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2008年8月 7日 (木)

戦争と人を考える:3『M★A★S★H マッシュ』一見ブラックコメディ、しかし根底に流れるものは痛烈な戦争批判。

img20080222.jpg すごいデザインのポスターでしょ?『M★A★S★H』、これ文字の間に★印がついてますけど、マッシュって読むんです。さてマッシュって何でしょうね。
 1970年の公開当時、マッシュといえばその頃ようやくテレビなんかで知られだしたマッシュポテトくらいだったんですが、私らはまだ小学生でしたので尚更意味が解らない。

 はい、これ略語なんです。Mobil Army Surgical Hospital、米陸軍移動野戦病院のこと。つまり戦場の近くにあって、戦場で傷ついた人が次から次へ運び込まれるのを救うための、にわか作りの病院のことですね。
 そう、言ってみればあの十何年も続いている人気海外ドラマの『ER』の元祖なんです。
 だけどこの映画はあんなふうに人の生き死にを扱うヒューマンドラマな映画かな、と思って観たらあなた、腰抜かしますよ。いや、怒って席を立つかも知れませんね。あまりにもふざけて見えるから。
 でもエンドロールが出るころには絶対あなた、「ああ、いい映画だったなあ」ってニンマリ笑ってらっしゃいますよ。

 さあ、熱く熱く紹介させてくださいね。
 


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 なんだかんだ言っても、もうこの作品は38年も前の作品になります。
 主役といえるのが三人のぶっとんだ外科医。
 ひとりはホークアイを演じるドナルド・サザーランド。───といってもお若い方はご存じないかも知れませんね。でも『24-TwentyFour』のジャック・バウアー役で知られるキーファー・サザーランドのお父さんと言えば少しは「へえ」と思っていただけるでしょう。
 息子さんと違ってかなり長~いお顔が特徴で、ロバート・レッドフォードがアカデミー監督賞を得たことでも知られる『普通の人々』やドイツのスパイを演じた『針の目』での見事な演技、また『SFボディ・スナッチャー』など、出てくるだけで存在感があり、さまざまな映画でその異彩を放つ素晴らしい性格俳優です。
 そのドナルド・サザーランド(下の写真、左)の出世作とも言えるのがこの『M★A★S★H』。

img20080222_1.jpg

 ふたりめの外科医、デューク(公爵)を演じるのがトム・スケリット。『エイリアン』でノストロモ号のダラス船長を演じていた人です。
 そして上の写真右の人物、トラッパー・ジョンを演じるのがエリオット・グールド。それ誰やねん、と訊かれたらジョージ・クルーニー版『オーシャンズ11』シリーズの、元カジノ・オーナーでブラピやクルーニーが昔世話になったという設定の初老の男、ルーベン・ティシュコフを演じている人…としか今では説明しにくいですが、大ヒット作にはほとんど出ていないものの、出演作で言えばドナルド・サザーランドの数倍は出ている名・バイプレーヤー。

 この三人が朝鮮戦争まっただ中、最前線近くの野戦病院へ赴任してくるところからお話が始まります。
 病院といっても、ちょっと大きなテントがいくつかと、粗末なバラックがあるだけのキャンプ場のようなもの。
 ですから消毒も隔離も機材も不完全だから、ほんとに“いちおう医療器具と医者があるだけマシ”という程度の荒っぽいもの。ERでもイラク戦争時の野戦病院を舞台にしたエピソードが何話かに渡って放映されましたが、あんな立派なもんじゃ勿論ありません。

 三人の名前はホークアイ、デューク、トラッパー・ジョン。みんなヘンな名前でしょ?ニックネームなんですね。『太陽にほえろ!』じゃありませんが、この映画の登場人物はみなこんな調子。
 このほかにテレパシー能力でも持ってるのかと思わせるような“一を聞いて十を知る”、物資調達係のレーダー、グラマーで一応美人だけどツンととりすました女性将校(看護婦長だったか女医さんだったか記憶があやふやなんですが)は“ホットリップス(熱い唇)”。
 院長にあたるおっさんだけがフツーに名前で呼ばれていますが、こうなると本名で呼ばれてしまう方がなんとなくツマハジキな感じになるんですね。

img20080222_2.jpg もう、のっけから異様に陽気、ハイなんですね。のべつまくなしに下品なジョークを飛ばし、ヒマさえあればロクでもない悪質ないたずらばっかり考えている。
 なかでもオツに澄ましているホットリップスはたちまち三人の悪ふざけの餌食に。もう、観ていて笑うよりも、彼女が気の毒に思えるほどひどい目に遭わされる。だけど悪ガキみたいな三人でも、いざとなるとちゃんとやるときはやるんですね。
 普段はおバカなことを考え出すことに精を出しているんですが、ついに前線から瀕死の負傷者がどんどんヘリで後送されてきます。
 銃で撃たれたもの、爆弾で身体を吹き飛ばされたもの、もう、もう、血まみれ、血まみれ、みんなうめいてる。あえいでる。まるで地獄のよう。
 緊急事態、手術につぐ手術、だけど所詮は野戦病院、設備も中途半端、いざとなれば手が足りない。どんどん失われる生命、目を背けたくなるような無惨な有様。

 この作品の真価はここからです。プロローグからのハチャメチャでおバカなノリと、このER(緊急救命室)そのものの緊迫感が同じウエイトで描かれているのです。
 このギャップ。この対比のコントラスト。主人公たちはこの現実をイヤと言うほど身に染みていたからこそ、患者が搬送されるまではバカ騒ぎに乗じてでもいないと気が変になってしまうのかも知れません。
 私がこの作品を初めて見たのはまさに淀川長治先生の『日曜洋画劇場』だったのですが、当時まだ中学生くらいだったためにこのギャップについてゆけませんでした。だって、笑える映画だと思いこんで観ていたら、ある線からキワキワのドキュメントタッチになるのですから。
 でもそれこそが、この監督や俳優たちのメッセージでもあったのです。

 戦争映画を戦闘シーンとそれに挑む前、悲劇の後を悲愴感で描くのは簡単なのです。普通の神経ならそれが自然な流れですから。

 でも、第二次世界大戦、朝鮮戦争、そしてベトナム戦争と続けさまに、しかも激化の一途をたどるばかりなのに、さらに権力を強めてゆくアメリカ軍とそれに引きずられズルズルと無益な戦争を続けるアメリカ政府を幼い頃から見続けてきたスタッフたちにとって、物心ついたときから当たり前の国家事業のように行われている戦争とはいったい何と映ったのか?

 アメリカという国は不思議な国なのです。
 独立戦争や南北戦争以外では、自分の国で戦争をしたことがない異常な国家なのです。だから、第二次大戦中も戦争当事国でありながら国内では国民がフツーに生活していたんですね。パーティしたり、遊園地で遊んだり、娯楽映画を観たり。
 その一方では戦地へおもむいた兵士達は日夜をとわず人殺しをし、また殺されてもいたのです。

img20080222_3.jpg この映画が公開された1970年といえば日本では大阪万博、世界的に言えばベトナム戦争のまっただ中。そして先日公開され、このブログでもとりあげた『アメリカン・ギャングスター』の舞台となった時代。
 で、この『M★A★S★H』の舞台はその二十年ほど前の朝鮮戦争なんですね。もうお気づきでしょう。真っ向からベトナム戦争反対、なんて言えば公開されなくなりますね。また、シリアスな戦争映画にしたとしても、ヒロイズムに流された話でなければ、やはり配給会社は政府に気を遣って公開することに二の足を踏みますね。
 だからコメディの姿を借りた。それも、とびきりブラックユーモアたっぷりの。おっちゃん達にも受けるように、エッチなお色気シーンもふんだんに盛り込んだ。

 だけど、それもこれも、当時のアメリカの縮図として描いたんですね。心憎いのは、全体に粋な作りになっているところです。重たい、重たいテーマをさらりと描き、おバカな三人の悪ガキおやじ達さえも実に気持ちよく描いています。だから、終わったときはあなた、絶対にニンマリとお笑いになるはずですよ。

 当時も映画賞選考委員会は偉かった。ちゃあんと解っていましたね。これ、カンヌでパルムドール、とりました。最高賞ですね。
 アメリカ政府の息が掛かっていたので、アカデミー賞は脚色賞だけでしたが、時代が時代だったらほんとはもっともっと、賞をあげたかったに違いない作品ですね。

 さあ、この傑作。ありがたいことにDVDは出ています。大きなレンタル屋さんなら見つかるかも知れません。ぜひ、ぜひ、この機会にご覧ください。

img20080222_4.jpg


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★なお、この記事は去る2008年2月22日に公開したものですが、今年の終戦日を目前にして“戦争と人を考える”特集としてより多くの方にこの作品を知っていただきたく、加筆した上で再度アップさせていただきました。

 
 では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

「マッシュ」は大好きな映画の一本です。
主題歌も良かったですね。

投稿: samurai-kyousuke | 2008年3月21日 (金) 21:54

samurai-kyousukeさん、いらっしゃいませ!
いや、こういう作品がBSで放送されるなんて事もビックリですが、正直MASHにトラバやコメントがつくとは思ってもみませんでした。
ありがとうございます、これをご縁にこれからもよろしくお願いします。

投稿: よろ川長TOM | 2008年3月21日 (金) 23:20

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