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2005年12月 7日 (水)

『ARIA』読む・観る・浸れるリラクゼーション、ハケーン。

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 はい、みなさんこんばんわ。  今回ご紹介するのは天野こずえ氏作『ARIA(アリア)』。現在“コミック・ブレイド”誌で連載中の漫画であり、テレビ東京系で水曜深夜に『ARIA the Animation』として放映中のアニメです。

 とにかく原作もアニメも“美しい”のひと事に尽きるのです。
 かつてアニメーションや特殊効果で描くことが最も難しいと言われたもののひとつ、水。その水を満々とたたえた水の都ネオ・ベネチアが舞台の作品なので物語には全編を通して美しい水辺にたたずむ古都の風景が描かれています。
 しかし、ただ美しい風景を描いただけの作品だったら筆者も熱く語ってオススメなどいたしません。

 ああ、この作品のお話をするのだと思うだけでワクワクします。さあさあ、どこからご紹介しましょうか。
 

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 筆者はまずアニメ版の『ARIA the Animation』でアリアの存在を知りました。
 深夜…それこそ“草木も眠る丑三つ時”に始まったファーストシーンは、青い空と蒼い海、そしてその海に抱かれるようにたたずむ水の都の風景。バックに流れるのは懐かしくも優しいストリングスの調べ。
 お~っとりした主人公がのんびり屋さんなりに一所懸命立ち働くシーン。そこへゆったりとフェードインしてくる女性ボーカルはあくまでもやわらかく、風に乗って聴こえて来るかのよう。
 やがて画面にゆったりと現れるタイトルにそれがこの作品のオープニングだと知れる…ほんとうに懐かしい時代の名作映画を観るような素敵な演出。

 こんなゆったりした雰囲気と時間の流れを持ったアニメーション作品、いや、最近では映画でもこういう雰囲気は久しく出逢っていない気がします。
 いや、美しい風景を綴ったドキュメンタリー的な作品は多いのですが、このまさに“水がたゆたう”ような時間の流れを感じさせてくれる作品なんてあったでしょうか。しかもこの美しさ。
 水が本当に水として美しい。
 自然の描写といえばスタジオ・ジブリが世界的にも有名ですが、『ARIA』の描く自然観はそれとは異なった魅力にあふれています。
 それはいうなれば、観ているとそこに住まう主人公達がうらやましくなってきて、できることなら画面の中へ入ってゆきたくなる素敵さなのです。

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 そしてなにより物語そのもののもつ、切ないほどに優しい雰囲気がたまりません。
 アニメを観たり漫画を読んだりしたことで、これほどくつろいだ気分になったなんて筆者にとっては生まれて初めての体験です。
 そして気づくと感動で目頭が熱くなって…といっても、催涙系の重たい感動をゴリ押ししてくるのではありません。そこに描かれる物語はネオ・ベネチアと呼ばれる水都でゴンドラを操る水先案内人…ただし見習い…の主人公、水無灯里(みずなしあかり)ちゃんが、ぽわわ~~~んと万年春風状態で自分が味わった日々の感動を綴った日記のようなお話なのです。

 “ネオ”ベネチアは実は地球の都市ではありません。原作では“火星”と書いてアクアと読ませていることからも、その星は高い技術でテラ・フォーミング…つまり大規模な地球環境化改造を経て青い水の惑星となった未来の火星だったのです。
 アニメ版ではそのことについては特に説明はなく、“アクア”とだけ呼んでいるのは、あくまで物語がハードSFとは無縁な、むしろ心の羽根をのばせる世界観を大切にしているからでしょう。
 登場人物たちの会話から地球はすでにほとんどの環境を人工制御化してしまっているらしく、失われてしまった過去の地球の風景や歴史的都市はむしろこのアクアに多く再現されているんですね。
 歴史的には浅いものの、それでも火星入植後二百年は経ているらしいのでそれはそれで古びた風情になっているのですが。

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 そして灯里ちゃんはそんな美しいネオ・ベネチアのあるアクアの自然に憧れてやって来た地球人なんですね。
 そんな彼女にとっては、かつての地球がそうであったように、アクアの直接泳げる海も咲き誇る花畑も突如降り出す雨も、そのあとに空にかかる虹もすべてが感動のドキドキ体験なのです。
 だからアクアの森羅万象が美しければ美しいほど、かえって彼女がフトもらす「こんなの、地球(マンホーム)ではもう観られないから」のひとことに胸が痛むのです。

 ほんとうにそんな時代が来てしまうのではないか、と。

 この物語で大切なのはこのことではないかと思います。
 たしかに設定だけを見れば未来を舞台にしたファンタジックな物語という仕立てですが、感動的な風景のほとんどはまだ自然が残っている現代の私たちなら体験できる事がほとんど。
 いや、むしろ今ならまだ感性のアンテナさえ拡げていれば地球で…いや、日本で、しかも身近に見つけることができる“素敵”がこんなにもたくさん満ちあふれているのだ、だからこそ失われてしまってからでは手遅れなのだということを言葉ではなく美しい風景で教えてくれるのです。

 いやあ、それにしても漫画も変わったものです。
 筆者が学生の頃は漫画といえば少年漫画と少女漫画がキレイに分別されていました。
 いや、今でもたいていの本屋さんではキレイにコーナーが分かれてて、少女漫画のコーナーで物色していると怪しい目で見られがちですよね…漫画の好きな男性諸氏。

 『AQUA』は絵柄といい内容の繊細さといい、いままでの概念なら少女漫画以外の分類なんて考えられません。
 アニメ版がフルカラーで美しいのは百歩譲って当たり前としても、原作でページごとに描かれるささいなモノクロのカットや風景画が息を飲むほど美しいなんて、本当にこの作品は信じられない経験をさせてくれます。



 しかしこの『AQUA』が連載されている雑誌の名は“コミック・ブレイド”。どう聞いても少年誌、またはゲーム雑誌系の名前です。

 かくいう筆者はもともと少女漫画家志望…とはいえ、目指したのは“花とゆめ”誌。ご存じない方のために申しますと、かの雑誌、もう四半世紀も昔から雑誌名は恥ずかしいほど少女誌なのに、掲載作品は繊細なヨーロッパ映画のような純愛ものから男性作家が描く骨太のハリウッド映画のような作品が目白押しに詰まっているいう異色の雑誌。
 今考えてみれば漫画の性別ボーダレスの先駆けだったのでしょうね。
 いまや『AQUA』の載っているコミック・ブレイドに限らず、ひとつの雑誌の中にかつての少年漫画、少女漫画から青年誌やレディスコミックなどの様々なカテゴリーの作品が詰まった雑誌が数誌発行され、いずれも飛ぶ鳥を落とす勢いで雑誌も掲載作家陣も着実に実績を上げてその名声を得つつあります。

 『AQUA』。

 気がカサカサしたとき、どうにもやるせないほどに辛いときにトランキライザー代わりに読む・または観ると効き目バツグンの傑作です。


 文中、俳優・スタッフ敬称略
*イメージ画面は本編とコミックスから拝借しております。

 『ARIA作者』天野こずえ氏公式サイトはこちら

 『ARIA The Animation』公式サイトはこちら

 
 では、また、お逢いしましょうね。

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