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2006年8月 1日 (火)

『妖怪大戦争』痛快、映画で楽しむお化け屋敷!

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 はい、みなさんこんばんわ。
 筆者は基本的にリメイクものには懐疑的ですので、この作品も最初からなめてかかっていて、劇場では観ていませんでした。
 だけどやはり最初の1968年大映版を子供時代に知っていた関係上、一体どんな作品かとずっと気にはなっていました。で、深夜残業でえんえんと待ち時間ができたときに観てみると…
 これがすばらしく面白かったんですね、いや、楽しい。いつ果てるとも判らない憂鬱な待ち時間もすっかりふっとんで、自分も一緒になってワアワアやっているようなお祭り感覚の映画なんです。
 ま、結局そのあと完全徹夜のハードワークが待っていたんですけど。ははは…
 
 …オホン。まあ、しかたありません。レンタルででもちゃんとしたものをご覧いただくとして、とにかくこの楽しい作品をご紹介しましょうね。
 

 日本で妖怪といえばまず水木しげる氏の作品を思い浮かべませんか?実際、ATOKでも“きたろう”って打ち込めば何番目かにちゃんと鬼太郎と変換されるほどですもんね。
 鬼、悪霊、魑魅魍魎、そして妖怪。古くは室町期から江戸期に多く描かれた数々のおどろおどろしい百鬼夜行の絵巻にも登場してきましたが、鬼だろうが精霊だろうが、これらを肉体のある妖怪としてひっくるめ、さまざまなキャラクターとしてもビジュアルを伴って広く現代人に知らしめたのは水木氏の漫画とアニメ化のおかげでしょう。

     

 とはいえ、いざ実写にしてみるとなるとこれは21世紀の今日でもどうしても特殊メイクとかぶり物での表現になるのは仕方なく、68年版より素材や技術も大幅に改善されたといえ、ハリウッドのようなCGやVFXによるクリーチャー表現とはかなり異なりますね。
 だけどそれをチャチだとか安っぽいとか言い切るのはまだ早い。

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 むしろ妖怪はこの特殊メイクやコスプレの延長と割り切った手法こそ似合うのではないか、と思うのです。
 というよりも、それを見越し効果を含めた上でこの映画をこしらえた、とまで考えるのはうがちすぎかも知れませんが、もし妖怪たちをハリウッド式で製作していたら逆に色気やかわいげがないというか、単なる怪物で終わっていたかも知れません。
 それほど水木式妖怪というのは愛すべきキャラクターのてんこもりですよね。
 そもそも妖怪とは森羅万象より生まれた自然現象の象徴であり、自然界が打ち鳴らす警鐘の具現化でもあります。だからどんなに恐ろしげでも、温かいというか、どこか哀れではかなげで、これほどにワガママ勝手に自然を破壊し続ける愚かな人間をそれでも愛してくれているのでしょう。

 もともと予備知識を持たずに観る主義の筆者の場合、気に入った映画のエンドロールには少なからず驚くことが多いのですが、今回のぶっ飛びは日本を代表する作家陣がプロデュースしたということ。
 水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆきの4氏とあったのもさることながら、全員ちゃっかり出演していることにも驚きました。いや、よおやらはりますわ。
 俳優がペンを取る例は古今多いですが、一線の著名作家がまともに俳優を演っているのは筒井康隆氏くらいのものだと思ってました。
 しかし京極夏彦氏は自作原作のアニメにも声優として登場するわ、映画にもヒチコックよろしく登場するわで…ホントに出たがりさんなんのようですね。

 そもそもこの映画の唯一とも言える悪役、加藤保憲は荒俣氏の代表作『帝都物語』が生み出した伝奇小説最大のダークヒーローですし、神木隆之介くん演じる主役の稲生タダシ少年はいかにも宮部氏が描きそうな今夏話題の『ブレイブ・ストーリー』を彷彿させる男の子。
 いわば、2005年版妖怪大戦争はこの四作家のプロデュースチーム「怪」による寄せ鍋的同人風の映画なんですね。そう、味付けはまさに“手前味噌”。



 だけどこの作品はそれが全く許せてしまいます。いや、だからこそ面白い。
 なによりもいいなと思ったのが、主役からちょい役まで出演者全員がすごく楽しんでいるのが画面全体からにじみ出ているところ。
 これって、まさにお化け屋敷。それも、学園祭とかでやるような、身内チックというか脅かす方も脅かされる方もみんな知り合い、オトモダチって感じがするんですね。
 まあ、同人や趣味で撮ってるみたいなんて商業映画の本道からすれば外れているのかも知れませんけど、お堅くて仰々しい口上ばかりが作品のテーマやメッセージではありませんよね。

 お祭り感覚と最初に書きましたが、ぬらりひょん役の忌野清四郎氏はもちろんミュージシャン、しかもロックンローラー。川太郎というアクの強いキャラの阿部サダヲ氏も“グループ魂”なんてバンドのボーカルでブイブイやっておられる関係もあってか、なんだか全編を通してリズムは16ビートっぽい。
 余談ですが、川太郎とはカッパの別称であると共に、大阪の古語では“がたろ”と言って河川の浚渫(しゅんせつ)作業をする人夫さんをそう呼んだようで、上方古典落語の『代書屋』などに登場します。

 とにかくカメオ出演的にイカニモ好きそうな俳優さんがてんこ盛りで出演していることも話題なんですが、じつは公開当時むしろ筆者はこのことにマユツバだったのです。しかし実際観てみると180度印象が変わりましたね。
 中には竹中直人氏のように、単なるコスプレ程度なのにまんま妖怪になってしまっているちゃっかり出演も多々おられますが、田口浩正氏のように一体コレ誰や!?と思うほどメイクで化けきってしまってる俳優さんも多いこと。
 近藤正臣氏なんて昔殺虫剤のCMでとんでもないコスプレをされた以来の化け方なのですが、さすが名優というか、不思議なオーラを放っておられますし、もしかしたら脚本なんてあらすじだけで、みなさん個性の命ずるままに好き勝手にアドリブで演じているのではないかと思えるほどハマってる。
 悪役のトヨエツこと豊川悦司氏も唯一のコワモテキャラゆえにかえっておかしみすら感じるから不思議です。

 だけどやはり筆者がこの作品を大好きになった理由はなんといっても主演の神木隆之介くん。

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 もともと彼がもっと幼い頃ドラマ『ムコ殿(2001年)』で鈴木杏樹の息子役として登場した折に「ゑ、女の子?」と思ったほどはかなげで可愛く見えたのが印象的だったのですが、『義経』や『ハウルの動く城』などその後の活躍はご存じの通り。

 筆者はショタコンではないんですが、彼だけは可愛くて仕方ない。ぶっちゃけた話、NHKの『義経』は彼が牛若丸を演るんで観ていたようなものですから。
 この作品でも彼の体当たりというか、実に自然な演技が素晴らしい。すごいなと思うのは、まわりは大人ばっかりなのに彼はちゃんと少年なんですね。よく天才とか呼ばれる子役が“大人顔負けの演技”と賞されることがありますが、大人みたいなこまっしゃくれた演技ならば子役起用の必要ないんですよね、ほんとは。

 ひとつだけ、筆者が手を叩いて喜んだシーンをネタバレ承知でご紹介しちゃいましょう。
 ぬらりひょん役の忌野清四郎氏が彼ならではの素人臭い滑ったギャグをとばして全員コケるシーンがあるのですが、ここで神木くん、見事なリアクションをやってくれます。アレはたぶん、素(ス)です。

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 ▲このカットの直後。

 そうそう、角川映画のサイトでのべ2500名と書かれているエキストラの中にはこんな人…いや、お猿さんも。やはり、中身はあの人なんでしょうかねえ。未確認ですが。

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 ちなみにこのシーンは1時間42分頃。探せばエンドロールにない有名人?がほかにも見つかるかも!?
 このお猿さんはもしかしたら“自前”かも知れませんが、2500名なんて…かぶり物やメイク、大変だったでしょうねえ。

 それにしても楽しい映画です。お祭りって、じつは本来こういうものなんでしょうね。
 五穀豊穣を祝うとか神様に感謝するとか言いますけど、じつは理由も意味もあとからついてくるのであって、とにかく嬉し楽しで騒げ騒げ!ってのが古来よりの祭りの意義なのでしょう。
 かつて漫画家・星野之宣氏の作品『ヤマタイカ』の中で、マツリとは本来人間が持っていながら理性で押さえているはずの破壊や性衝動など、強大で押さえがたい動物的本能のエネルギーを一時的に正の方向へ解放することで健全な社会性を保つための行事だったのに、そのエネルギーが間違った負の方向へ突き進んだものが戦争だ…というようなことを描かれていました。

 そんな間違ったエネルギーの使い方は御免こうむります。
 劇場ではエチケットの関係上そうは参りませんが、今回ご覧になるのは皆様のオウチ。さあ、騒ぎを聞きつけて日本列島津々浦々から押し寄せる妖怪たちに混じって我々観客も手に手にお好きな食べ物と飲み物を持ってこの祭りに参加しようではないですか。

 はい、もちろん私は大好きなお酒を抱いて画面の前へ。さあ、乾杯。


 *イメージ画面は本編ほかから拝借いたしました。


 
 では、また、お逢いしましょうね。

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コメント

TBありがとうございます。
この映画、劇場で観たんですけど・・・
ひらりん的にはこんなに笑える映画は初めてでした。
ほんと、お祭り気分・・って感じ。

また、よろしくおねがいしまーーす。

投稿: ひらりん | 2006年8月 2日 (水) 02:38

こんにちは!私もつい最近観たんですが、面白かった~♪
私の母は、大正生まれの富山の田舎育ちですが、母の幼い頃には「川原に河童がいた」らしいですよ^^;本気モードで、そう言ってました。
神木君、ギザカワユス。
あ、放送するんですよね。見所確認。も一回観よ!かんぱーい!

投稿: ちゃとと | 2006年8月 2日 (水) 17:34

ブログの価値を計算させてもらいました。
デザイン、質感、スタイルが価値のあるブログ
として、当社としては一度お話をしてみたいと
思いました。よければ一緒にブログを盛り上げて
みませんか?あなたが所有者で、当社が運営者
です。当社概要をご覧ください。

投稿: あなたのブログの価値 | 2006年8月 6日 (日) 16:24

おはようございます。
禁止ワードにひっかかったのか、
TBができませんでした。残念です・・・。

余談ですが。
忌野清志郎さん、アレだけメイクしてるのに
いつものメイクより素顔に近かったのが
ウケました。(笑)
そういえば、元気にしているのでしょうか?
あの声がもう一度聞きたいです。
手術しないで治ればいいんですが・・・。

投稿: Ageha | 2006年8月 8日 (火) 09:23

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