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2006年8月19日 (土)

『素晴らしきヒコーキ野郎』さあ腕をワキワキ動かして空を飛ぼう!

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 はい、みなさんこんばんわ。
 今日は古き良き時代の傑作ドタバタコメディ映画をご紹介しましょうね。
 いや、今風に言えば“おバカ映画”でしょうか。

 ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功したのは1903年。もう103年も前の事になるんですね。さてみなさん、飛行機は英語でなんていうかご存じですね?そう、プレーン。でも生まれたての頃はフライング・マシーン、まさに“飛行機械”と呼ばれていたんですね。
 冒頭、原始時代からの人類の空への飽くなき挑戦の数々が連綿と綴られてゆくのですが、命がけの冒険は果たして笑っていいものやら、なんとも微妙なオープニング。
 というのは実際の記録映像にうまくコメディ俳優のレッド・スケルトンの怪演を組み合わせてあるので、知らない人はどこまでが本当のことなのか分からないんですね。
 ただしナレーションで人類初の動力飛行はなぜかイタリアのナントカいう伯爵ということに。あれあれ?ライト兄弟じゃなかったっけ?
 そう、ここからお話しはフィクションですよ…という粋な切り換えでお話しは始まります。
 
 さあさあ、楽しい映画のお話です。いつものようにネタバレに気をつけつつ、ご紹介しましょうね。
 

     

 原題は『THOSE MAGNIFICENT MEN IN THEIR FLYING MACHINES OR I FLEW FROM LONDON TO PARIS IN 25 HOURS AND 11 MINUTES』───
 !なんて、と〜〜〜〜んでもなく長いタイトル。
 直訳すれば『飛行機械に乗ったトンデモナイ連中あるいは私は、ロンドン~パリ間を25時間と11分で飛んだ』とでもなりましょうか。間違ってたらごめんなさいね。
 よくぞ、『素晴らしきヒコーキ野郎』なんて訳したもんですが、主題歌ではこれが歌い出しの歌詞になってます。

 お話はイギリス貴族が経営する新聞社が世界初のドーバー海峡横断を含めたロンドン~パリ間の飛行機レースの開催を決めるところから始まります。
 もちろん優勝者には名誉と高額賞金が与えられるってことで、世界の名だたるヒコーキ野郎がエントリーするんですね。
 ところが物語の舞台は1910年。この物語で最初に飛んだのがライト兄弟かどうかはおいといて、まだまだ飛ぶといっても強い風が吹いたり雨が降ったりしたら離陸も叶わない程度の技術だし、最高時速もたかだか70kmあるかどうか。機体の強度が足りないので宙返りなんてもってのほか。飛んでいるのがやっとなんですね。
 だからドーバー海峡横断なんてホントはかなりの無茶。いちおう実際の歴史では1909年にフランスのルイ・ブレリオが横断に成功していますが、飛行時間はたった37分。海峡は約35kmなので離着陸の滑走距離をさっ引いても、とにかく飛んで渡って降りただけで精一杯だということが分かります。

 そしてなんといってもドタコメの真骨頂は魅力的でけったいなキャラクターたちのずっこけた活躍。

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 まずは写真左上の飛行帽のおっさんがこの物語最大の悪役、パーシー卿を演じるのはイギリスの個性俳優テリー・トーマス。ビデオのタイトルでも彼が大アップ。

 悪党面なんですが前歯がスキッ歯のせいか妙に緊張感がないんですね。わが敬愛するビリー・ワイルダー監督作品『女房の殺し方教えます』ではいかにもイギリス紳士らしく、シュッと伸びた背筋と澄ました態度で主人公の忠実にして頑固な執事を好演。
 このパーシー卿、子分もひきつれていて日本では『チキチキマシン猛レース』で知られるアニメの人気キャラ“ブラック魔王”を彷彿とさせます。まあ、実際には同じ1965年公開の『グレート・レース』でジャック・レモン演じるフェイト卿のほうが直接のモデルですが、悪玉親分+ちょっとお間抜けな相棒子分という黄金の組み合わせはコメディの定番と言うことですね。
 (ちなみに今作と双璧をなす大傑作活劇『グレート・レース』はいずれ機会を見て大々的にご紹介するつもりですのでお楽しみに。)

 次に右上、分かりやすいのは物静かでりりしい日本代表ヤマモト。演じるは団塊世代のヒーロー、石原裕次郎。服装からすると日本陸軍の青年将校といったおもむき。
 やっぱりというか、登場シーンの音楽からしてやたら物々しいところがイカニモ当時のハリウッド映画における日本の描き方。
 ただ出番は思いのほか少なく、石原裕次郎の扱いは『バットマン・ビギンズ』での渡辺謙のそれを連想させます。

 しかしなんといっても筆者のお気に入りは左下のエラソーな親父、ドイツ帝国からやってきた規律正しい軍人風を吹かせる大佐と彼の部下たち。後のナチス時代と違って時代がかったいかめしい服装なのは第一次世界大戦前の1910年なのでまだ帝政ドイツなんですね。
 このでっぷり太った大佐が実にケッサクな芸を持っていて笑わせます。今でいうボイス・パーカッションなんでしょうけど、いや~実に器用なものです。しかも、よくご覧下さいよ。大佐を演じるゲルト・フレーベは西ドイツきっての名優であの『007』のゴールド・フィンガーなんですね。
 そして右下。行く先々でなぜか同じ顔の女の子に手を出すハメになるフランス人のプレイボーイを演じるのはジャン=ピエール・カッセル、あの『ジャンヌ・ダルク』『スパイ・バインド』のヴァンサン・カッセルのお父さんです。そう思って見直してみると目元なんて似てませんか?

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 そして次の写真左上、レースの主催者を演じるのはロバート・モーリー。傑作ミステリー『料理長(シェフ)殿、ご用心』で美食家を演じたおっちゃんですね。

 ほかにも知ったかぶりのエンジニアや、右上に写っているやたら子だくさんの金持ちイタリア貴族の伊達男(実は彼こそがこの物語の冒頭で世界最初の動力飛行を成功させた人ということになっている)などがいるんですが、彼らのおかげで物語の中心人物にあたる真面目なイギリス青年将校(右下)と、彼とは対照的にスタンスの軽いヤンキー男(左下)がものすごく平凡に見えるのは皮肉というものです。


 とはいえ、この映画の最大の魅力はクラシック飛行機のオンパレード。

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 ご覧になれば分かりますが、このお話の冒頭に登場する飛行機は航空力学なんてあったもんじゃない。人間が生命を預けて乗るにもかかわらず、とにかく設計も製作もテキトー。
 だけど後半に登場する飛行機はうってかわってマニアでも飛んでいる所なんて初めて見た!なんて博物館クラスの複葉機(翼が二枚ある飛行機)が目白押し。
 ちなみにパーシー卿が乗るのはフランスのアブロというメーカーの三葉機(翼が三枚ある飛行機)で、同じ社のアブロ504型はその後日本で最初にできた航空学校の練習機だったもの。
 ほかにもアントワネットだの、ブレリオ単葉(一枚羽根の飛行機)だの、果てはライトA型だの、クラシック飛行機マニアならたまらんラインナップなのです。



 実際に飛行しているのか、それともクレーンで吊っての特撮なのかはヒミツ。確かに言えることは、当時の飛行機は不安定な上に反応が過敏でとんでもなく操縦が難しかったということ。
 ちょっと操縦桿をヘタに動かしただけでそのまんまバランスを崩して墜落、なんてこともしばしばだったそうです。
 ちなみに、レースの大詰めでデッドヒートを演じる二機がこのライトA型とアントワネットなんですが、この図式はまんま世界最初の動力飛行を最後まで競ったアメリカとフランスの構図だったりします。
 もちろん当時のクラシックカーも多数登場。なんとも優雅で美しいですよ~。

 他にもこの作品はいろんなコネタの集合体みたいなもんで、かのテリー・ギリアムがアニメを担当した『モンティ・パイソン・フライング・サーカス』のオープニングはまさにこの作品のオープニングのオマージュ。あの主題曲も劇中でしっかり出てきますよ。

 音楽は勇ましい航空ものの戦争映画を何本も手がけたロン・グッドウィンが担当。
 洒落ているのはプロローグとエピローグをひとりで飾るレッド・スケルトン演じる、いろんな時代の鳥人間たち。
 軽快なマーチ風の主題歌はきっとあなたをウキウキさせてくれることでしょう。
 さあ、手を叩いて笑ってください。ごいっしょに大空のお気楽なレースに参加いたしましょう!

 *イメージ画面は『素晴らしきヒコーキ野郎』本編から拝借いたしました。

 
 では、また、お逢いしましょうね。

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