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2005年11月21日 (月)

『かみちゅ!』ステキな物語に柏手うちましょ、パン、パン!

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 はい、みなさんこんばんわ。
 前回はこの作品のアニメとしてのすごさをお伝えしましたね。
 そのグレードというか、画面のすみずみまで行き届いたキメ細かな配慮は最終回までヘタることなくなされていて、この作品への愛情と本当にスタッフ全員への畏敬の念を禁じ得ません。
 それにしてもキャラクターたちの演技が素晴らしい。絵が動くのがアニメーションなら、絵が演技するのは何と呼べばいいんでしょうね。
 さあ、今回は『かみちゅ!』がいかにステキであたたかい物語かお話ししましょうね。
 

 それでは、観たことある人もないひとも、まずはおさらいしましょうね。

 主人公、一橋(ひとつばし)ゆりえは尾道に住む引っ込み思案でいたって気の弱い中学二年生の女の子。
 だけど第一話、冒頭で昼ご飯を食べながらの開口一番彼女の台詞がものすごい。
 「みつえちゃん、あたし、神様になっちゃったの」
 「…なんの?」
 「わかんない。昨日の夜なったばっかだから…」

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 この短い会話で二人は幼い頃からの親友らしきこと、しかも神様になったことが別段驚くほどのことではないことなのか、光恵の冷静さやゆりえのおっとりさなどを一気に観客にぶつけてしまうのです。
 おまけにこの食事シーンの作画が見事。宮崎系アニメでリアルな生活感演出を見慣れているはずなのに、“外の景色を見ながら卵焼きを食べる”ことがこんなに生々しく描かれたのは世界初?

 さらにその会話に「いま、神様の話してたわよねえ?」と食いついてくるのがそれまで口もきいたことのなかったらしきクラスメート三枝 祀(さえぐさ まつり)。
 彼女は自宅でもある最近さびれ気味の来福神社をゆりえの力でなんとかしようと彼女を“覚醒”させようと考えるのですが…


 ナニがスゴイといって、平凡な発想の筆者やこれまでのアニメの常識的展開ならば、「神様になっちゃった、わあどうしよう!」そして両親や親友にも能力を隠しながらもやむなく人助けのために目立つ活躍をしなければならない…というパターンのはずが、何話か観てゆくと、ゆりえが神様になったことは街ゆくおばちゃんたちも皆が知ってるんですね。
 たしかに「神様なんだ、すごいな~」とか、ある程度の好奇心は刺激されているんですが、クラスメートも尾道の街の人もせいぜい宝くじに当たったとか、“たまたまテレビに出た人”程度の興味対象で、いたって彼女とフツーに接していることにかえって驚かされます。

 だけど尾道名物?の通学の自転車も運ぶフェリーの乗り場には『神様御用達』とかデ~ンと書かれていたりするし、他の街の人は最初から“ゆりえさま”と呼んで神様扱い(当然でしょうけど)。何かあるとゆりえを結構ありがたがったり拝んだりするシーンもあるのです。

 つまり。

 思い出してね、神様、って日本人にとってはものすご~~~~く身近な存在なんですよ…という作り手のあたたかなメッセージが込められている気がするのです。

 そしてどこにでも居そうだけど、実に魅力的な登場人物たちが物語を彩ります。

 ぼ~っとしてドンくさいけど素直で何事にも真っ正面から生真面目に取り組むゆりえ、そして冷静かつ淡泊だけど思いやりがあって中二とは思えないほど思慮深い親友・四条光恵、対する熱血かつ暴走気味の行動力をもつ三枝祀のコントラストは実に見事。
 ゆりえが憧れる男の子・二宮健児は浮世離れしていて、たったひとりで書道部に属し、部室がないためにいつも屋上で書をしたためています。
 浮世離れという意味では、神様の両親に“なった”ゆりえの母親と父親も妙に脳天気で万年ラブラブカポー。

 数少ない常識人?はゆりえの弟・章吉と祀の妹・みこなんですが、みこはその名の通り神様や心霊的なものが見えるものの、彼女もまた“だからといって特別じゃない”ところがこの作品の共通項。

 しかしそんな人たちばかりでは、物語が“神様で中学生”である必然性がありませんね。
 そこで登場するのが祀の実家でもある来福神社にまつられているロックに傾倒するイケメンだけど気の弱い神様・八島さまや、なぜかゆりえの飼い猫に憑依した貧乏神、そして日本中の神様が属している協会から『お願い事』を運んでくるメッセンジャーのもののけトリオなど。
 しかも神様の寄り合があったり、万物すべてに神様がいるから起こる物事やエピソードの数々などで「ああ、そうだったのか…」と毎回のように感心し感動させられます。

 だけどゆりえの持つ神通力はかなりノーコンで、しかもいったい何の力なのか判っていないだけに、力というほど“らしくない”、魔法というほど万能ではない、でも超能力というほど理屈っぽくない。
 いちおう神様だからありえそうな“不思議な力”は、ゆりえの一途で素直な心が一所懸命になったときに意外なカタチで発現するものの、はたして人の役に立っているのだかどーだか…

 新米神様のゆりえが頼りないながらも一所懸命にいろいろな“お願い事”を叶えるため奔走しつつ、自身も悩み、考え、人々の思いやりやふれあいの中で成長して(たぶん)ゆく日常を尾道の美しい風景を舞台にあたたかく描いてゆきます。
 ちなみにこの作品、尾道フィルムコミッションがしっかり協力。
 ファンの間では“尾道かみちゅロケ地めぐり”もされているようですし、筆者もいつか行ってみたいと画策中。

 ここであらためて日本古来から言われている神様ってなんなのか考えてみましょうね。

 八百万(やおよろず)の神、という呼ばれ方のとおり、この世の万物…つまりすべてのものに神様は宿っていると考えることで生物・無生物に限らずあらゆるものを慈しみ、大切に扱いなさいよという昔の人の知恵であり、いわゆる特定の人物が考え出した宗教や誰かが書いた教典のような人間中心で他人に強要するルールじゃない、自然界からのシンプルかつ基本的な教えなのではないでしょうか。
 人間宗教を奉じる学者たちの中には、日本のほかネイティブ・アメリカンやイヌイット、アボリジニやアイヌ、琉球民族などに伝わる自然崇拝に共通するこれらの考え方を“原始宗教”と呼ぶ本末転倒な人もいるのは残念なことですが…

▼これが前回もほめちぎっていた、縁側のシーン。

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 ともあれ、そんなわけで『かみちゅ!』にはいろんな神様が背景のようなノリでカメオ的に登場します。
 お豆腐の神様、納豆の神様、タイヤの浮き輪の神様、ラジカセの神様、そろばんの神様etc.…じっくり画面のスミまで観ていると、『千と千尋』には絶対出てきそうにないような現代風の神様もおられるのです。
 そのひとりは二話の神様の集まりで登場しておられますが、一見青くてでっかい目玉のようだけど、よく見れば手をニギニギ…ああ、そうか。健康グッズの握力ボールの神様なんですね。
 なんと七福神の“あの方”は神様たちのアイドルとしてライブに登場、なんて楽しい演出も。


 一見平凡そうで実はぶったまげたことだらけのこのアニメ、最後にもうひとつぶったまげる情報を発見。
 なんと、10月に全12話放映が終わり、現在順次DVDのリリースが行われているのですが、その折々にオリジナルストーリー…というよりも追加というカタチで未放映のエピソードが数話差し込まれるようなのです。
 新手のDVD販売戦略かもしれませんが、ファンとしては観てみたい。
 しかも『Webアニメスタイル特別企画:倉田英之×舛成孝二インタビュー(5)ぶっちゃけ、本編の一部を抜いてますわ』によりますと、実はテレビ放映分は数分カットされていたらしい…まあ、映画では尺に合わせてカット、DVDリリースで復活なんて今では当たり前ですけどね。

 そんなわけでわたしたちの“ゆりえさま”はまだまだ、尾道のみんなに見守られながら「ちゅちゅちゅの、ちゅ~」とがんばらねばならないようです。

 この大傑作、大林宣彦監督にもご覧いただきたいものです。

 *イメージ画面は『かみちゅ!』本編から拝借いたしました。

◆前回拙作記事『かみちゅ!』なんかすんごいアニメ始まる。もぜひお読みください。

*『かみちゅ!』公式ページ

 では、また、お逢いしましょうね。

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