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2008年1月22日 (火)

『団塊ボーイズ(ワイルド・ホッグス)』愛すべきオッサンたちのロードムービー。

wildhogs01.jpg

 はい、みなさんこんばんわ。
 今回は楽しい楽しい作品をご紹介。最近、トラボルタがえらいがんばってますね。そんな1954年生まれの彼も来月2月18日で55歳。だから厳密に言うと団塊の世代じゃないんですよ。
 というか、『団塊の世代』の意味解ってませんね、広告担当の人。
 しかもメインコピーが

〈団塊ボーイズ〉───それは、恋も、夢も、冒険も、
何ひとつ捨てきれない〈少年のような大人〉のこと。

 なんですか、これ。これでは映画作った人たちが浮かばれません。なんて、おバカな紹介の仕方でしょう。可哀想に、ちゃんと作品を観てなかったんですね。
 恋と夢と冒険を捨てることは大人になる事じゃない。人間をやめることです。
 そんなわけで、この映画の本当の楽しさをお伝えしましょうね。
 

 『団塊の世代』という呼び方ですけど、アレは学生運動でデモに加わったり、行動を起こす際にはまず徒党を組む…というと聞こえがよくありませんが、集団で何か行動を起こすことが多かった世代がだいたい戦後の第一次ベビーブームの頃生まれの人が多いので、いつしかマスコミが十把ひとからげでテキトーに名付けたものですね。
 ウィキペディアによれば、一応1955年生まれまで含むこともあるそうですが、集団行動が好き、という性質で言えば、やはり年齢的にはゲバ棒持って機動隊相手にケンカを売った60歳に手が届くくらいの年齢でないと。
 そもそも徹底した個人尊重主義のアメリカ人にそれを宛てるのも無理があるんですよ。
 さて、お話はというと。

 四人のオッサンがいます。歯科医として成功しているけど高血圧やら仕事のストレスで我慢ばかりの日々を過ごすダグ、小説家志望で女房に頭が上がらない水道屋ボビー、敏腕弁護士として一度は成功したけど離婚やら破産やらで人生なげやり状態のウッディ、プログラマーでメカ好きなのにメカに愛されないKYでどんくさいダドリー。

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 みんなどこか逆説的な四人の趣味はバイク。お金がないわけではないらしいので、オキマリの大型バイクをおそろいの革ジャンとか着込んでチームのまねごと。付けた名前が『ワイルド・ホッグス(野豚)』。
 なにもかもヤケクソになったウッディ(ジョン・トラボルタ)は、見栄もあるので離婚や破産のことは黙ったまま、憂さ晴らしのツーリングに三人を誘うところからこの物語は動き始めます。
 もともと独身のダドリーや独身に戻ったウッディと違って、ダグとボビーの家庭を持った男はみな自分なりの事情がある。すぐにはそんな遊びにはつきあえない。そういった“しがらみ”を描きつつ、なんとか四人は『気ままに自由に走ろう』をスローガンにしたツーリングに旅立つのですが───

 あいにく私はバイクはまったく解りません。友人はみなハマったんですけどね。この映画でもたぶん彼らが乗ってるのはハーレーダビッドソンなんで好きな人にはたまらんかもしれません。ちなみに、ホッグとは豚さんのことですが、ハーレーのバイクのあだ名なんですね。燃料タンクがドテッとでかいからかしら?
 ちなみに一度ハーレー専門店からウェブサイト制作の仕事が来たことがあるんですが、ぶっちゃけハーレーというバイクはオタクの世界。オタクの世界は無知な部外者がどうこうできるわけないのでお断りした経緯もあったりして。
 この映画を観ていて思いだしたのが、小学生の頃流行った『ワイルド7(せぶん)』というコミック。
 アニメや実写化もされ、プラモにもなったほどの人気だったんですが、なんせバイクに興味皆無なので未見ですが、考えてみればアレも今のオッサンたちのバイク人気の下地になっているのかも。

 それはともかく、『ワイルド・ホッグス』に登場するライダー(劇中ではバイカーと自称してます)たちのファッションがイカニモそれっぽい。
 “それ”というのが、いわゆる革ジャン、ブーツ、ナベ型と言われるフルフェイスでないヘルメット。
 日本でも正統派ハーレー乗りはこうでないとイカンとでもいいたげなオキマリの服装です。そしてこのスタイルと双璧をなすのが、のちにニューシネマと呼ばれるジャンルの代表作である『イージーライダー』というロードムービーの元祖での、主演のピーター・フォンダとデニス・ホッパーのファッション。
 つまりバンダナにサングラス、袖を切ったジージャンまたは刺繍入りとか鋲を打ったゴツい革ジャンという出で立ち。まあこれ、『イージーライダー』の舞台となった1969年ごろのヒッピーがこんな格好してたんですが。
 これにボウボウの頭髪にひげ面か逆にスキンヘッド、そしてタトゥーがセット。(劇中、ズッコケ役のダドリーが仲間にタトゥーを見せびらかすシーンは爆笑。)
 ちなみに、この頃のアメリカはベトナム戦争真っ最中で、その反戦運動がそのまんま日本へ飛び火してくだんの団塊世代学生運動に直結するのです。

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 いうなればトラボルタ演じるウッディたちは若い頃にそんな映画を観た世代。
 だから“なんちゃってイージーライダー”状態なんですね。ウッディがことさら唱える「ワイルドで行こうぜ!」ってのも当時の流行歌であるカナダ出身のロックバンド『ステッペン・ウルフ』のヒット曲『Born to Be Wild(ワイルドに行こうぜ)』に由来してまして、これもまたイージーライダー作中で使われる歌。
 だからことさら野宿や不良っぽい行動に憧れるんですが、どうしても都会育ち都会生活の品の良さが抜けない。ここらへんがまた笑える要素になってまして、揃って立ちションはするくせに野糞(失礼!)はせずにちゃんとビニール袋に始末したり、キャンプカーのを借りたり。
 面白いのはアメリカ人のこの辺の感覚で、ツーリングの途中に平気でビールを飲みに寄ったりするくせに(飲酒運転が許されてる州なんてあるのかしら)誰もいない池で泳ぐのにパンツの有無を意識する。ミョーにワイルドになりきれない上品なオッサンたちが可愛い。日本のオッサンはだめですね、ポイ捨てしたりゲップしたり行儀が悪くて…あら、あなた若い女性なのに電車で大あくび。いけませんね。

 この連中がやがてとんでもない連中とかかわったために、楽しいはずのツーリングはデンジャラスな方向へと突っ走ってゆくことになるんですが………

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 配役がなかなかに濃くて楽しいです。濃いけどバランスがとれているのでうっとうしくない。
 主演は四人ですが、一応トップ看板はダグ役のティム・アレン。日本では所ジョージが演じたトイ・ストーリーのバズ・ライトイヤーの声は彼。日本ではあまり知られてませんが、コメディ系では1994年の『サンタクローズ』以来毎年出演作のある人気俳優。
 そしてウッディのジョン・トラボルタ。スタローンと共に大根役者と言われますが、彼の場合はアメリカ人に珍しいくらい表情が乏しい人なんですね。いわゆる“笑顔でも目が笑ってない人”。逆に言えばああいう役者なのですが、それを今回実にうま~く使っています。
 反対に喜怒哀楽じつに豊かなのがボビー役のマーティン・ローレンス。ウィル・スミスと組んだ『バッドボーイズ』シリーズは印象的。コメディアンの王道を行く人ですが、今回はダドリー役のウィリアム・H・マーシーがボケ役に徹しているのでマーティンはツッコミにまわってます。
 なお、劇中でダドリーはほんとに鈍くさくて何度も事故りますが、ウィリアム・H・マーシー、この映画に出るまではホントにバイク経験皆無だったとか。まあ、なんて勇気のある人でしょうね。

 この四人が勢揃いして敵に立ち向かう所などは『サボテンブラザーズ(原題:スリー・アミーゴス、『踊る大走査線』では管理職三人組のあだ名でしたね)』みたいでワクワクします。

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 でも脇役もなかなかイイ。最大の仇役ジャックに『グッドフェローズ』『ハンニバル』『ERシーズン9』で知られるレイ・リオッタ。持ち味のぶち切れキャラであると同時に、最後の最後では噴飯ものの笑いを提供してくれます。
 じっさい若く見えますが、彼も1955年生まれなので主人公たちと同年代。それがいまだに不良の親分をやってるのが皮肉にもなっていておかしいですね。

 そしてレイ・リオッタと共に『スモーキン・エース』に出演しテレビシリーズ『ダーク・エンジェル』で犬顔の特殊メイクで登場していたケビン・デュランドが今度はスキンヘッドのオカマ風アホキャラで…。いや、ほんとに芸達者な俳優さんです。
 ロードムービーにつきもの?のイカレたポリさん、ゲイのハイウェイポリス役のジョン・C・マッギンリー。
 名前は知らなくても映画通なら顔は覚えがあるはず。『プラトーン』『セブン』そのほかいろ~んな映画でヘタレ役かなんかやってましたね。
 
 そして最後にあの伝説の俳優がカメオで出演してるんですね。でもエンドロールではひ~っそりと端役たちにまぎれてちょこっと書かれてあるだけ。これこそホントのカメオですね。さすが本当の大物はじつにつつましやかです。
 さてこの映画、エンドロールには笑えるエピローグになっていますが、アメリカにも『大改造!!劇的ビフォーアフター』みたいな番組があるようですね。しかもその司会者が照英君に似て見える…いや、これは別な話。

 おお、そうそう。マリサ・トーメイ演じるヒロインが可愛い!じつにエエ女です。女神です。そういえばこの映画にはひとつ含蓄があります。
 『男を生かすも殺すも結局は女次第。』女性の皆さん、旦那、彼氏をカッコ良くするのも阿呆にするのも貴女次第ですからね。この映画をご覧になって、うま~く男を泳がせる術をお勉強してくださいね。

 痛快な映画です。怖いシーンも汚く下品なシーンもありません。でもしっかり盛り上がるし、センスのいい笑いを沢山たくさん提供してくれます。イマドキ珍しい、良心的なコメディです。
 そして日々の生活や苦労に不格好にあがきながらも、どうしたら楽しく生きられるかを模索してゆく、愛すべきオッサンたち。
 老いも若きも関係ありませんね。恋も夢も冒険も捨てちゃいけません。それは人間をやめることと同じですから。

 ではまた、お会いしましょうね。


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 *イメージ画面は予告編から拝借いたしました。

『団塊ボーイズ』日本語公式サイト…ですが、内容を誤解するのでウェブサイトは見ないことをオススメ。

『ワイルド・ホッグス(原題)』米国Appleトレイラーサイト

 では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

劇場で観賞いたしました。
楽しめましたね~。バイクは大好きなもので堪能いたしました。
ラストで水戸黄門の様に登場するあの人はさすがの貫禄でしたね。

投稿: samurai-kyousuke | 2008年4月 3日 (木) 09:00

samuraiさん、いらっしゃいませ!
えー、ほんまに久々に楽しい作品でしたね。(‾▽‾)
私はバイクは無知ですが、それでも彼らのこだわりはちゃんと伝わってきましたし。
うん、水戸黄門の例えは的確ですね~~~

投稿: よろ川長TOM | 2008年4月 3日 (木) 10:41

こんばんは♪
先日はコメントを頂き、ありがとうございました!

愛すべきバイク親父たちの人生を諦めないドタバタ劇は、
楽しかったですね♪

おっしゃっていたように、宣伝の下手さと強烈なインパクトの邦題で
敬遠されている方もいるのかなって思うと
これだけ面白い作品なのに残念ですよね(>_<)

今後ともいろいろと参考にさせて頂きますね!

投稿: tapomushi12 | 2009年4月26日 (日) 22:37

tapomushi12さん、いらっしゃいませ!
思うんですが、ハデハデな映画や賞取りの鳴り物入りの作品よりも、こうした映画こそ、普段は全然忘れてたのに、なんかの折にフト「あ。そういえばなんかタイトルは忘れたけど、そんな映画あったなあ…」って懐かしく思い出すんじゃないかと。

こういう作品こそちゃんと伝えてゆかないとイカンです、はい。
今後はどんどんマイナー&クラシック化してゆきそうなこのブログですので、ぜひともまたおいでください。

投稿: よろ川長TOM | 2009年4月27日 (月) 17:53

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