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2006年12月28日 (木)

『日曜洋画劇場40周年記念 淀川長治の名画解説』映画ファンのバイブル!

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「はい、みなさんこんばんわ」

 筆者が我が師と敬愛する淀川長治氏のこの語り出しで始まる『日曜洋画劇場』は筆者にとって毎週訪れる至福の時間でした。

 まだ世間では14インチの白黒テレビが一般的だった時代。毎週日曜日の夜9時になると、こぼれんばかりの笑顔を浮かべ、ちょっと猫背で斜に構えた独特な姿勢で登場する不思議な小父さんは、幼かった筆者には不思議な存在。
 画面の向こうの人なのに、まるでガラス越しにこちらを見ているかのように人なつっこく話しかけてくるその話術には、筆者を映画の世界へ取り込んでしまうには充分すぎる魔力が秘められていたのです…


 去る12月20日、日曜洋画劇場40周年を記念して『日曜洋画劇場40周年記念 淀川長治の名画解説DVD』がリリースされました。
 もちろん筆者にとっては数ある淀川長治先生の映画バイブルの最新刊。
 淀川長治氏は筆者にとって本当に人生の先生。あえて、先生と呼ばせてくださいね。
 今回はそのDVDと、先生の想い出をお話をさせてくださいね。

「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。」
 1998年。ブルース・ウィリスの『ラストマン・スタンディング』の解説を最後に、チャップリンやギャバンやディートリッヒや黒澤監督がいる、アッチの世界へ行ってしまわれた映画の伝道師。
 このDVDを買いに行ったときも、お店の若い店員さんは筆者が先生と呼ぶ淀川氏を知りませんでした。もう、亡くなったのもそれほど前になってしまったんですね。


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 「はい、みなさん、こんばんわ。さあ、今夜は………」で始まり、ネタバレすることなく簡潔に見落としてはいけない箇所、見どころのツボを教えてくださり、「はい。ではあとでまた、お会いしましょうね」と映画本編に導入。
 番組ではすかさず映画のファースト・シーンが始まります。それはある時は『ローマの休日』。あるときは『アラビアのロレンス』、あるときは『太陽がいっぱい』。
 そして映画が終わった直後、ちょうど上映を終えた映画館に灯りが点るように、すうっとフェードインして「はい、いかがでしたか?」と、興奮冷めやらぬ観客に向かってブラウン管の向こうから語りかける先生。

「主人公が◯◯して、ヒロインが◯◯しますね。あれは、◯◯の象徴ですね。あのシーン、見事でしたね。」と、たった今観たばかりの作品で印象的だったシーン、忘れてはならない重要なシーンをあらためて瞼の裏に浮かび上がらせ、まるで劇場で買ったパンフレットを帰宅時の電車の中で開き、あらためて感動を思い起こさせるような効果をもたらせる先生の言葉。
「実は、あの撮影ではこんなことがあって、あの俳優は本当は…」と裏話、こぼれ話を後解説にまじえることで映画製作に生命を賭けたスタッフの苦労や苦心を伝えながら、映画という芸術を生み出された背景を、そんな世界など知るよしもない一般観客に数限りなく伝えてくれました。
 しかもこの裏話もあのこぼれネタも、全部先生が実際にその撮影現場に居合わせたり、映画芸術史的とも言える監督やスタッフ、俳優から聞き出した“ホンモノ”の話だから説得力が違うんですね。

「テレビはね、お隣さん。映画は、自分の家なんですよ。」
「映画は映画館で観ないとどうしてもね。テレビは、どうしてもコマーシャルがあるからおかしな所で集中が途切れるんですね。呼吸が違いますね」と、テレビによる映画放映の限界を感じ、知り尽くした上で、茶の間で観る映画という新しいスタイルの中で、なんとかして作品のすばらしさ、作品に込められたメッセージ、味わい方を伝えようと毎回々々心を砕いておられました。

 いまでこそレンタルやセルDVDという、当時では考えるべくもない手段で、しかもお金さえあれば昔の街の小さな映画館よりも立派なスクリーンと音響設備で映画を観られるようになりましたが、筆者が社会に出た1980年代にテレビはやっと1インチ1万円の大画面時代になったばかり。音響面ではドルビーサラウンドが誕生したばかり。
 この頃『テレビは一家に一台から一人に一台の時代へ』と言われました。バブル経済初期ですね。

 もっとも先生のお話によりますと、とあるフランスの監督(どなただったか失念)は大阪万博での講演ですでにそのことを予見されていたそうですから、流石というか、恐るべしですが。

 そうそう、映画のレンタルも今でこそ一週間¥300なんてのもありますが、レンタルビデオが誕生したばかりの頃は、なんと映画一本レンタルで¥1500なんてのが普通だったんですよ。高いでしょ。劇場で観るのと変わりませんね。
 そして空のビデオテープも、大阪なら日本橋などの安く買えるところでようやく一本¥1000とかだったんです。もちろん、よほど上位機種でないとステレオ録画はできません。
 お若い人にはウソみたいでしょ?
 ただし、今のようにダビングに規制がなかったので、一日レンタルにしてとりあえずダビングしておいて、あとでゆっくり観るのが常套手段。あ、もちろんダビングするためには二台目のビデオが要るわけですが、そうそう二台持っている人などいませんので友人と示し合わせて、機械を持ち寄ってダビングしたわけです。
 もちろん画質の劣化はあたりまえ。でも好きな映画を自宅でゆっくりと観られただけでシアワセだったんです。

 横道に逸れましたが、この『日曜洋画劇場40周年記念 淀川長治の名画解説』には淀川長治先生が32年間にわたってされた解説のうち、50本だけが納められています。
 一年にだいたい50本放送があったとすると、わずか1/32しかないということになりますが、それでも一本一本の解説のなんと濃密なことか。
 オープニングの1~3分(DVDでは最初の挨拶部分10秒ほどは割愛)、エンディングの2分30秒、あわせてわずか3~5分の短さ。
 ときに早口に、しかしきちんと聞き取れて、しかも効果的な間合いだけはしっかりと挟みながら可能な限りの情報と情熱を込めた名解説の数々。
 オールドシネマファンにはうなずくこと多々、未体験のお若い方には、そうか、そんな作品、そんな俳優、そんな監督がこんな作品を創っていたのか、と感心することばかりのはず。
 そして、どれもが初耳のタイトル、初めて観る作品がほとんどではないでしょうか。もしかしたら、もうレンタル屋さんでも見つからない、観ることができないほど古い作品かも知れません。
 でも、この解説集を見ていることで、いつの日かテレビの名作劇場や、復刻版のレンタルDVDでそのタイトルを見つけたとき、耳にしたとき、きっとあなたの脳裏に先生の解説が思い出されるはずです。
 詳しくは覚えてなくても、なんかあのおじいちゃんが一所懸命に説明してた、あの映画はこれじゃなかったかしら。じゃあ、観てみようかな。

 筆者もそうして、たくさんたくさん、自分が生まれるはるか前の古い古い名作・傑作にも出逢うことができました。
 ぜひ、この珠玉の解説集をご覧ください。レンタルでも観られますからね。
 最後に内容のインデックスを載せておきましょうね。あなた、いくつご覧になられましたか?なに、ほとんど知らない。いけませんね。どの映画もとっても勉強になるいい映画ですよ。映画は、人生の教科書ですね。
 新しい作品も素晴らしいけれど、古い作品にも素晴らしいものがたくさんありますよ。たくさん、たくさん、ご覧になってくださいね。

『日曜洋画劇場40周年記念 淀川長治の名画解説DVD』
<映像特典>
●大いなる西部解説(現存する最古の淀川長治解説)
●ラストマンスタンディング解説(他界される直前、最後の解説)

<収録解説作品>
荒野の用心棒/史上最大の作戦/燃えよドラゴン/ローマの休日/旅情/サイコ/激突!/ミクロの決死圏/ハリーとトント/オリエント急行殺人事件/暗くなるまで待って/戦争と平和/アラビアのロレンス/サタデー・ナイト・フイーバー/ベン・ハー/2001年・宇宙の旅/シェーン/エデンの東/俺たちに明日はない/ファール・プレイ/がんばれ!ベア-ズ/ゲッタウェイ/ある愛の詩/アメリカン・グラフィティ/天国から来たチャンピオン/ゴッドファーザーPART II/JAWS・ジョーズ/戦場のメリークリスマス/スーパーマン/普通の人々/タワーリング・インフェルノ/アマデウス/めまい/ダーティハリー/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ /ゴーストバスターズ/プロジェクトA/007ネバーセイ・ネバーアゲイン/キングコング/スター・ウォーズ・ジェダイの復讐/刑事ジョン・ブック・目撃者/ダイ・ハード/スティング/シザーハンズ/羊たちの沈黙/ダンス・ウィズ・ウルブズ/許されざる者/逃亡者/レイダース・失われたアーク

本編130分/片面2層/4:3/音声:ドルビーデジタル日本語モノラル

【追記】
 この記事を書いたのは2006年12月28日でした。もう六年も経ったなんて。
 Twitterでこの話をしたのを機に、アフィリリンクなど点検してたら…なんと!

Yodogawasensei

 『日曜洋画劇場45周年記念 淀川長治の名画解説DX』
 なんてのが出てるではありませんか。まあ、まあ、まあ!(@o@;)

 なんとなんと、私が買ったのは一枚物でしたが、これは五枚組に56ページ仕立ての特製ブックレットまで付いた、とんでもないBOXものになって再登場してるんですねえ。
 全部で200作品に及ぶ解説がみっちり納まっている。詳しい内容はコチラ(ポニーキャニオンHP商品ページ)をご覧戴くとして、そのリストを観てるだけでも、映画はもちろんの事、ものによってはその解説を憶えてたりするから、やはり先生は私にとって本当の人生の恩師だったと、つくづく思えます。

 しかれども、さすがBOX。ちょっとがんばってお金を工面せねばなりますまい…
【2013年12月8日】

「はい、もう時間来ました。それでは、次回をご期待ください。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。」

『日曜洋画劇場45周年記念 淀川長治の名画解説DX』購入ならこちらから■

 *イメージ画面はDVD本編から拝借いたしました。

フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)『淀川長治』
 
 では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

トラックバックありがとうございます。
新年になりました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
昔は、面白い映画のダビングは当たり前でしたね。
ダビングしては、友人に貸したりしてました。
・・・父が。

投稿: ふっきー | 2007年1月 2日 (火) 21:00

ふっきーさん、あけましておめでとうございます。
タイトルつながりだけで押しかけトラバして申し訳ありませんでした。
ダビング…まあ、もう四半世紀も前の話ですから時効っつーことで。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: よろ川長TOM | 2007年1月 2日 (火) 21:57

こんばんは、よろ川長TOMさま♪
あんまりハイテク機器がそろってないのですが、MDで良かったらダビングしてお送りしますよ~。
ともやのメールアドレスに連絡先を教えてくれれば大丈夫です。
MD自体もそんな高いもんじゃないし、お金とかの心配はしないでくださいね。

投稿: ともや | 2007年1月11日 (木) 01:50

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