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2008年5月25日 (日)

『暗くなるまで待って』萌える密室サスペンス!!

kurakunalumade5.jpg はい、みなさんこんばんわ。
 もう何度も観てますが、トシ食ってあらためて観ると発見することも多いですね。
 まずこのタイトル、『暗くなるまで待って』。原題が『Wait Until Dark』なのでいえば直訳なんですが、実になまめかしくて艶のあるタイトルではありませんか。ガキの時は全然なんとも思いませんでしたが…え?あなた、今もなんとも思わない?

 まあ、カマトトさんですか?「私はまだ子供だ」…なんて言わせませんよ。
 

 それにしてもオードリー、この映画では徹底的にいたぶられます。いや、いじめられまくる。
 監督のテレンス・ヤング…というと、S・コネリー時代の初期007で一躍世界へ知られた人ですが、よーく考えるとアクション映画というよりも、室内ネタが上手いんですな。実はもともと舞台劇だったこの作品、すべての話はさして広くもない半地下の一室を中心に展開するんです。

 そうそう。あらすじをお話ししていませんでしたね。

waituntildark3.jpg

 数年前に交通事故で視力を失ったスージーは、夫が海外出張からの帰りに預かったというオルゴール人形をめぐって、留守番中に怪しい男たちが次々とやってきます。
 目の見えないスージーにしてみれば男たちの言い分から彼らの存在から目的、そしてその正体を類推するしかないのですが、観ている観客にとってはスージーが男たちに聞かされているものとは別の世界、真実が見えています。
 目の見えないスージー、悪意に満ちた男たちという、危ない危ないシチュエーションでハラハラしっぱなしの傑作サスペンス映画です。

 そもそもキャスティングの段階で見事です。
 オードリーは背こそスラリと高いめの女優さんですが、細くてか弱いという意味ではこれ以上のキャストはないですね。しかもとびきり眼が大きいのに、見えないという設定。宙を泳ぐ視線がロングショットでもはっきりわかる。
 今はともかく、昔は盲目でも眼を開けている演技が一般的でしたが、実際に目が見えているのに何も観ないという演技は想像以上に大変なはずです。最近ではチャン・ツィイーが『LOVERS』で見事な演技を見せましたね。

 同時代で眼の大きな女優さんといえばソフィア・ローレンがいますが、ダイナマイトボディの彼女では力尽くで戦えそうですからまず無理。
 話はそれますが、1963年にオードリー主演でスタイリッシュ・サスペンス『シャレード』で大ヒットを飛ばしたスタンリー・ドーネン監督が、66年にソフィア・ローレン主演で姉妹作と言える『アラベスク』を撮ったんですが、そっちはあまりヒットしなかったのは、もしかしたらソフィア・ローレンでは“守ってあげたい”という気にさせにくかったからかも?

 閑話休題。

 さきほど、原作は舞台劇と申し上げました。私の大好きな『十二人の怒れる男』もそうですが、いわばたったひとつのセットの中ですべての物語が始まり、進み、終わりを迎えるわけですから、実は楽なようで、演出としてはもっとも大変なのです。
 なんせ下手すれば同じシチュエーション、同じ画面がずっと映っているために飽きてしまう可能性がある。物語上の時間進行も一日程度の話なので役者も衣装替えなどしないために、これまた画面が地味になる。
 そしてなにより、普通では同じ所にそうそう一日中閉じ籠もったりしませんから不自然になってしまう可能性が高いのでとにかく難しい。

 そういう意味で観てしまうと気づくツッコミどころみたいなのはあるんですが、ここはそんな見方をするのは無粋と言うもの。
 


 スージーの夫役を演じているのは、エフレム・ジンバリストjr.。私くらいの世代だと、♪セブンティセブン、サンセット・ストリップ…と唱えば思い出す役者さん。60年代の超人気海外テレビドラマ『サンセット77』で主役のカッコイイ探偵を演じた俳優さんとして知られていました。
 劇中けっこうスージーに厳しくて、ほんまにこの人、スージーを愛してるのかしらん?と思わせるところもあるんですね。
 実はこの『暗くなるまで待って』は67年ですが、先ほど申し上げたオードリー主演の前作、63年の『シャレード』は全米で観てない映画ファンはいなかった。その『シャレード』は夫が主人公のオードリーに残した謎の遺産をめぐって怪しい男たちが暗躍するお話で、味方だと思った頼もしい男が実は…みたいなお話だったんで、観客たちはこのエフレム・ジンバリストjr.の演技からして、この夫も怪しいんじゃないか、と思わせる仕掛けになってるんですね。

 また実際に作中では最初にチラッとしか出てこないし、次々現れる怪人物たちの話に登場する夫の話もどこか胡散臭さがにじみ出てくる。

 この作品の演出で最大の面白さはなんといっても“知らぬはオードリーばかりなり”で、彼女以外の人間にはすべて真実が見えている、という設定。怪人物たちが嘘を言っているのは観客には丸分かり。
 そしてスージーの目が見えないのをいいことに、彼女の前で筆談で別の相談をしたり、目の見えている人であれば簡単にバレてしまうはずの“見え透いた”ウソをつきまくるんですね。
 でもスージーはニコニコとして気づかない。しかし、なんとしても人形を手に入れたい悪党たちはできるなら彼女に正体を知られずに有りかを聴き出さねばならない以上、殺すこともできず。けれど、見えていないからこそ彼らの不自然な行動にもふと、気づくんですね。

 ここに悪党とスージーの知恵比べが始まるという図式なんですが、最初に現れた男は夫の親友を装って親切にするものの、観客には悪人だということがバレていても、スージーは気づいていない。これがまた危なっかしさに輪を掛けていて、観客にしてみれば思わず「スージー、あかん、あかんよ、そいつは悪いやっちゃねんで!」そう叫びたくなる演出なんですね。
 しかもスージー、今でいう“ドジッ子ちゃん属性”で、冒頭から家事でけっこう失敗ばかりしている様子が描かれている。これも観客を萌え…いや、ハラハラさせる要因になっています。
 こんなドジッ子ちゃんで、しかも目が不自由で、さらに転けたらポキッと折れそうな体格で…誰か、誰か彼女を助けて!───全編、そういう演出が成されているだけに、実は男たちはみな悪党で、彼女が生命を狙われていて、夫もどうやら生命に危険が迫っているらしい…どうしよう、どうしよう、と焦る気持がズンズン伝わってくる。
 この辺がオードリーの演技のすばらしさですね。
 さらに頼みにしていた様々なことがひとつひとつダメだと絶望させられてゆく過程での「Oh...! Nooooo!」という声を押し殺しての叫び。日本版では池田昌子さんの「あああっ。い、いやあああああっっっっ」という声がたまらなく萌えな…
 いやいや、失礼。

waituntildark_pinch.jpg
 

 でも監督のテレンス・ヤングがそれを意識しなかったといえば絶対ウソでしょう。
 かつてヒチコック監督がいかに主演女優を色っぽく艶っぽく苦しめるかという描き方をしたおかげで、数々の名作が単なるサスペンスでは終わらなかったことを思えば、まさにそれが正統派の映像芸術のあり方というものです。
 ヒチコックが存命で、今の日本へ来ていたら絶対に「I just, MOE~!!!!」って憶えて帰ったはずですよ。彼のポリシーそのものを表す単語ですからね。

 それはともかく、男性客には萌え要素、女性客には思わずこぶしを口の前にしてしまうハラドキ感で満たしてくれるこの作品ですが、それだけなら私も傑作名作とは思いません。───なによりも脚本力。
 作品の転換点にもなっているのが、どうせ見えないんだから判らないだろうとタカをくくっていた悪党たちに対して、理由こそ分らなくても実はスージーはすべて気づいてしまうカンの良さと、それらを冷静に関連づけてゆく頭の良さが判ってくるに従って、観客も単にハラドキだけではなく、彼女は応援するに足るだけの勇気と明晰さを持ったヒロインであることに気づかされるのです。

 やがて悪党共と限られた悪条件のもと、頭脳で対決してゆくレベルの高い知恵比べにもなっているのがこの作品に厚みを持たせ、見事で上質なサスペンスに仕上げているのです。

 ありがたいことにこの作品、いまやレンタルがあれば2週刊借りで最低料金だし、買うにしても昔の名画座並のお値段で手にはいる。
 いい時代になりましたね。
 あいにく劇場で観ることはかないませんが、ご自宅でなら観ながらびっくりしてポップコーンをこぼしても、ハラドキしたあげく思わず「スージー、逃げて!!」と叫んでも迷惑掛かりませんからね。


  では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

こんばんは♪

先日はコメントありがとうございました☆

この作品、初めてみたのが今から遥か昔の
高校生の頃で、
オードリーの中でも上位にくるほど
わたしは好きな作品です。

その後オトナになってからお芝居も観ました♪素晴らしいサスペンスですよね!
また久しぶりに見たくなりました。

投稿: mig | 2008年9月16日 (火) 01:53

migさん、いらっしゃいませ!
いつもお世話になってます。
うわあ~、こういう旧作名作にコメントいただけると私としてはすごく嬉しいです。
そもそもこのブログ運営の主旨はこうした、今ではあまり放映されない作品を若い方に紹介することも含まれているので。
でもいくら深夜放送でも平日の2時始まりはあんまりですよね。
映画見終わっても興奮して寝られやしない。結局『朝まで生テレビ』状態ですよ。
(;´д`;)次の日が休みならねえ…

投稿: よろ川長TOM | 2008年9月16日 (火) 17:21

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