぶん遠くなりました。

 ただ、日本のアニメのなかには間違いなくこうした古き良き時代のハリウッドスピリットは連綿と受け継がれているという実感はあるんですけどね…

 
 では、また、お逢いしましょうね。

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