« 『宇宙戦争』スピルバーグが創るリアルな怪獣映画! | トップページ | 『ビルマの竪琴』失われる命と弔う心。 »

2005年8月 4日 (木)

『かみちゅ!』なんかすんごいアニメ始まる。

kamitop01.jpg アニメーションを作るにおいて、全てものが自然に動く。動きが自然。このことがどれほど大変で、どれほどすごいことかは、宮崎 駿監督の作品を観ればお解りでしょう。

 たとえば『となりのトトロ』でのおたまじゃくしや雨だれ。たとえば『ラピュタ』でパズーが朝、トランペットを吹くまえにチロチロッとくちびるをなめるシーン。
 これらすべて、いかに日常への観察力、制作時にそれを活かせる高いシミュレーション能力がモノを言います。
 反対に、観たことないもの、ありえないものを具現化する想像力。
 そう、『千と千尋の神隠し』の神様たちとか、『ナウシカ』の腐海のような。

 でも、『千と千尋の神隠し』レベルのアニメが毎週ピッチの連続ものになったとしたら?
 それがこの『かみちゅ!』なのです!
 

kamichudvd1.jpg 特に第二話はビックリ!(一話は録画ミスで無念にも見損ないましたが、二話のオープニングでそれが一部観られました。そらもーモノスゴイ!これはDVD買いやな~しかしチト高いぞな。)

 スタッフ表を見ると。どうやら監督で1、2話の絵コンテを起こした舛成 孝二氏が宮崎 駿監督ばりのすごい感覚と観察眼の持ち主のようです。

 そもそも日本式アニメのキャラクターたちは、“クチパク”といってのっぺらぼうの顔の絵の上に、クチだけ開閉した状態のパーツを置くことで表現することがほとんど。

 え、ピンと来ませんか?

 『AKIRA』や『もののけ姫』のように、劇場用としてお金を掛けて製作された作品では、ダイナミックな動きは勿論のこと、そよ風やちょっとした表情の演技なども細やかに描き出しますよね。
 でもそうするためには、一枚一枚絵を描く必要があるわけですが、アニメのコストは描けば描くほど、つまり細かく動かせば動かす程、高くつくわけです。
 反対に言えば、動かさなければ安くつくわけです。テレビ用では劇場用ほどお金を掛けるわけには行かないので、クチパクしかり、まばたきしかり。
 動かない絵もうまく演出の一部として利用して“かせぐ”わけですね。

 ところがこの作品、とくに一話・二話では、ちゃんと口を開けばアゴまで動かして描いているんです。それどころか、言葉の発音にクチの形さえも合わせてあるのです。
 つまり、だいたい“読唇”できるんですね。これにはぶったまげました。
 また、何気なく描かれているけれど、主人公たちが夏の昼下がりに縁側へ腰を下ろすシーンがあるのですが、建物内から彼女たちの後ろ姿をロングショットでおさめたそのカットだけで感動してしまったのです。


 手を床に付きつつ脚を片方ずつ下ろしながら、体重移動するのでそのつど腰が左右に振れ、お尻の降ろす角度がよっこらしょ、と変わるのです。
 時間にしてわずか2秒ほどだし、文字では説明もしにくい(シナリオではたぶん“誰それ、縁側に腰を下ろす”程度なんでしょう)んですが、このカットで私は目を丸くしました。

 「こ、こんなん、テレビでやってしまうんか!!!!!!!」

 そうして注意深く見ていると、突っ立ったまま何げに下げた手をぶらぶらと振るだけのシーンでも、腕の移動によって重心が変わるためにちゃんと全身がブレるんですね。これ、簡単なようですごく手間なのです。

 ほんとによくもまあ、ここまで描くなあというほど描きまくってますし、きちんと動かしまくっています。しかも舞台は尾道の実際の風景を忠実に再現。設定上も描き込みも実に細かい上に、しっかり遠景まで動きが描かれている“活きた街”になっています。美術もすごい。とにかく美しい。
 もしかしたら大林監督の尾道シリーズ実写版よりも美しく描けているのではないでしょうか。

icecandy.jpg そして、エンディングも秀逸!左の曲に合わせて主人公達三人がそれぞれギター、マラカス、和太鼓(!)を使って画面のスミで演奏している体(てい)になっているんですが、マラカスを振る主人公の手。力のかかり具合、マラカスの重さ、振り切るコツまで見えてくる。この動きがほんとに楽しそうで素晴らしい!
 アメリカ式のようにお金を掛けて実写をCGやアニメにしてもここまでリアルにならないんですね。

 さて、お話ですが、主人公はなんとなぜかある日突然、神様になってしまった中学生の女の子。(かえすがえすも第一話を見逃したことがクヤシイ!)
 神様といっても、一神教の万能の超越的創造主ではなく、そんじょそこらに居られるところの日本古来の八百万(やおよろず)の神様。西洋式に言えば精霊なんでしょうが、一種の神通力があり、もっと人々に身近な存在で大切にされ、尊敬され祀られているところが神様と精霊の大きな違い。

 だけど大きく違うのは、この神様たちが街のどこにでも普通にいる状態。いや、実際に今こうしてこの文章を読んでくださっているあなたの側にもいろいろとおられるのですが、見えないわけですよね。
 それを見えるように描くとこんな世界観になるんですね。
 もちろん、主人公たち以外の一般のひとたちには見えませんが、その存在はごく自然に信じている。

 いわば現代的で並行世界扱いでないリアルに存在する『千と千尋の神隠し』ワールドがここに誕生したわけです。…いや、今まであったのに描かれなかっただけなんでしょうね。
 そして描かれるエピソードはハートフルでかなりハッピー。

 いつまでもその世界にひたっていたくなる、しかも観る度にシアワセな気分になれる素晴らしい作品に出逢えました。これからが楽しみ、楽しみ。

 *『かみちゅ!』公式ページテレビ朝日系。

 また他にも『ぺとぺとさん』NHK衛星では『絶対少年』というこれまた不思議なアニメ物語も放映していました。

 これらもちょっと不可思議なお話です。『ぺとぺとさん』は主人公たちほとんどが妖怪なのに、見た目はみな全く普通の子供たちで、ケンカもすれば恋もする。主人公なんて、コンビニでバイトしているんですよ。
 でもそれぞれがちゃんと妖怪の能力を持っているからなんとも不思議な世界観です。
 んでもって、主人公“ぺと子”ちゃんの大阪弁がええ雰囲気を出してます。
『ぺとぺとさん』公式サイト


 『絶対少年』は離婚した父親が獣医師を営む田舎の町へ夏休みの間だけやってきた少年が、その町に伝わるお祭りを通して不思議な世界観と触れあうことで心を開いてゆくのですが、実は少年が忘れていた幼い過去にも大切な接点があったことが判ってきます。
『絶対少年』公式サイト

 いずれも昔式のカテゴリーなら“ファンタジー”なのでしょうが、なぜかそんな簡単に分けてしまえない独特の世界観で、しかも舞台が現代の日本そのものなので架空の物語に見えない。
 どれも実にナチュラルで、ありえそうなんですね。いや、実際の話を形を変えて描いているという感じしかしないんです。
 もしも目に見える現実しか感じ取れなくなったとき、もう一度「あ、ほんとはこれがあるべき世界なんだな」って思い出させてくれるステキな作品たちです。

 ま~だまだ、ジャパニメーションは世界で右に出るものなど許しません!

 この記事も面白い!『『かみちゅ!』倉田英之×舛成孝二インタビュー(1)「神様は中学生」ではなく「神様で中学生』


 *イメージ画面は『かみちゅ!』公式サイトから拝借いたしました。

 
 では、また、お逢いしましょうね。

 ------------------------------------------------------------

|

« 『宇宙戦争』スピルバーグが創るリアルな怪獣映画! | トップページ | 『ビルマの竪琴』失われる命と弔う心。 »

★★オススメCINEMA」カテゴリの記事

【テレビアニメ】」カテゴリの記事

コメント

ハリケーン678さん、コメントありがとうございました!
映画関係はすぐコメントつくんですが、どうもアニメ系にはなかなかだったのですごく嬉しいです。
『かみちゅ!』は好評のうちに全12話の放映を終え、今DVDが3巻6話まで出ています。
詳しくはリンクした公式サイトで確認してくださいね。

あまりにもステキな話ばかりで、観れば心が温かくなります。ぜひご覧ください。

とかいいながら実は私も終わってしまうのがもったいなくて、あえてまだあと数話観ずに置いていますが、見終わったら記事を更新するつもりですのでまたおいでくださいね。

投稿: よろ川長TOM | 2005年10月27日 (木) 11:19

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 『宇宙戦争』スピルバーグが創るリアルな怪獣映画! | トップページ | 『ビルマの竪琴』失われる命と弔う心。 »